アニメ三銃士

Column29 語ろう!『アニメ三銃士』(素顔のメインキャラたち2)

『別冊アニメディア アニメ三銃士 PART1』に掲載された声優陣のインタビューを紹介する企画の第2弾。
今回はダルタニャン役の松田辰也さん、ミレディー役の平野文さん、アラミス役の山田栄子さんによる座談会を紹介します。

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この座談会はスタジオを飛び出して、ヨーロッパの街並みを思わせるオープンカフェで収録。そのせいか、トークの内容も開放感溢れるものになっています。特に松田辰也さんは、先輩のお姉さま2人にイジられる展開になっています。

ACT2 気分はもうルーブル!メインキャストなごやか座談会


所は、ヨーロッパの調度品のある喫茶店。揃ったメンバーはダルタニャンにミレディー、そしてアラミスとなったら、今の気分はもうルーブル
三人が、『アニメ三銃士』の裏話やおもしろエピソードをなごやかに披露!!



まずはそれぞれの役作りについて。

ダルタニャンになりきるには・・・


−松田さんがダルタニャンになりきるポイントを教えて下さい。
松田:僕は役になるとかならない以前の問題で(笑)。皆さんにご迷惑がかからないよう一生懸命やるのが精一杯で・・・。でも、かなり迷惑かけてます。


−山田さんは『ワンワン三銃士』の時はアンヌ王妃でしたよね?
平野:えー知らなかった!
山田:そうなの。それで今回アラミスになって、最初、低い声で演(や)るのがちょっときつかったんです。スペシャルで最初に録った時、「野太いほうの声でやって下さい」と言われて、「あー私って野太いのかぁ」っと思って凄いショックだった。でも今は低い声でやるにの慣れちゃって、アレがもしかして自分じゃないかって思うくらい出しやすくなっちゃったの(笑)。


平野:私も最初すごくとまどってた。ダルタニャンよりもとまどっていたの(笑)。何しろ今回、低い声も、悪い役も初めてだったのね、だから。
山田:そう?初めからぴったりだった。
平野:でも、26話でもう半年でしょ。栄子ちゃんと同じで、すっかりはまってしまって普段話す声もずい分低くなりましたよ。買物しててもミレディーみたいに「どうも・・・ありがとう・・・」ってね(笑)。


松田:この前ね、ダルタニャンのセリフですごく恥ずかしいのがあってね、コンスタンスとの・・・・・・。(言いかけてやめる)
平野・山田:(二人一緒に)教えて教えて!
松田:「泣くなよ、僕も悲しくなるじゃないか」っていうの。みんなからじじ臭いとか言われて顔が赤くなってしまった。
山田:でもさ、相手の人と話すのが恥ずかしくならない?
松田:のり子さんの顔見れない。
平野・山田:やっだぁー(笑)。
山田:でも私もそうなんだ。ラブシーン演ったその日とか、恥ずかしいの。
平野:そうよね、声だけなのにねー。


松田:あと苦手なのは叫ぶところ。僕昔っからダメなんですよ。『イデオン』ていうのやってる時から。
山田:なつかしー、でもたくましくなったわよね、ダルタニャンも。
平野:最近、とみにりりしくなってきた。よしよし(笑)。

「一生懸命やるのが精一杯」と語る松田さん。『アニメ三銃士』で声優の仕事を再開したばかりで、いきなり主役に抜擢だから、その苦労とプレッシャーは相当だったはず。
「低い声がきつかった」と語る山田さん。スペシャル版のアラミスはテレビシリーズと違い正真正銘の「男性」として描かれていただろうから、野太い声で演じるようにディレクションを受けたのかも。その延長でテレビシリーズも演じるのには苦労されたみたいだけど、収録から半年も経ちすっかり慣れたというのはさすが。


そして「初めて」だらけと語る平野さん。それまでは『うる星やつら』のラムに代表されるような、明るめのヒロインを演じることが主だったから、ミレディーのような悪役、それも低い声のキャラは本当に初めてで苦労された模様。それでも収録半年ですっかり慣れるどころか、普段の地声まで低くなったというのは、平野さんの方がミレディーに影響されたからかな。
かく言う僕も、当時は声優さんには余り詳しくなかった(神谷明さんや日高のり子さんや田中真弓さんは知っていたけど)ので、「ミレディーとラムちゃんを同じ人が演じている」と知った時は、あまりの違いに「声優さんて凄い!」と驚いたっけ。


松田さんがすごく恥ずかしかったというダルタニャンのセリフ「泣くなよ、僕も悲しくなるじゃないか」は、34話「鉄仮面を逮捕でよ」でコンスタンスに言ったもの。セリフ自体はもちろん、この回は『三銃士』にしては珍しくウエットな雰囲気だったので、より印象に残っているのかも。


あと、『イデオン』とは(座談会の時点でも)懐かしい作品。1980年放送に放送された富野嘉由季監督によるロボットアニメで、1982年には劇場版も公開。ロボットアニメの範疇を超越した壮絶なドラマと哲学的なテーマで、「富野作品の最高峰」と評するファンも多い傑作。その『イデオン』に、松田さんはアフタ・デク役で、山田さんはパンダ・ロッタ役で出演していました。
イデオン』当時の松田さんは15歳、変声期を迎えていたこともあり収録時は『三銃士』同様に(あるいはそれ以上に)苦労されていたと思われます。その奮闘振りを共演者として見ていたであろう山田さんが、『三銃士』で再び競演した松田さんを「たくましくなった」と語るのは、姉と弟のような関係で心が温まります。


続いてはダルタニャン同様、否、それ以上に『アニメ三銃士』を語る上では欠かせないミレディーについて、お三方はこう語っています。

ミレディーの魅力分析


平野:さっきも言ったけど、ミレディーを演るのは最初はとっても憂うつだったの。難しくって悩んでしまって、そうしたらみんなが「うらやましい役ね、うらやましい役ね」って言うから、そんなにオモシロイ役なのかなって思ったら、ホント、おもしろくなって(笑)。
松田:この話、ミレディーがいなくなったらつまらなくなっちゃう。
山田:『三銃士』ってタイトル、『ミレディー』にしたほうがいいかも(笑)。
平野:タイトルとっちゃうの!?


松田:僕は、ダルタニャンって、ミレディーのこと表面上は一生懸命憎んでるんだけど、心の片すみのところで、絶対にミレディーに魅かれている部分があるんじゃないかって思って演ってるんですけど。
山田:そうよね。とても魅力的なキャラクターよね。私も、色々なところへ行って、ミレディーやりたい、ミレディーやりたいって言ってるの(笑)。
平野:一度とりかえてみる?
山田:ハハ・・・。それにタフよねミレディー。
平野:そう。ドレスのまま水中泳いじゃって、水から出て来ても平気でザバザバ歩いちゃうの。きっとあれは水を含んで重いだろうなって(笑)。
山田:それでも、色っぽさは失わないでいるのね。
平野:スタッフからも、もっと色っぽく、できるだけ色っぽく演って下さいって言われてしまって・・・。悪ながらも、その色っぽさを出すために、語尾を伸ばしちゃって、変な日本語使っちゃおっと思って演ってるんですよ。


−ミレディーの登場するシーンで、印象に残っているシーンは?
平野:あの、飲まず食わずでイギリスで悪いことしてて、密航して船底に隠れた時に、猿のペペに取ってきてもらった食べ物を、むさぼり食うシーン。あれはスゴク人間的で好きだったワ。
山田:私はアレが好きだった。峰さんと・・・。
松田:ボナシューと?
山田:そう、ボナシューと「私はだれ〜?」あの催眠術かけた時の言い回し、いやらしくて、あとでみんなで良かった良かったって言ってたのよ〜(笑)。
平野:ホントォ。
山田:あれ峰さんもすごく気に入ってて他のスタジオでもやってるんですって!

まさかのタイトル乗っ取り!・・・・・・は冗談としても。作品タイトルになっているアトス・アラミス・ポルトスの三銃士にも、主人公のダルタニャンにも負けないほどの存在感を放つミレディー。平野さんが最初に抱えていた憂うつもどこへやら、すっかり他のキャスト陣から人気のキャラになりました。
そのミレディー、最初の方は色気や妖しさで超然とした雰囲気だったけど、首飾り編でダルタニャン相手に苦戦するようになってからは、余裕が無くなってきた換わりに別の魅力が出てきたような。


それにしても、ミレディーの色っぽさを出すための裏話は面白い。特に催眠術をかける時の「私はだれ〜?」(14話「パリ脱出」より)は印象的。術をかけられたボナシューは災難だったけど、演じる峰恵研さんは役得だったろうなぁ。


今回はここまで。次回は座談会の後半を紹介します。