アニメ三銃士

Column30 語ろう!『アニメ三銃士』(素顔のメインキャラたち3)

『別冊アニメディア アニメ三銃士 PART1』に掲載された声優陣のインタビューを紹介する企画の第3弾。
今回は前回に続きダルタニャン役の松田辰也さん、ミレディー役の平野文さん、アラミス役の山田栄子さんによる座談会の後半を紹介します。

djpost1987.hatenablog.com
後半も座談会の主導権は平野文さんと山田栄子さんのお姉さまコンビ。女性ならではの視点から『アニメ三銃士』を語っています。


アラミスを演じる山田さんの体験談から『アニメ三銃士』が老若男女広い層から人気を得ているという話になりました。どんな体験かというと……。

大人にも愛されるアニメ!!


平野:アニメ三銃士』って、けっこう大人の人も見てるわよね。
山田:そうそう、この間ね、おかしかったのよ。ゴルフに行ったらキャディーさんが私のゴルフバッグに山田栄子って名前が書かれてあるのを見て、それが『三銃士』を演ってる私とは思わなかったらしいの。それで「この名前と同じ名前の人で声優さんがいるのよ。『三銃士』ってマンガやってて、登場人物と声優さんの名前もみんな。覚えちゃったのよ、おもしろいのよ、あなたも一度見てごらんなさい」って(笑)。
松田:えーっ!!
平野:どうしたのー、それで、実はそれは私ですって言えなかったの?
山田:言えなかったの。おかしくって、「そうですか、ありふれた名前ですから・・・」って(笑)。その時、おばさんたちもけっこう楽しみにして見るんだなって思った。
平野:そうよね。私も、家族で楽しめるアニメって今回初めてだから、みんなから見てるって言われるわ。それに小さい子はアラミスの胸をけっこう楽しみにしてるみたいね。
山田:そうね、アラミスの胸はもう出てこないのかしら?
平野:(松田に)でも、ダルタニャンがもうお風呂屋さんをやめちゃったから・・・。


−今までの中で、こうすれば良かった、みたいな後悔はないですか。
平野:私はないわ。むしろ、オンエアされたものを見ると、私のセリフだけではこうなのに、音楽やSE(効果音)で助けられて、良くなっているほうが多いわね。音楽も、ストーリーがそうだからかもしれないけれど、とても品がいいのよね。いわゆるアニメっていう先入観とは違う入り方をしているから、私はすごく好きなの。
山田:私も、最初の頃の象の出てくるシーンを、オンエアで音楽を聞きながら見て鳥肌がたっちゃったの。ダルタニャンが象に感動するのと同じように感動しちゃった。
松田:でも、平野さんよりも、効果で助けられているのは僕の方ですから(笑)。どちらかというと、僕の声の方がバックに負けちゃってしまっているというか・・・・・・。
山田:そんなー(笑)。
平野:でも、『アニメ三銃士』の音楽は盛り上がるところというか、感動させるツボを心得た音楽よね。やっぱりこれは親子揃って見るだけあるなって感じじゃない?アニメの大河ドラマ(笑)。

山田さんに『三銃士』を薦めたキャディーさん、ひょっとしたら「御本人」だと思って話を振ったのかも。山田さんもプライベートだから「私がアラミスを演じています」とは言えなかったのだろうけど。
そして、思春期のボーイズたちの心を鷲掴みにしたであろう「アラミスの胸」について。(あぁそうさ!当時は思春期真っ只中だった僕も楽しみにしていたさ!!!)本来はアラミスが実は女性ということを印象付けるためのシーンだったと思われるけど、そのインパクトからテレビシリーズ序盤の名シーンになったのはご存じの通り。
なお、山田さんが「もう出てこないのかしら」と見たがっているアラミスの女性的なシーンは、劇場版『アラミスの冒険』までお預け。


そして平野さんが「とても品がいい」と評する音楽について。現在ではアニメ音楽の巨匠となった田中公平先生だけど、当時はアニメファンの間ですら注目されていなかった。この『別冊アニメディア』でも田中先生に関する記事やインタビューは無い上、当時のアニメ誌でも(僕の知りうる限りでは)全く触れられていない。それでも共に作品を作る者として「音楽の力」を語っているのはさすがだ。


また、平野さんが「アニメの大河ドラマ」と評する件は、単に同じNHKで放送されている以上に、当時の世相を反映している。『三銃士』が放送されていた時期は、1987年の『独眼竜政宗』が平均視聴率39.7%を記録して「大河ドラマ復権」をアピール。続く1988年の『武田信玄』、1989年の『春日局』も平均30%以上の記録的高視聴率をマークしていた。即ち、大河ドラマとは当時における「国民的人気番組」の象徴だった。


さて、ここからは山田さんと平野さんの「お姉さまコンビ」による男性キャラ品評コーナー。当然、槍玉に挙がるキャラは・・・・・・。

愛すべき男たち!!


−ダルタニャンは、活躍もしますが、失敗もタマに・・・。
山田:人がいいのよねぇー。ダルタニャンって。でもさ、声を聞いてると辰ちゃんの人の好さっていうか、優しさがすごく出てるよね。
平野:そうよね。声には出るわよね。ホント、優しいのね。(松田さんの肩をポン!)
松田:でも、一番話題の多かったのは、やっぱりバッキンガム公爵!
平野:バッキンちゃん(笑)。
山田:なさけないのよねー(笑)。
平野:あの育ちの良さが裏目に出てしまう。
山田:おぼっちゃまでね。
平野:バッキンちゃんがさ、あんな抜け道を通って首飾りなんかもらわなければ、あんなことにならなかった(笑)。
山田:そうよねー。それにダルタニャンがもらいに行ったんだからすぐに渡せばいいのに、もう一回ブローチつけたいなんて言って、また事件が(笑)。
平野:だからダルタニャンとバッキンちゃんが話してると人の良さで何かボワーっと、肉マンが二つあるみたい(笑)。


山田:だいたい、『三銃士』って、みんな男の人が情けないというか人がいいというか。
平野:ホント、三銃士だって、むこうから敵が来て、行かなくちゃいけないってときにスッポンとか剣抜いて、「一人はみんなのために!」とか始めちゃうんだもん(笑)。
山田:でもあれは、一番快感だった。最近言わないけど。
松田:男でも、ジャンは一番小さいくせに一番しっかりしてるよね。
平野:ダルタニャンが悟されちゃうようなところもあるしね。アフレコ中もいつもダルタニャンとジャンは並んでるのよね。
松田:アラミスの秘密は言わないし。
平野:そうね。
山田:やっぱりジャンは、そのまんま真弓ちゃんみたいね。

作品最大のトラブルメーカーだったバッキンガム公爵は、やっぱり女性陣から「ダメ男」のレッテルを貼られてしまった。それに「首飾りをもらわなければ」とか「すぐに渡していれば」とか、視聴者目がツッコミたいことをズバリと言われてしまった。まぁこれも、バッキンガムが「愛すべきお人好し」だからかな。


それにしても平野さん、ダルタニャンと公爵のお人好しぶりを「肉マンが二つ」とは、何ともユニークな表現。それにダルタニャンと三銃士の名台詞である「一人はみんなのために」を茶化したり、すっかりミレディーに成り切って喋っているようだ。


結局、男性キャラで一番のしっかり者は、最年少のジャンという結論に。田舎育ちのダルタニャンや、貴族のバッキンガムとは違って、色々と世慣れているからなぁ。


さて、座談会もいよいよ締め括り・・・というところで意外な方が乱入、もとい飛び入り。

おっと飛び入りコンスタンス!


−ご自分のキャラ以外に好きなキャラは?
平野:私、コピーとロシナンテ!もう最高ね。コピーとロシナンテの声って、龍田直樹さんがそのまま、機械を通したりしてないんですよ。あのままの声なの。コピーとロシナンテの対話もおもしろかったわよね。
松田:声優界の江戸屋猫八!
平野・山田:(大笑い)。


と、そこへ、数枚の写真を手にした日高のり子さんが登場。
日高:遅れてすみませーん。
−もうそろそろ終わりなんですが・・・・・・。
日高:わっ、ごめんなさい。
山田:あ、その写真何?見せて見せて。
日高:これね、『アニメ三銃士』のキャラクターのぬいぐるみと撮った写真なの。
のぞいてみると、そこには、人間が中に入っている異常に頭のでかいダルタニャンやコンスタンスなどの
ぬいぐるみと、一緒に写っている日高のり子さんが・・・。
山田:やだ、このアラミスのぬいぐるみ、全然似てない(笑)。
(一同大爆笑)のうちに、なごやかな座談会の幕はとじたのでした。

最後になってコンスタンス役の日高のり子さんが登場。この雰囲気だと、元々日高さんも座談会に参加する予定だったけど、前の仕事が長引いたとかで大幅に遅れたみたい。本来なら平野さん・山田さんに加えて日高のり子さんの「お姉さんトリオ」に、松田さんがイジり倒される座談会になっていたのか。それが実現しなかったのは何とも残念。
そして日高さんが持ってきた『三銃士』の「キャラクターのぬいぐるみ」だけど、誌面に載っていた写真を見た印象は……まぁ、山田さんの感想通り。着ぐるみというより、人形劇のぬいぐるみを大きくしたようなデザインで、アニメキャラとのギャップも顕著だ。


ちなみに、声優の山口勝平さんは新人時代にアルバイトで『三銃士』の着ぐるみアクターをしていたそうで、日高のり子さんとはその頃に知り合ったという。この座談会の翌年(1989年)に放送開始の『らんま1/2』で共演することになるのはご存じの通りだけど、ひょっとしたらこの時の着ぐるみのどれかに、山口さんが入っていたのかもしれない。


以上で座談会は終了。最後に記事に付記されていた松田さん・平野さん・山田さんのプロフィールを紹介します。

松田辰也
プロフィール
昭和40年10月17日生まれの22歳。硬式テニスが得意なスポーツマンである反面、モノマネが趣味の三枚目?スタイリストもしている兼業声優(!?)です。
所属/グループこまどり


平野文
プロフィール
4月23日東京都生まれ。血液型O型。デビュー作の『うる星やつら』のラムちゃんみたいなキュートな女性。趣味は、バレエ、エッセイ、作詞。
所属/俳協


山田栄子
プロフィール
6月13日生まれ。休日はウィンドサーフィンを楽しむ、チャキチャキのハマっ子。
声優としてのデビューは『赤毛のアン』の主人公アン。アラミス役では、男まさりな中に優しさを出したいとか。
所属/青二プロダクション



次回からは、他のキャラクターを演じた声優さんのコメントを紹介します。