アニメ三銃士

49話:とらわれの銃士たち

(放送日:1989年1月27日 / 演出:早川啓二 / 作画監督:菊地城二)

■Story■
ジャンとコンスタンスは、象を運ぶ船に閉じ込められていた。ジャンはブドウ酒の樽を空けて、コンスタンスと共に樽の中に隠れる。やがて船がルーアンの港に着くと、船長は象使いからお礼の金貨を渡され、船長はそのお返しにブドウ酒の樽を渡す。その樽こそジャンとコンスタンスが隠れていた樽だった。
2人の入った樽は象に背負われ、共にベル・イール島へと向かっていた。


一方、ルーブルの国王ルイは、ベル・イール島に潜入したダルタニャンたちから連絡が無いのを不安に思いつつ、任務の成功を信じてベル・イール島への出陣を決定する。


ベル・イール島では捕えられたアトスとアラミスは、ダルタニャンとポルトスを誘き出す囮として、足枷を付けられ奴隷たちと共に働かされてた。
手下に扮していたダルタニャンとポルトスは炊事場に潜入して奴隷用の食事当番を装うと、工事現場で食事を配るフリをしてアトスとアラミスに接触。炊事場で入手した包丁を渡すと、密かに脱出の打合せをする。
さらにダルタニャンたちは炊事場に戻ると、料理係を脅してフィリップ用の食事を作らせる。


その頃、鉄仮面とミレディーは塔に幽閉しているフィリップ王子に再度の蜂起を迫るが、もはやフィリップは応じようとしなかった。
そこへ入れ違うように、食事係を装ったダルタニャンとポルトスがフィリップに接触。ダルタニャンは国王ルイがフィリップを許そうとしていることを伝えると手下の服をフィリップに渡し、入れ替わる形で自らは塔の部屋に残る。
やがて異変を察したマンソンが駆け付け、遅れて駆け付けた鉄仮面により部屋のドアが破られる。見つかったダルタニャンは鉄仮面と剣を交えながら、塔の屋上へと登る。


その頃、工事現場で働かされていたアトスとアラミスは隙を突いて見張りを倒し、さらに包丁で脅して船着場へと案内させる。ポルトスとフィリップも跳ね橋を上げられ脱出不可能なところを、フィリップが海辺の視察と称して跳ね橋を下ろさせ脱出する。
そこへダルタニャンが塔の上から指示を出し、4人を船着場で合流させる。ダルタニャンも鉄仮面とミレディーが操る大鷲を相手に苦戦するも、逆に大鷲の足を掴み塔から脱出。さらにフィリップたちを追うマンソンの小舟に飛び乗り転覆させる。


ダルタニャンもフィリップたちの小舟に乗り込み、全員揃ってベル・イール島から脱出する。


■Explanation■
要塞潜入話の後編。今回はダルタニャンとポルトスが中心となって、囚われたアトスとアラミス、そしてフィリップ王子を救出するという話。本来なら緊張感溢れるシチュエーションなんだけど、ダルタニャンとポルトスの「コミカル組」がメインのせいか、物語自体にもコミカルなシーンが目立っている。


加えて鉄仮面の手下が、前回の見張り役に続いてどこか抜けている。荷物運びを手伝ってもらい、屈託無くに「ありがとう」とお礼を言う者がいたり。つまみ食いをしているポルトスを怒鳴りつける、恰幅が良くて妙にキャラ立ちしている料理人がいたり。フィリップの「視察」を真に受けて外へ出してしまう門番がいたり。ロシュフォールや護衛隊に代わる「敵役兼コメディリリーフ役」を担っている。


ところで、ベル・イール編で断片的に描かれる鉄仮面一味の裏側だけど、実は「ヒト・モノ・カネ」を揃えた大がかりな集団と思われる。「カネ」は盗賊稼業で集めるにしても(この回も塔の中に隠してある金銀財宝が描かれている)、ベル・イールに要塞を築くのに必要な人夫(奴隷)や資材・食糧という「ヒト・モノ」も調達できている。付け加えるならば、「国王に双子の兄弟がいる」という、国王本人や大臣のリシュリューですら知らなかった国家機密まで入手する情報網も持っている。この辺の描写を観ると、単なる「人数の多い盗賊団」では無いことが伺える。
鉄仮面の正体について本編では詳しく描かれなかったけど、どこかの国や大物貴族の息が掛かった人物なのかもしれない。


後半は見所満載のアクションが中心。ダルタニャンがフィリップ王子の部屋に残って食事を失敬しているという緊張感の無いシーンから、一転して鉄仮面が踏み込んでくるスリリングな展開。
そこから剣を交えつつ塔の屋上に登りつつ、大声で指示を出してポルトス・フィリップ王子とアトス・アラミスを船着場で合流させる。さらにはミレディーの操る大鷲の攻撃に、逆に大鷲の足を取って塔を颯爽と飛び降りて、最後は「行き掛けの駄賃」とばかりにマンソンの乗る船を転覆させる活躍ぶり。


ダルタニャンが主人公らしい活躍をして、三銃士と力を合わせて窮地を脱するシーンが描かれて、フィリップ王子も救出できて万事解決!……と思いきや、ベル・イール島からの帰途で衝撃的な展開が待っているんだけど、それはまた次回。


■Dialogue/Monologue■

コンスタンス「酷い臭い、酔っ払ってしまいそう」
ジャン「この香りの良さが分からないなんて、素人だなぁ」
コンスタンス「生意気なこと言うんじゃないの!」

ワインの入っていた樽に隠れての、2人の会話。
コンスタンスはお堅い雰囲気に違わず、お酒はダメな模様。一方のジャンは、子供なのに酒の臭いもへっちゃら。どこかでこっそり飲んだことがあったりして。

水夫A「どこへ消えちまったんだろう、あの娘」
水夫B「惜しいことしたなぁ」

コンスタンスにを人買いに売り損ねて残念がる水夫たち。
コイツらのせいでコンスタンスとジャンは酷い目に逢ったけど、視聴者的には2人がベル・イール島での最終決戦に参戦する切っ掛けとなったので、感謝すべきなのかも?

リシュリュー「ダルタニャンと三銃士のことです。きっと上手くやっています」

本話が最後の出番となるリシュリューのセリフ。
初登場から劇中の大半において宿敵として描かれていたリシュリューの最後のセリフが、ダルタニャンと三銃士への信頼を示した言葉というのも感慨深い。

ポルトス「少し塩気が足りないかな」
料理人「こら!そこで何をしている!」
ポルトス「い、いや、ちょっと味見をしていたのだ。もっと塩を入れた方が美味しくなると思うが、どうかな」

手下に扮して炊事場に入り込むや、さも当たり前のように料理を味見するポルトス。
料理係に見つかり怒鳴られても、怯むことなく味への拘りを論じるとは何たる度胸(食い意地ともいう)。

ミレディー「貴方の双子の兄弟は、これまで何をして下さいました?自分の身を守るため、貴方を世間から遠ざけ、密かに閉じ込めたではありませんか!」

塔に監禁したフィリップ王子を前に、この期に及んでも蜂起を迫るミレディーと鉄仮面。
ミレディーは国王ルイ(=王家)の非道を語るが、自分たちがそれとは比べ物にならない非道の数々をフィリップにしてきたことを完全に棚に上げている。

マンソン「フィリップ王子!」
ダルタニャン「(フィリップの声色で)誰だ」
マンソン「マンソンだ!ちょっと確かめたいことがある!」
ダルタニャン「(フィリップの声色で)今は食事中だ、後にしてくれ」
マンソン「ここを開けてくれ!」
ダルタニャン「(フィリップの声色で)無礼者!食事中だと言っただろう!」

フィリップ王子と入れ替わる形で塔に残ったダルタニャン。脱出する手立てを考えているのかと思いきや、呑気にフィリップ用の食事を食べていた。部屋に残ったのは食事のためだったのかと思いたくなる。
しかも、ドアの向こうにマンソンが迫っていたというのに、フィリップの声色で誤魔化そうとする図太さ。

ミレディー「フィリップ王子は?」
ダルタニャン「さぁ?ここの食事は中々上等だなぁ!」

鉄仮面にドアを破られミレディーに迫られる絶体絶命の状態でも、臆せず食事の感想を言い返すのは粋で痛快だ。

ポルトス「しまった、気付かれたらしい。こうなったら腕づくで突破してやる!」
フィリップ「待て、それは最後の手段だ。いいから黙ってついてこい」


手下「誰だ!」
フィリップ「フランス国王フィリップだ」
手下「こ、これはどうも!」
フィリップ「怪しい者を見なかったか?」
手下「い、いえ!」
フィリップ「よし、では海辺の視察に参る」
手下「あ、はい!橋を下ろせ!」
フィリップ「(手下に扮したポルトスに)ついて参れ」

跳ね橋を上げられ脱出不可能と思いきや、フィリップ王子の機転で脱出、否、堂々と「退城」を果たす。
この機転に胆力、そして威厳。これはルイより国王に相応しいかも。

マンソン「誰も出て行った奴はいないな!」
手下「はい、フィリップ王子の他には」
マンソン「何だと!」

一番外に出してはいけない人物を、ピンポイントで通してしまった手下のマヌケぶりに爆笑。
マンソンも、シャトレの牢獄では懺悔聴聞僧に扮したダルタニャンを通してしまったため国王処刑に失敗したというのに(46話)。出入りを厳重にしておかないマンソンもかなりマヌケだ。


■Next Episode ~次回予告~■

コンスタンス「ジャン、見て!私たち、海の上に来ちゃったわ!」
ジャン「この象、あの島に行くみたいだよ」
ダルタニャン「コンスタンス!ジャン!どうしたんだよ、こんな所で!」
コンスタンス・ジャン「ダルタニャン!」
コンスタンス「じゃあ、あの島は!」
ジャン「ひょっとして!」
ダルタニャン「そう、鉄仮面の要塞だ!」
コンスタンス・ジャン「えぇーっ!」
ダルタニャン「ミレディーたちに見つかる前に逃げるんだ!」
コンスタンス「次回『アニメ三銃士』」
ジャン「《象 海を渡る》」
ダルタニャン「みんな、また会おう!」

ダルタニャンとジャンとコンスタンスによる予告。作品的には主人公・その相棒・ヒロインというメインの3人だけど、揃って予告に登場するのは意外にも初めて。この辺からも作品がクライマックスに突入していると感じられる。
そんな3人が鉄仮面の要塞近くの海上でまさかの再会を果たし、さらに意外な展開に巻き込まれてゆく。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
フランス・ロワール地方の7回目。トゥーレーヌ地方の並木道やぶどう畑、そして「バルザックの城」ことサッシェ城を紹介。
文豪バルザックはこのサッシェ城で数々の名作を書き、その一つ『谷間の百合』にはトゥーレーヌ地方の美しさが生き生きと描かれていると解説。そして城館の3階にはバルザックの寝室が今も保存されているという。
「古い城館やぶどう畑に囲まれて、ロワールは昔の姿をとどめている」という説明で締めくくられる。
次回以降はイラスト特集と総集編(シリーズ前半)のため、『三銃士紀行』は本編よりも一足早く、今回で幕を閉じる。


(記:2014年8月31日/追記:2020年05月04日)