アニメ三銃士

46話:鉄仮面を救出せよ

(放送日:1989年1月6日 / 演出:早川啓二 / 作画監督山本哲也

■Story■
鉄仮面処刑の日が訪れた。シャトレ獄中のアトスとロシュフォールは脱獄の準備を整え、ダルタニャンとポルトスもコピーを伝令にして国王救出へ向けた連絡を取る。
さらにダルタニャンたちの前にアラミスが現れる。ダルタニャンは共に戦おうとアラミスを誘うが、アラミスは用があると拒み、シャトレでの再開を約束して去って行く。


一方、鉄仮面のアジトであるマンソンの別荘に、何者かが忍び込んでいた。鉄仮面は用心のため、国王が被る仮面の鍵を確認しに行く。するとそこにアラミスが現れた。
アラミスは仮面の鍵を手に入れるため、忍び込んだことが気付かれるように仕組み、鉄仮面が確認するのを追っていたのだ。
アラミスは鉄仮面と剣を交え、鍵を奪いアジトから脱出した。


その頃、ダルタニャン・ポルトス・ジャンはアトスの発案で、処刑前の囚人に面会できる懺悔聴聞僧に成り済まそうとする。シャトレに向かう司祭フェルナンドに迎えを装い接触。小船で案内するフリをしてセーヌ川に落とし、濡れた僧衣を乾かすためと騙して奪うと、司祭に成り済ましてシャトレに乗り込んだ。


ダルタニャンは獄中の鉄仮面(ルイ)に接触し、脱出への打ち合わせをする。一方、ジャンはアンヌ王妃とコンスタンスの牢を見つけるが、ベーズモーに見つかってしまう。さらにアトスとロシュフォールの牢にジャンが入れられたため、2人はリシュリューの牢へと移されてしまう。


処刑の時間がやってきた。ルイが中庭の処刑台に引き立てられ、斧で首を切られようとしていた。傍らで司祭に扮していたダルタニャンとポルトスは、アトスとロシュフォールが現れないことに焦っていた。2人は牢が変わったため、脱獄できずにいたのだ。
そして、首切り役人が斧を振り下ろそうとした時、ポルトスが体当たりをして処刑を力づくで食い止める。さらにダルタニャンとポルトスは、処刑されようとしている鉄仮面が国王ルイ13世であることを大声で訴える。しかし、ミレディーとマンソンの命令により護衛隊士が襲い掛かり、ルイを守って乱闘になる。


一方、アトスは獄中で虫眼鏡を使って火事を起こし、消火の混乱に乗じて脱獄。共に脱獄したロシュフォールリシュリューも一緒に乱闘に加わる。ジャンもまた、アトスたちの掘った穴から脱獄。ミレディーの銃口からダルタニャンたちを救う。
そんな大混乱の中、アラミスが駆けつけた。鉄仮面の元へ行き、手に入れた鍵で仮面を外すと、そこに現れたのは国王ルイ13世の顔だった。ルイは改めて自分が国王である事を宣言すると、護衛隊は皆剣を収め跪いた。


国王処刑に失敗したミレディーとマンソンはセーヌ川から小船に乗って逃亡。
ダルタニャンたちはアンヌ王妃とコンスタンスを牢から救出し、ルイ13世を先頭にルーブル宮への帰途に着く。



■Explanation■
鉄仮面編もいよいよクライマックス。散り散りになっていたメインキャラたちが力を合わせ、陰謀に立ち向かう名エピソードだ。


運命の朝を迎え、コピーを介して作戦の打ち合わせをするダルタニャンたち。そこへ服従の芝居を終えたアラミスがやって来る。いきなり「反逆者どもめ!」と声を掛けて驚かせるも、それは冗談。
すぐに笑顔を見せて打ち解けるのは、アラミスとダルタニャンたちの和解を改めて描いて、何とも心憎い。


前話で男装の理由が描かれて、最大の見せ場が終わった感のあるアラミスだけど、今回も活躍を見せる。
単身で鉄仮面のアジト(マンソンの別荘)に乗り込み、鉄仮面の心理を突いて見事にお目当てのモノ・・・国王に被せられている仮面の鍵を奪い取る。
それにしても、アラミスはミステリアスというか秘密主義というか、単独行動が性にあっているようだ。多分コレは正体(実は女性)をダルタニャンたちに明かしていたとしても、変わらないんだろうな。


一方のダルタニャンとポルトスは聴聞僧のフェルナンドに成り済ましてシャトレ牢獄に潜入する。フェルナンドも従者も純朴な善人なだけに、その2人を騙して僧衣を奪う一連のシーンは何ともコミカル。クライマックス前の、ちょっとした息抜きだ。


ダルタニャンたちが牢獄に侵入してからは、怒涛の展開の連続。ダルタニャンは首尾よく牢獄の鉄仮面(ルイ)を面会して救出の打ち合わせをするも、頼みのアトスとロシュフォールは牢獄を移されてしまう。
しかし、移された先がリシュリューの牢だったため、リシュリューも2人によって鉄仮面の陰謀を知ることになるとは、何が幸いするか分からない。
何より、処刑シーンの緊張感が凄い。鳴り渡るドラムロールの音、振り上げられる首切り役人の斧、火事を起こして脱獄しようと必死なアトスとロシュフォール、2人が現れない事に焦るダルタニャンとポルトス。
そして首切り役人の斧が振り下ろされようとした時、緊張を打ち破るようにダルタニャンとポルトスが力尽くで処刑を食い止める。ここまでのタメと盛り上がりは鳥肌モノだ。


ここからは、まさにオールキャストが入り乱れてのアクションシーン。
処刑台の上で護衛隊を迎え撃つダルタニャンとポルトス。そしてルイまでも護衛隊士から奪った剣を振るう。そこへアトスとロシュフォール、更にはリシュリューまでも駆け付けて、護衛隊士と大立ち回りを演じる。
特にリシュリューは剣ではなく分厚い本を武器に、ロシュフォールと互いに背を預け合いながら戦う。その姿は格好良くもあり、でもどこかコミカルだ。


最後を締め括るのは、やっぱりアラミス。台車に乗って護衛隊士を蹴散らし、荘厳な儀式の如くルイに被せられた仮面を外す。そして久方ぶりに素顔を見せたルイは、国王の威厳を見せて護衛隊を一括して、混乱を瞬く間に治める。
水戸黄門』の印籠や『遠山の金さん』の桜吹雪に通じる、時代物・史劇物の「黄金パターン」だけに、キマった時の格好良さは格別だ。


ラストシーンは救出した王妃とコンスタンスと共に、一同がルーブル宮殿へと進軍する。馬車の中では王妃と相乗りになり、気まずそうなリシュリューはコミカルだ(王妃の方は「大人の余裕」で全く気にしていないだけに)。
ダルタニャンと三銃士はもちろん、「頼り無い王様」と描かれがちだったルイ、敵役だったリシュリューロシュフォールまでもが、力を合わせて陰謀に立ち向かい、そして打ち破った。
まさに「ひとりはみんなのために」が結晶となった、『アニメ三銃士』のベストエピソードのひとつだ。


■Dialogue/Monologue■

アラミス「こら!そこを動くな!シャトレの牢を破ろうとする悪人ども!観念しろ!」
ジャン「なーんだ、アラミスじゃないか」
ポルトス「久しぶりだなぁ」
ダルタニャン「君が来てくれたら百人力だ。一緒に行ってくれるな、アラミス」

冗談を言いながら現れたアラミスと、それを明るく迎えるダルタニャンたち。
一時は追う者と追われる者に分かれたダルタニャンたちの和解を象徴する会話。

アラミス「残念だが俺はもう一つ、やらなければならない事があるんだ」
アラミス「必ず戻ってくる。じゃあ、10時に会おう、シャトレの牢でな!」

まだ何かを企んでいるのか、ダルタニャンの共闘を断るアラミス。
しかし、再会を誓って去って行くその胸には、思い出のペンダントが証の如く輝いていた。

アラミス「忍び込んだことをワザと気付かれるようにしたのは、その鍵の在り処を知るためだ。人間は賊に入られたと聞けば、一番大事な物が盗まれていないか確かめるものだからな」

国王に被せられているマスクの鍵を奪うため、侵入した事が鉄仮面たちに分かるようにして、鍵の在り処を見つけ出す。大胆な作戦だけに、成功した時の快感たるや、鉄仮面相手に講釈を語りたくもなる程。

ダルタニャン「ごめんなさい司祭様(十字を切る)・・・・・・さぁ、行こう!」

牢獄に潜入するためとはいえ、懺悔聴聞僧のフェルナンド(と従者)をセーヌ川に落として僧衣を奪い、川に流すという非道を行ったダルタニャンたち。
さすがに良心が咎めたのか謝りながらも、心は牢獄への潜入へと向いていた。
国王を救うためとはいえ、騙されたフェルナンドはセーヌに落とされ僧衣を奪われた挙句、小船で流されて散々な目に。後でダルタニャンがキッチリと謝った・・・・・・ハズだと思いたい。

アトス「ベーズモー殿、この子と一緒でも我々は一向に構わんのだが」
ベーズモー「いやいや、そうはいきません。ここの客人には身分に相応しい扱いをするのが私の務めだ」

苦労して牢獄内に抜け穴を掘ったアトスとロシュフォールだったが、ジャンが捕まったことで玉突き式に牢を替えられることに。
皮肉な形だけど、これもベーズモーの生真面目さ故・・・・・・と思いきや。

マンソン「怪しい者は来なかっただろうな」
護衛隊士「はい、聴聞僧のフェルナンド様以外は、誰一人として中には入っておりません」

視聴者的には「そのフェルナンド様(の偽者)が一番怪しいんだよ!」とツッコミを入れたくなるシーン。
なお、後のエピソードにも似たようなシチュエーションがあるので覚えておこう。

アトス「国王陛下を処刑したら、地下の牢屋が空くということでしょう」
リシュリュー「陛下を処刑するだと!」
ロシュフォール「閣下!ここに囚われている鉄仮面こそ、ルイ13世国王陛下なのです!」
リシュリュー「何っ!」

国王すり替え&処刑計画を、いきなり聞かされたリシュリューの反応。
図らずもアトスやロシュフォールが牢に入ってきたことで、リシュリューまでも鉄仮面の陰謀に立ち向かうことになる。

アンヌ王妃「あの歩き方は陛下そっくりだわ」

中庭の処刑台へ連行される鉄仮面を見た王妃は、一目でその正体が夫であるルイだと見抜く。
歩き方だけで、それも遠目から見ただけで分かるとは、これも夫婦の絆が成せるものか。

ダルタニャン「処刑は中止だ!」
ポルトス「ここにおられるのはルイ13世国王陛下だぞ!無礼をすると許さぬぞ!」
ルイ13世「静まれ!余はフランス国王ルイだ!下がりおろう!」

処刑を力づくで止めたダルタニャンとポルトスが、僧衣を脱ぎ捨てて高らかに叫ぶ。そしてルイも処刑に怯えていた直前の姿から一変して、国王として威厳に満ちた名乗り上げる。

ベーズモー「ああっ、リシュリュー様の牢が火事だ!牢番、すぐに火を消せ!あんな良い部屋を燃やしてなるものか!」

リシュリューの牢獄で起きた火事を消すように命じるベーズモーのセリフ。
ベーズモーにとっては、目前で起きているダルタニャンたちと護衛隊の乱闘よりも、ましてや「身分に相応しい扱いをしている客人」よりも、「良い部屋」の方が大事な事が窺える。

リシュリュー「フン!無礼者め!ワシも怒ったぞ!」

襲い掛かる護衛隊士を分厚い本で撃退してのセリフ。
その怒りは、国王すり替えという大陰謀への怒りか。それとも、かつての主である自分を裏切った上に剣を向けた護衛隊へ向けられたものなのか。
・・・・・・間違いなく後者だろうな。

アラミス「陛下!」
鉄仮面(ルイ)「よく来てくれた、アラミス」
アラミス「鍵を持って参りました。失礼します・・・・・・」

治まる気配を見せない混乱の最中、「鍵」を持って馳せ参じたアラミス。その手には国王に被せられた仮面を開けるための、そして混乱を納めるための、まさに鍵が握られていた。
恭しく礼を尽くして仮面を開けると・・・・・・。

アラミス「みんな、よく見るがいい!この方は鉄仮面ではない!ルイ13世国王陛下だぞ!」
ルイ13世「皆の者、静まれ静まれ!逆らう者は反逆の罪に問われるぞ!」

鉄仮面の下から現れたのは、紛れも無い国王の顔たった。
否、顔だけではなく、その名乗りに本物の国王にしか備わっていない「威厳」があったからこそ、先程まで剣を向けていた護衛隊士すら平伏したのだろう。

ルイ13世「さぁ諸君!悪人どもに奪われたルーブルを取り戻すのだ!続け!」

処刑の危機から一転、自ら先頭に立ち、鉄仮面一味の討伐を高らかに宣言する国王ルイのセリフ。
この回、最も活躍して、最も成長を見せたのは、他ならぬルイなのかもしれない。


■Next Episode ~次回予告~■

マンソン「もう一息というところだったのに!」
ミレディー「フランスを狙っている国は幾らでもあります。フィリップを王に推し立て、そんな連中と手を組めば、巻き返しは充分に図れるわ」
マンソン「うむ。ひとまずパリを離れ、態勢を整えよう!」
ミレディー「先に行ってて頂戴。私は少しやり残した事があるの」
マンソン「次回『アニメ三銃士』《炎の中のジャン》」
ミレディー「ダルタニャン!お返しにジャンの命を貰います!」

本編で国王処刑に失敗したばかりのマンソンとミレディーによる予告。
「巻き返しは図れる」と冷静に語りつつも、独りパリに残ってダルタニャンへの復讐を企てる辺り、胸中には激しい怒りと屈辱が渦巻いていることが感じられる。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
フランス・ロワール地方の4回目。シュノンソー城を紹介。
シュノンソー城はロワール川の支流・シェール川の上に建てられており、1547年に国王アンリ2世が恋人であるディアーヌ・ド・ポワチェに与えたという。そしてディアーヌに城の改修費をねだられたアンリ2世は、国中の鐘に20リーブルもの税金をかけたと解説されている。


(記:2014年6月8日/追記:2020年05月04日)