アニメ三銃士

Column23 語ろう!『アニメ三銃士』(気になるアラミス・前編)

今日は10月9日。ということは…そう!記念すべき『アニメ三銃士』の放送開始記念日です!!
放送開始日である1987年10月9日から、早いもので29年。あと1年で「放送30周年」という節目になってしまうのだから、時の流れの速さを痛感しています。こんな事を思うのも、もはや秋の恒例行事になってしまったなぁ……(遠い目)。


そんな記念すべき日にお送りする今回は…皆さんお待ちかね!『アニメ三銃士』を語る上では欠かせない人気キャラ・アラミスについて、当時のスタッフによる貴重な証言を一挙に紹介します。

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 1

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アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 2

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出典はアニメ情報誌「月刊アニメディア」1988年12月号の特集記事「気になるアラミス」より。
この頃は劇場版『アラミスの冒険』の公開が発表されたばかり。テレビシリーズの方も「鉄仮面編」が後半に差し掛かり、アラミスの行動が物語のキーポイントとなり始めた時期。まさにアラミスへの注目度がピークに達していた時期でした。


記事ではこれまでのアラミスの年表に加えて、監督・脚本・プロデューサー・キャラデザインのスタッフ陣によるアラミス評。さらにはアラミス役の声優・山田栄子さんやアニメディア読者のコメントを掲載し、アラミスの魅力を多方面から紹介しています。
前編となる今回はスタッフたちの描くアラミス像を紹介します。


まずは監督・湯山邦彦さんによるアラミス評。

彼女の最大のポイントは、女が男に成りすましているということです。でも、そういう性的な2つの顔とはちょっと角度の違った二面性があると思うんです。強情でちょっとひねくれていて、1人で行動しがちな、秘密を隠している部分と、反面つらい過去があってもわりと明るくふるまってる部分。そういう二面性が彼女の魅力なんじゃないですかね。
ですから、あまり女として意識してなくて、いかに、美形の(いわゆる男性の)二枚目として描くかに注意してきたんです。ただ、やはり絵として女を見せる場がテレビでも、もう少しあっても良かったと思うし、その点は今度の劇場版で生かしたいと思っています。

アラミスの性格面について語る湯山監督。「女か男か」という性別的な要素よりも、過去に秘密を持つキャラクターならではの二面性が魅力だと分析している。また描く上でも男性としての「美形」であることを意識していたとという。そのせいか「女性らしさ」を描けなかった物足りなさが窺えるコメントとなっている。


続いては脚本・田畑靖男さん。以前のインタビューでは「アラミスがダルタニャンに恋愛感情を抱くことはあり得ない!」と、ともすればアラミスを女性扱いしてないような発言をしていたけど…。

女性が男装しているからといって、男とか女とか意識したつもりはありません。たとえばジョイナーみたいに体格が良くても美しい女性はたくさんいる。女性だからなよなよ描かなきゃいけない時代ではないですよね。逆に、宝塚的な型にはまった男装の麗人にしたつもりもありませんしね。むしろ、そういう性の区別を意識しないで描いてきたところが、中性的なアラミスの魅力なんだと思います。
たとえばダルタニャンにしても、男としてやるべきこととか結構大変なワケで、その点アラミスはそういうしがらみから解放されてフッ切れてる。映画でも、そういう自由に解放されたアラミスを、見せていきたいですね。

こちらもアラミスについて「中性的な魅力」と分析。また「男としてのしがらみから解放されている」という、女性としての強みについても言及している。そして劇場版では「自由に解放された」という、新たなアラミス像を描く意欲を語っている。
なお、文中に出てくる「ジョイナー」とは、当時人気だったアメリカの女子陸上選手フローレンス・ジョイナーのこと。直前(1988年9月)に開催されたソウル五輪では圧倒的な実力で金メダル3つ(100m・200m・400mリレー)を獲得。加えてロングウェーブの髪・カラフルに伸ばした爪・派手なユニフォームなどの派手なファッションで五輪の話題を独占。絶頂期である五輪後に引退した後、1998年に38歳の若さで急逝したことも相まって、今では伝説的な女性アスリートとして語り継がれています。
そんな当時の象徴とも言える女性に例えられて、アラミスも光栄だ。


プロデューサー・金子泰夫さんによるアラミス評はこちら。

テレビでは男として通さないと、三銃士の一人という役柄上、話が進められなかったので、あまり女の部分を出せませんでした。しかし映画では、男の面と女の面の両方を持つアラミスに、思う存分活躍してもらいます。特に女性ファンの中には、どちらもやれるアラミスへのあこがれがあると思いますからね。
しかし、アラミスを女性に設定したのは正解だったと思います。とかく『三銃士』は男主体の物語と思われがちですが、アラミスのおかげでファンは子供も女性も、性別を越えてストーリーに集中してくれたんだと思いますよ。

ともすれば原作冒涜にもなりかねないアラミス女性設定について「正解だった」とご満悦。『アニメ三銃士』は開始当初から女性ファンの割合が多かったけど、それがアラミスの影響で決定付けられたわけだし。「性別を超えた」というアラミスの魅力は、獲得したファン層に如実に表れている。


そして今回最後に紹介するのはキャラデザイン・辻初樹さんのコメント。アラミス人気にビジュアル面で大きな役割を果たした辻さんによるアラミス評はどんなものかというと……。

剣を抜くとき腰を落とすでしょ。あの描き方が、男の場合かなり低くしてもいいんです。が、アラミスの場合、あんまりふんばらせても変だし、ヘッピリ腰にならないように、かつ華麗さを残してというバランスがむずかしいんですよね。
ただそれは、もとは女だからというよりも、クールな美形としてのとらえ方からきているものです。女性の意識はあまりなくて、自分なりのイメージでは『ルパン三世』の五右ェ門のような感じですね。

このコメントが載っているページにも、辻さん書きおろしのアラミスのイラストが掲載。コメントで語っているような腰を落として剣を構えた姿で、女性らしさよりも凛々しさを強調した「美形」として描かれている。
辻さんはアラミスを『ルパン三世』の五右ェ門に例えている。これは『アニメ三銃士』の翻案を務めているのが『ルパン三世』の原作者・モンキーパンチ先生であること。そのモンキーパンチ先生曰く『ルパン三世』のモチーフが『三銃士』であること。そしてアニメ版『ルパン三世』に辻さんも作が監督携わった経験があることを考えると納得の巡り合わせ。

…と、スタッフの皆さんはそれぞれの立場からアラミスを語っていました。皆にほぼ共通していたのは「女性として描いていない」ということ。ストーリーの都合上、女性であることを隠さなけれいけないのは当然ですが。それ考えるとアラミスの魅力は、女性(=男装の麗人)というフェティッシュな物ではなく、性別を超越した「美形キャラ」としての凛々しさ。そして、その背景にある「亡き恋人の仇を討つため銃士になった」というドラマ性にあったことが感じされます。