アニメ三銃士

Column39 語ろう!『光ってフラダリ』(スタッフルーム通信編6 -翻案 モンキー・パンチ-)

記事タイトルの意味は、本文を読んで下さい。


さて、『別冊アニメディア アニメ三銃士 PART1』からの証言特集。メインスタッフ陣のインタビュー記事「スタッフルーム通信」からの紹介も第6弾になります。

今回紹介するのは『アニメ三銃士』の生みの親とも言うべき人物、「翻案」を務めたモンキー・パンチ先生のインタビューです。
その肩書きから推測するに、『アニメ三銃士』においてパンチ先生が果たした役割は決して小さくないはずですが、パンチ先生がアニメ誌などで『アニメ三銃士』について語ることは、放送当時ですら殆どありませんでした(僕が持っている資料群においても、このインタビューのみ)。そして放送から30年経った今では、『アニメ三銃士』が「モンキー・パンチ作品」として語られることも、「モンキー・パンチ作品」として『アニメ三銃士』が挙げられることも、殆ど無くなってしまいました。
それ故に今回のインタビューは、『アニメ三銃士』におけるパンチ先生の役割を多くの人に知ってもらえる、大変貴重な物となっています。


特にパンチ先生の代表作である『ルパン三世』との関係や、オリジナルキャラである「はだしのジャン」の誕生秘話。そして何より『アニメ三銃士』というタイトル自体に関わる衝撃の裏話まで語られています。

●翻案 モンキー・パンチ


『三銃士』という原作そのものの骨組、時代背景や人物の性格そのものは崩さないで、僕のアイディアで味つけするっていうのが翻案っていうことかな。オリジナルキャラクターのジャンも、本当は実際の歴史上の人物なんだよね。はだしのジャンというあだ名しかわからないんだけど、農民側の出で、いつも農民を背中にしょって地主と対抗したという。で、その人の幼年時代を入れてみようかってね。まあ、歴史を知っている人が見れば、「あーあ、あの人物か」って分かるから、一つの隠し味みたいなものだね。
一番苦労したのはタイトル。ホント、原稿用紙に何枚書いたかわからない(笑)。考えた中で一番僕が気に入ってたのは『光ってフラダリ』っていうの。フラダリはフランス語でユリのことで、ブルボン家の紋章ていうのがユリだし、フラダリってフワっとしてて、女性にも受けるんじゃないかってかなりノッてたんだ。
僕は、中・高生くらいから『ダルタニャン物語』を好きで読んでいて、その延長でルパンができあがったみたいなところがあるんだよね。それで後になって気づいたんだけど、ルパンとダルタニャンの設定ってほとんど同じ(笑)。だから『三銃士』から『ルパン三世』になって、また『三銃士』に戻ったって感じかな。
今回は全部文章で設定を書いたから、いい勉強になったなぁ。ワープロもある程度使いこなせるようになったしね。


PROFILE
昭和12年5月26日北海道生まれ。代表作といえばなんといっても『ルパン三世』。『A クラス麻雀』、『ラッキー・ドンキー』、『ピンキー・パンキー』などを現在各誌に連載中。

何といっても『光ってフラダリ』の衝撃!パンチ先生曰く「一番苦労した」「原稿用紙に何枚書いたか」「一番気に入ってた」「かなりノッてた」と自画自賛を繰り返す会心のタイトルですが……。一体どういう経緯で『アニメ三銃士』というシンプルなタイトルに決まったでしょう。そしてパンチ先生はどういう心境で、そのタイトルを受け入れたのでしょう。
なお「フラダリ」はフラダリスともいい、『アニメ三銃士』1話冒頭のナレーションでも「盾に輝くユリの花、フラダリス」と語られているのは、パンチ先生の考えた『光ってフラダリ』へのお情け、もといリスペクトなのかもしれません。
それにしても……ひょっとしたらこのBlogは『光ってフラダリ Le Premier in Blog』というタイトルになっていたかもしれないのか。正直、微妙。


パンチ先生が「翻案」の象徴だと言わんばかり語るのが、はだしのジャン。パンチ先生によると「モチーフはあだ名でしかわからない人物で、隠し味みたいなもの」ですが、地主に対抗した謎の人物という点から、反権力のアウトローというイメージが浮かび上がっています。ひょっとしたらパンチ先生は『怪盗ルパン』に着想を得て『ルパン三世』という作品とルパンというヒーローを創り出したように、史実の「はだしのジャン」から新たな作品とヒーローを創ろうとしていたのかもしれません。


そして『ルパン三世』のルーツが『三銃士』というのは、今となっては有名な話。パンチ先生にとって『アニメ三銃士』は『ルパン三世』を大ヒットさせた後の「原点回帰」であり、『三銃士』という作品への「恩返し」だったのでしょう。
さらにパンチ先生曰く「翻案」とは「僕のアイディアで味つけすること」。確かに『ルパン三世』と比べれば、ダルタニャンの明るいお調子者ぶりはルパンに通じる魅力があります。またアラミスは、以前に当Blogで紹介した辻初樹さんのインタビューで語られているように「五右ェ門のイメージ」として描かれています。ミレディーはパンチ先生自身が「峰不二子のモチーフの一人」と語るように、不二子を彷彿とさせる妖しい魅力に溢れています。そして極めつけはロシュフォール。敵側でありながらコミカルかつ感情豊かで、主人公(ダルタニャンとルパン)に友情にも似たライバル心を抱く様子は、まさに銭形警部そのもの。
djpost1987.hatenablog.com


パンチ先生が『アニメ三銃士』にどのような形で、どの様に関わっていたのか。「翻案」とは、どの様な役割だったのか。それを具体的に示す資料は、残念ながら殆どありません。しかし、アニメ本編で描かれるキャラクターやシーンこそが、パンチ先生の存在を強く感じさせてくれます。