アニメ三銃士

51話:アラミス断崖の決闘

(放送日:1989年2月10日 / 演出:水谷貴哉 / 作画監督:辻初樹)

■Story■
ベル・イール島を攻め落とせず、フランス軍本陣の国王ルイやトレビルは意気消沈していた。その本陣に、ダルタニャンからの手紙を託されたコピーが飛び込んできた。その手紙には島近くの大渦がベル・イール島の洞窟に繋がっていることが記されていた。
三銃士はダルタニャンが生きていたことに安堵し、さらに決死隊として志願。大渦からベル・イール島に潜入して砲台を占拠する作戦に名乗り出る。


三銃士は樽に入って大渦に投じられ、無事にベル・イール島の洞窟に流れ着きダルタニャンと合流。そして、二手に分かれて、ダルタニャンとアラミスは砲台へ、アトスとポルトスは島の裏手に向かう。
島の裏手では象が働かされていた。ジャンが象に向けてコショウ袋を投げつけると象は暴れ出し、その混乱に乗じてアトスとポルトスが手下たちを倒す。そして砲台を守っていたマンソンたちが裏手に向うと、手薄になった砲台をダルタニャンとアラミスが占拠。マントを旗のように掲げ、占拠成功の合図を出す。
それを確認したロシュフォール率いるフランス艦隊は、ベル・イール島へ進軍を開始する。


砲台が占拠されたことを知り、マンソンが戻ってくると、ダルタニャンたちは大砲で応戦する。しかし、マンソンが放ったボウガンでアラミスが腕を負傷。ダルタニャンが治療をしようと服を破ったため、図らずもアラミスが女性だと知ってしまう。
マンソンたちを一旦退けた後、アラミスはダルタニャンに自分が男装して銃士になった理由を話す。許婚のフランソワがフィリップ王子を守ろうとして殺されたこと。その仇を討つため銃士になったこと。そして探し当てた仇であるマンソンは自らの手で討つと話し、それを聞いたダルタニャンも了解する。


やがてマンソンが鉄仮面・ミレディーともに砲台へ攻めて来た。放水車で松明を消され大砲が使えなくなり、大勢の手下に囲まれてしまう。そこへアトスたちが、象を連れて駆け付けた。手下たちは全て倒され、鉄仮面とミレディーは砲台から逃げ出す。マンソンも逃げようとするがアラミスに追われ、両者は断崖で対決する。


アラミスが一度はマンソンを追い詰めるが、マンソンが仕込み剣で不意打ちして逆にアラミスを断崖へと追い詰める。そしてマンソンの剣がアラミスの胸に突き立つ。しかし次の瞬間、剣はバラバラに砕け両者は断崖に落ちる。マンソンはそのまま崖下に消え、アラミスは木の枝を掴み、駆けつけたダルタニャンに引き上げられる。
アラミスをマンソンの凶刃から救ったのは、胸に付けていたペンダント。かつてルネだった頃のアラミスがフランソワに贈った思い出のペンダントだった。




■Explanation■
いよいよベル・イール編もクライマックス。ダルタニャンと三銃士が再びベル・イール島を舞台に大活躍を見せる。しかも、三銃士が樽に入って大渦に飛び込んだり、象が大暴れしたり、ダルタニャンが大砲をブッ放したり、アラミスが火薬樽を爆発させたり、派手なアクションシーンが山盛りになってる。
加えて、作品の大きな軸だった「アラミスの仇討ち」に決着が着く、次回の最終話にも劣らぬ重要エピソードだ。


島の裏手で働いていた象に、ジャンがコショウをぶつけて暴れさせるシーンは、1話を思い出させる何とも懐かしい展開だ。その後、桶の水を鼻からシャワーのように噴出して、傍らのコンスタンスとジャンが喜ぶ姿は、クライマックス前のちょっとした息抜きだ。
その騒ぎに乗じて砲台を奪取したダルタニャンとアラミス。朝日をバックに、ダルタニャンが銃士のマントを旗のように振りかざすシーンは、それを見て大喜びするロシュフォールの姿と相まってワクワクするシーンだ。


そして今回の、さらに言えば『アニメ三銃士』の多くを占めるであろうアラミスファンにとって、最大の見所であるアラミスの活躍について。
ダルタニャンとアラミスのコンビで思い出すのは16話と17話。16話では肩を撃たれたアラミスをダルタニャンが治療しようとしたけど、アラミスが女性だと知られるのを恐れて、ダルタニャンを宿屋の部屋から追い出すシーンがあった。その後もダルタニャンは治療中のアラミスの様子を窺おうと部屋を覗いてお湯を掛けられ、「アラミスって分からない」と怪しむような呆れたようなセリフも。その時は理解できなかったアラミスの行動も、そしてアラミスが終始漂わせている何かを隠しているような雰囲気も、ようやく理解できたことだろうか。


そして17話(「一人はみんなのために」という作品のキャッチコピーがサブタイトルがとして付けられた回)でのダルタニャンとアラミスは、宿屋に火を放たれ、さらに護衛隊の追跡に遭う。そこでのアラミスは我が身を犠牲にしてダルタニャンを逃がそうと、まるで仇討ちを諦めたかのような行動をしていた。しかし、今回は全く違う。今まで隠し続けていた自身の秘密と過去を、遠慮するダルタニャンを押し切るように告白した。それは仇討ちを目前にして自らを奮い立たせるためだったのかもしれないし、今まで正体を隠し続けていたことへの償いだったのかもしれない。このシーンで、ダルタニャンとアラミスは本当の意味で仲間になったと言える。……と書いてしまうと、アラミスの秘密を(劇中を観た限り)知らされていないアトスとポルトスは仲間じゃないことになってしまうなぁ。


ともあれ、ダルタニャンに全てを打ち明けたアラミスは、象という強力な味方を連れて駆け付けたアトスとポルトスの援軍も受けて、後顧の憂い無くマンソンとの決闘に望む。
一方のマンソンは仲間である鉄仮面やミレディーから、まるで見捨てられたかのように置いてきぼりにされた末に断崖に追い詰められるという、アラミスとは全く逆の状況で決闘に望むことになった。


決闘でマンソンの凶刃からアラミスを救ったのは、フランソワのペンダントだった。そして、断崖から落ちそうになっていたアラミスを救ったのは、断崖に手を差し伸べたダルタニャンだった。かつての許嫁だったフランソワ(に送ったペンダント)だけでなく、今の仲間であるダルタニャンが、力を合わせてアラミスに仇討ちを成し遂げさせた。銃士になったからこそ、アトス・ポルトスと出会い「三銃士の一人」になってダルタニャンと出会い仲間になれたからこそ、悲願を成し遂げられた。それを象徴的に描いたラストシーンだった。


こうして『アニメ三銃士』当初からの、否、放送前の「実は女性」という設定が発表された時からファンの大きな注目を集めていた、アラミスの物語は決着がついた。
続いて鉄仮面の野望も、そして『アニメ三銃士』という物語も、幕が下ろされようとしていた。


■Dialogue/Monologue■

ルイ「あんな小さな島一つ落とせないようでは、我がフランスの威信に関わるぞ」
トレビル「我が国を侮った諸外国が鉄仮面に味方するようになると、ますます厄介なことになります」

たかが盗賊退治と言うなかれ。今や鉄仮面討伐は国王自らが出陣する程の、国の威信をかけた大仕事となっていた。

アトス「では行ってくる、ロシュフォール殿!」
ポルトス「合図を送ったら、直ちに総攻撃を頼むぞ!」
ロシュフォール「任せておけ!頑張れよ!」

樽に入って大渦に飛び込むという、傍目には自殺行為にしか思えない作戦に挑む三銃士だったが、作戦前の言葉には恐れは微塵も無かった。
ロシュフォールも、本陣で作戦を聞かされた時には戸惑った表情を見せていたけれど。三銃士を送り出す時の言葉には「仲間」の作戦成功を願って励ます気持ちが込められていた。

アトス「みんな!無事か!」
ポルトス「息が詰まって死ぬかと思ったぜ!」

無事にベル・イール島へたどり着いた三銃士。ポルトスは体がでかい分、色々と大変だったろうなぁ。

コンスタンス「ダルタニャン、気をつけてね」
ダルタニャン「うん、アトス、コンスタンスを頼んだよ」
アトス「ああ、任せておけ」
ポルトス「コンスタンスに危ないマネはさせないさ」
ダルタニャン「じゃあ行こう、アラミス」

二手に分かれて要塞を攻略することになったダルタニャンと三銃士。
コンスタンスとジャンの安全をアトスとポルトスに託して、ダルタニャンはより危険な砲台の攻略へと望む。
別れ際に親指を立てて互いの健闘を祈りあうのも良いシーンだ。

手下1「おい、何とかしろ!」
手下2「ダメだ!コイツが俺達の言うことを聞くもんか!」

コショウをぶつけられた象が大暴れ。象使いも鼻で弾き飛ばされて、もはや手がつけられない象に大慌てな手下たちの様子。
巻き込まれた象使いは災難だったけど、金目当てで鉄仮面に味方していたみたいだったので自業自得かも。

ロシュフォール「やったぞ!旗だ!狼煙をあげろーっ!くぅーっ!!」

ダルタニャンが掲げた砲台占拠の目印である旗(銃士のマント)を望遠鏡で確認したロシュフォール。進軍の指示を出した後、子供のように大喜びする。
ロシュフォールは敵だった頃から感情豊かでコミカルに描かれていたけど、ベル・イール編では驚いたり喜んだり、まるで視聴者の分身の如く多彩な姿を見せている。

ミレディー「敵がこちらに回りこんでも、大砲の餌食です」
手下「(駆け込んできて)大変です!砲台が敵に奪われました!」
鉄仮面「何ぃ!」

鉄仮面との作戦会議にて大砲の威力を話すミレディーだったが、ちょうどその時に砲台が占拠されたという知らせを受ける。
大真面目なシーンなんだけど、余りにもタイミングが良すぎてコミカルに思えてしまう。

ジャン「ごめんよ、その水でしっかり鼻を洗っとくれ」

「象にコショウをかけて暴れさせる」という荒業を、1話に続いて再びやってくれたジャン。
今回はしっかりと象に謝って、桶の水で鼻を洗わせてあげました。

ダルタニャン「マンソンめ、今度こそ吹っ飛ばしてやる」
アラミス「待てダルタニャン!マンソンだけは俺の手で討ち取らせてくれ」
ダルタニャン「えっ?」

大砲(作品世界における最強の大量破壊兵器)を手にして気分が大きくなったのか、ダルタニャンはマンソンを大砲で吹っ飛ばそうとする。
しかし、アラミスの思わぬ事を言い出したので隙ができたのか、マンソンのボウガンによる狙撃を許してしまう。それを喰らったのは・・・・・・。

ダルタニャン「アラミス、君は女だったのか!」
アラミス「それがどうした・・・・・・そんなことより、今はここを守り抜くことが先だ!」

女性であることをダルタニャンに知られてしまったアラミスだが、そこは戦いの真っ只中。占拠した砲台を守るという任務、そして仇のマンソンを討つという悲願の前には、今更些細なことだったのかもしれない。

アラミス「なぜ男に成り済ましていたか、聞きたいか?」
ダルタニャン「いや、いいよ、無理に言わなくても」
アラミス「いや、聞いてくれ。もしかして、ここで死ぬことになるかもしれないのだから。もしそうなった時は、私の代わりにフランソワの仇を討ってくれ」
ダルタニャン「フランソワ?」
アラミス「……私の、許婚だ」

マンソンたちを追い払って一息ついてる頃。アラミスは男装して銃士になった理由を、自ら話し出す。
ここでフランソワの名前を出したのはフィリップ王子に忠誠を捧げ、それ故に日陰の存在のまま非業の死を遂げた彼の存在をダルタニャンに知って欲しかったからなのかも。

ダルタニャン「分かった、他の奴らは俺が引き受けた。マンソンは君に任せよう」
アラミス「……ありがとう」

アラミスから辛い過去と、仇討ちへの強い決意を聞かされたダルタニャンは、敢えてマンソンへの仇討ちを任せる。
心の何処かには「怪我をしているから無理するな」という気持ちもあっただろうけど。

アラミス「ダルタニャン、俺は叶わないまでもマンソンに切り付けてやる!君はひとまず逃げろ!」
ダルタニャン「逃げてたまるか!ここを守り抜くぞ!」

大勢の手下たちに囲まれて絶体絶命の中、無謀でもマンソンを切り付けると言い出すアラミス。
それが砲台を守るという任務も、フランソワの仇を討つという悲願も、放棄することと分かっているからこそ、ダルタニャンはアラミスを一喝する。

アラミス「覚悟はいいな、マンソン!今日こそフランソワの仇を討ってやる!」
マンソン「それはどうかな、返り討ちにしてくれる」

45話に続き、再び対決するアラミスとマンソン。
マンソンは鉄仮面とミレディーに置いてきぼりにされた上に逃げ切れなかった形だけど。それでも意を決して迎え撃とうとする。

マンソン「ヘヘヘ・・・・・・女のお前なんぞに、何ができる!」

断崖での決闘にてアラミスに剣を弾き飛ばされて、追い詰められた時のセリフ。
追い詰められたとは言え悪党なりの矜持で、アラミスが最も憤るであろう言葉を突き付ける。

マンソン「形勢逆転だなぁ、あぁ、どうしたぁ、さっきまでの威勢は!えぇ、お嬢さんよぉ!」

こちらは仕込み剣で不意打ちして、逆にアラミスを追い詰めた時のセリフ。
追い詰められた時とは一転、今度は余裕など全く感じさせず、言葉も表情も狂気に満ちていた。

ダルタニャン「アラミス、頑張るんだ!」
アラミス「ああ、大丈夫だ」
ダルタニャン「すぐに助けるぞ!」

マンソンと共に断崖から落ちながら、負傷した腕で木の枝を掴んで九死に一生を得たアラミス。
力尽きて落ちる寸前で助け出したのは、秘密を語って仇討ちという悲願を共有し合ったダルタニャンだった。

アラミス「!……フランソワ……」

マンソンへの仇討ちを成し遂げたアラミス。かつて自分と共に掛け替えのない時を過ごし、非業の死を遂げながらもペンダントを介して仇の正体を示して自らの命を救った。
そんな許嫁フランソワの名前を呟き、アラミスの悲願成就を描いた本話は幕を下ろす。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「さあ、いよいよ最後の戦いだ!」
ジャン「だけど、鉄仮面もミレディーもしぶといからなぁ」
コンスタンス「早くみんなで無事にパリへ帰りたいわ。ダルタニャン、気を付けてね」
ダルタニャン「うん!コンスタンス、この戦いが終わったら…」
コンスタンス「えっ?」
ジャン「次回『アニメ三銃士』」
コンスタンス「《さようなら、ダルタニャン》」
ダルタニャン「アトス、アラミス、ポルトス、ジャン、コンスタンス。
みんな、みんな長い間、本当にありがとう」

ついに迎えた最終回の次回予告。その内容もダルタニャンがコンスタンスに「この戦いが終ったら」と何かを言いかけたり、三銃士やジャンに「本当にありがとう」と感慨深げに語りかける。その言葉は、今まで作品を観続けてくれた全ての視聴者への感謝のメッセージにも聞こえる。
そして何よりサブタイトルが「さようなら~」となれば、危ないフラグのようで不安になってしまう。
しかしご安心。紹介されている映像は「星空をバックにダルタニャンとコンスタンスが…」という、ネタバレ上等なまでにハッピーエンドであることを示すものでした。


■Illustration Special PART2  ~イラスト特集・その2~■
前回に続き視聴者からのイラストを背景に、今回は字幕で「鉄仮面編」のあらすじを紹介
今回の本編を反映してか、アラミスが鉄仮面の仲間となるも、それは殺された恋人の仇を探すためで「仇のマンソンを見事に討ちました」とアラミスがメインで語られている。
また「ジャンのお母さんは見つかるのでしょうか?」と、本編におけるもう一つの未解決案件を思い出させる一文もあり、そして最後はやはり「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」で締めくくられている。


(記:2014年10月19日/追記:2020年05月04日)