アニメ三銃士

Column43 語ろう!『アニメ三銃士』(証言アソート編2)

アニメ三銃士』放送当時の、アニメ情報誌に掲載された関係者のコメントを紹介する「語ろう!」シリーズ。単独の「証言」として取り上げる機会が無かった短めのコメントを一挙に紹介する「証言アソート」の第2弾です。

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今回はテレビシリーズの放送が中盤に差し掛かった頃からクライマックス、そして劇場版『アラミスの冒険』が公開されるまでのにコメント詰め合わせです。今となっては「それ、放送前にバラしてよかったの?」と驚くようなネタバレも満載ですが、それもまた当時ならではの雰囲気が感じられます。




まずは、ちょっと意外な立場の人が語る、こんな証言。

何ともクラシックなヌードだった。今のアニメでは考えられないタライの入浴シーン。あの時から、アラミス人気はうなぎ昇り。アラミスなしでは、夜も日も明けぬファンが急増。つれて『三銃士』の人気も急上昇。やっぱり、ヌードは強かった!なんてヨコシマな見方をしている私は、実はミレディーが一番好きなのだ。
(別冊アニメディア アニメ三銃士PART1編集長・忍足恵一)

「別冊アニメディア〜」の編集後記より。アニメ情報誌の編集者という立場から、アラミス人気が爆発した瞬間を語る。やっぱり歴史物ならではの「タライの入浴シーン」はインパクト絶大だったのか。
忍足氏は「別冊〜」の他にも本誌にあたる「月刊アニメディア」や、姉妹誌であるOAV専門誌「月刊アニメV」でも編集長を務めた、いわば学研アニメ情報誌の生き証人。氏にとっても『アニメ三銃士』は思い出深い作品となっていることでしょう。


続いてはファンなら誰もが気になっている、あのキャラの深層心理を語る証言。

彼女の言葉は本心からのものだったでしょうが、あれだけのことをやってしまった以上、やっぱり同じような生き方しかできなかったんだと思います。
(監督・湯山邦彦月刊アニメージュ1988年7月号)

この号では『アニメ三銃士』を4ページに渡って特集。前半2ページは「いま、あかされる!?謎の美女、ミレディーの過去」の見出しで、31話「ミレディーの処刑」のあらすじを先取り紹介。そして31話で改心を誓いながら、鉄仮面の仲間として再登場するミレディーについて湯山監督のコメントを掲載。監督と言えば全キャラクターの人格と行動を支配する立場なのだけど。それでもミレディーの本心を、確信を持って語ることはできなかった。よく「キャラクターが勝手に動き出す」という表現があるけれど、それまで描き続けたミレディーというキャラクターが「やっぱり悪の道しか歩めない」と、湯山監督に思わせるようになっていたのかも。
同ページには31話で描かれた修道院での小間使い時代の設定画と、32話以降の髪の短い姿(左肩には罪人の証である烙印も!)の設定線画も掲載。後半2ページは「そして物語は第2部・鉄仮面編へ!!」と銘打ち、首飾り編のクライマックス26話「ルーブルの大舞踏会」を誌上プレイバック。ファンには読み応えのある記事となっていました。


次は放送当時に流行したキャッチコピーから、こんな証言。

アトスは沈着でいながら胸の奥に人情味を秘めている。大人の渋さがありますよね。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1988年8月号)

当時発売されたドライビールと、そのキャッチコピー「ドライ」にあやかって、各作品の"ドライなキャラ"を紹介する「アニメキャラDRY特集」より。『アニメ三銃士』からは三銃士のリーダーであるアトスと、登場したばかりの鉄仮面を紹介。
珍しくアトスをフィーチャーした記事で、見出しは「人情を押さえた大人のコク」。31話でダルタニャンがミレディーを処刑したと嘘をついているのに気付きながら、あえてダルタニャンが自分から真実を告白するのを待つなど。「冷静に見えて、実は人情を秘めている」と分析。


同じ特集記事より、「謎の悪役」として華々しく登場した鉄仮面については、こんな証言。

鉄仮面はとにかく強い!刺激満点ですね。それに、無駄な段取りを踏まない。合理的かつ強引に動く様は、まさにドライの極致です。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1988年8月号)

同じく"ドライなキャラ特集"より。「究極のニガミ 悪の刺激」の見出しと共に、「この特集は俺が乗っ取った!」と言わんばかりにマントを翻して金貨や宝石をバラ撒く鉄仮面のイラスト(辻初樹さんの描き下ろし!)はインパクト大。
また記事には「そのパワーは、まるでターミネーターのよう」と、時代を感じさせる表現も。映画『ターミネーター』シリーズは、まだ1作目(1984年)が公開されただけ。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターこと「T-800」がヒーローとして活躍する2作目(1991年)は公開前で、即ちターミネーターとは「不気味で屈強な悪役」の代名詞だった。
ところで…ここでは湯山監督に「無駄な段取りを踏まない」とか「合理的」とか評されている鉄仮面だけど、話が進むにつれてボロが出るシーンも増えてきて、「ドライ」とはかけ離れて行った気も……。


さて、ここからは「鉄仮面編」も佳境に入った時期の、まさに「ネタバレ上等」な記事や証言が連発。まずは鉄仮面の陰謀についての証言。

鉄仮面の隠れ家に、鉄仮面のと同じ仮面を被せられている人物が、監禁されているんです。彼はいわばニセの鉄仮面なんですが、第40話では、本物の鉄仮面として、リシュリュー主催の園遊会に姿を現します。


登場してすぐ仮面を外すのですが、彼の顔はルイ13世にそっくりなんです。それもそのはず、実は彼はルイ13世の双子の弟でフィリップというのです。ルイ13世はその存在を全く知らなかったのですけれどね。


フィリップを国王とすり替えて政権交代を謀ろうというのが鉄仮面の目的です。一種のクーデターですね。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1988年11月号)

ダルタニャンもびっくり!鉄仮面が一人、二人、三人!」の見出しと、薄暗い隠れ家の廊下でダルタニャンが二人の鉄仮面に挟み撃ちに驚くイラスト(辻初樹さん描き下ろし)で、鉄仮面の陰謀を紹介する記事。そこで監督自らがネタバレ上等とばかりに、陰謀の正体から実行の手口に至るまで懇切丁寧に解説している。
湯山監督のコメントにある「ニセの鉄仮面(フィリップ)が本物の鉄仮面として園遊会に姿を現す」というのは、本編とは少し異なる説明。あるいは40話「すりかえられた国王」でミレディーと共にアジトを脱出する時に、本物の鉄仮面を名乗ったシーンのことかな。
そして記事では園遊会場で「ニセ鉄仮面」としてダルタニャンに逮捕されるルイ13世を「三人目の鉄仮面」と記している。「ニセ鉄仮面」の正体が「ニセ国王」のフィリップと「本物の国王」であるルイとは、何ともややこしい。


続いては鉄仮面編最大の、否、『アニメ三銃士』最大の見どころと言うべき、アラミスの行動について。

実はアラミスの今回の行動は、殺された昔の恋人フランソワの敵(※ルビで「かたき」)を知りたいというピュアな気持ちから生まれたものなんです。偶然マンソンのしているペンダントを見たアラミスは、ハッと驚き、彼こそ探し求めてた恋人の敵に違いないと思い、その確証を得るため敵側に潜入したわけです。実際、マンソンが敵なんですけどね。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1988年12月号)

女の執念!アラミス、仇討ち開始!」の見出しで、再びネタバレ満載のコメント。ファンの間では「アラミスが銃士になったのは殺された恋人の敵を討つため」というのは周知の設定だったけど。その敵がマンソンだったとは衝撃の事実!……いや、簡単に予想できるか。湯山監督も「マンソンが敵なんですけどね」と軽い口調(文調?)でバラしているし。
なお、この号では巻頭で劇場版『アラミスの冒険』制作決定のスクープ記事があり、まさに「アラミス尽くし」でした。


その劇場版についての続報記事では、こんな興味深い証言が…。

まず、登場するキャラクターや、コスチュームなど、全体的にリアルなものになっているところに、注目して欲しいですね。
企画当初は、主役のアラミスの一日を描くとか、マニアックなものも考えてはみたんですけど、ちょっと…ね(笑)。
そこでフランスの運命にもかかわる重要機密文書をめぐる物語にして、前半はミステリー、後半はアクションの連続という構成にしました。その中で、テレビでは詳しく描けなかった、アラミスの婚約者のフランソワ、また今回は、スペインのスパイとして暗躍する仮面のミレディーなどが要チェックのキャラです。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1989年1月号)

劇場版用にリアルタッチにリファインされたキャラクター設定と共に掲載された、湯山監督のコメント。劇場版の初期構想だったという「アラミスの一日」といのも観てみたかった。上映時間が長めだったら、ひょっとしたら実現していたかも。
なお記事では、まだTVシリーズが放送中(ちょうどアラミスの秘密が明かされた頃)にも関わらず、ミレディーの「復活後」の設定画も公開するネタバレぶり。


すっかり「劇場版モード」と思いきや、TVシリーズも忘れちゃいけない。クライマックスを振り返って、こんなコメントも。

三話をかけてじっくり見せたあのアクション。体を張った動きの醍醐味を忘れないで欲しいですね。特に、野生児ダルタニャンの軽業的な動きは、主人公の面目躍如と言える自信作でした。
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1989年4月号)

TVシリーズ放送終了直後に掲載された特集記事「人気アニメさよなら企画 思い出の卒業アルバム」より。クライマックスで大活躍だったダルタニャンについて語る湯山監督。「主人公の面目躍如」という言葉からは、アクション満載のクライマックスを描けたことへの満足感と、アラミスに人気も出番も取られがちだったダルタニャンへの気遣いが垣間見える。
記事は「卒業アルバム」というコンセプトに沿って、「パリの街を駆け抜けた、それぞれの夢と冒険」という見出しと共にTVシリーズの名シーンを、放送日の日付入りで紹介。ダルタニャンとコンスタンスの出会い(1話)、シャルロットを身を呈して守るジャン(10話)、燃え盛る馬小屋から脱出を図るダルタニャンとアラミス(17話)など序盤の懐かしいシーンも紹介。


さて、TVシリーズから程なく経って公開された劇場版『アラミスの冒険』について、監督による見どころ紹介(?)がコチラ。

アラミスの戦う場面をたっぷりと楽しんでもらえますよ。男装の麗人である彼女が思わず上げてしまう悲鳴などに、山田栄子さんの女っぽさが出ていて、不思議な色っぽさを感じてしまいますよ!
(監督・湯山邦彦/月刊アニメディア1989年4月号)

色っぽい悲鳴のアラミス!」という小見出し。確かに、劇中にはアラミスの女装(?)シーンとか、鞭打たれて悲鳴を上げるシーンがあるけれど。あまりフェティッシュなシーンをプッシュするのは如何なモノかと。いやいや、これも戦う姿の凛々しさを引き立てるためのアクセントだと言いたいのかな。そうに違いない。
この記事は「春の劇場アニメ・完全プレビュー」という特集で、同時期に公開された『ヴィナス戦記』『ファイブスターストーリーズ』『宇宙皇子』なども紹介されています。そして「完全プレビュー」に相応しく、事件の黒幕がTVシリーズ最終回で改心して死んだはずのミレディーであることや、ジャンが生き別れの母親と再会することも、しっかりネタバレされていました。


同じく『アラミスの冒険』の記事より、主演を務めるアラミス役・山田栄子さんのコメント。

今回のアラミスは、ドレス姿もありますが、声の方は銃士隊のアラミスのまま。女性の部分を抑えた低いトーンなんですよ。アラミスはもともと野性的な人なのでしょう。回想シーンのフランソワとの恋愛場面では愛らしい彼女にも注目してくださいね!
(アラミス役・山田栄子 月刊アニメディア1989年4月号)

最後の最後になって「女性のアラミス」を演じることができた山田さんのコメント。回想シーンのルネは「恋する乙女」らしく、そしてドレス姿の時は「銃士隊のアラミス」として凛々しく、見事に演じられたという自信と充実感に溢れています。


前回・今回と、これまで紹介する機会の無かった「証言」を拾い集めて紹介しました。物語の核心を惜しげも無くネタバレしているコメントが目立つのも、情報規制が緩かった当時の雰囲気が感じられます。あるいは、特番続きで放送スケジュールが遅れ気味だったので、ファンサービスとして敢えてネタバレしていたのかもしれません。
また、紙面に掲載されたコメント自体は短くても、実は「本体」として長めのコメントがあって、それが記事のコンセプトや紙面の都合で一部のみが抜粋・引用されたのかもしれません。短いコメントだからこそ、そこに秘められた「想い」をあれこれ推測するのも面白いものです。


さて、僕が持っている放送当時のアニメ情報誌等に掲載されていた、『アニメ三銃士』に関する「証言」は一通り出し尽くしました。とはいえ、現状の「手持ち」が無くなっただけで、何かの切っ掛けで未見の証言を「発見」するかもしれません。あるいは、ネットなどの新たな媒体で、スタッフやキャストなど関係者から「新証言」が飛び出すかもしれません。


そんなまだ見ぬ「証言」を見つけた時は、当Blogで…語ろう!『アニメ三銃士