アニメ三銃士

47話:炎の中のジャン

(放送日:1989年1月13日 / 演出:アミノテツロー / 作画監督山下明彦

■Story■
ルーブル宮殿に逃げ戻ったミレディーとマンソンは、フィリップと共に逃亡を図る。しかし、フィリップは逃亡を拒み、投降しようと決意していた。
そこに衛兵と戦闘中の鉄仮面が出現。驚くフィリップに対し、ミレディーは最初から鉄仮面と仲間だったこと。騙して国王すり替えの陰謀に担ぎ出したことを認める。そして、フィリップを強引に連れ出して、ルーブル宮殿から脱出する。


入れ違いでルーブル宮殿に帰還した国王ルイは、フィリップと鉄仮面一味の追討命令を出す。しかし、アラミスはフィリップが騙されていたこと、国王を鉄仮面として処刑することを頑なに拒んでいたことを語る。さらにアンヌ王妃の説得もあり、国王はフィリップを助けるよう翻意する。
そこへトレビル隊長も駆け付けて銃士隊長に復帰。さらにはリシュリューも今回の件で改心したと謝罪して、銃士隊と護衛隊は協力して鉄仮面追討を行うことになった。


セーヌ川から船と潜水艦で脱出を図る鉄仮面一味は、護衛隊による検問に差し掛かる。ミレディーは老婆に扮し、船にはペスト患者が乗っていると偽り検問を誤魔化す。さらにパリを脱出すると鉄仮面たちと別行動をとり、単身パリへと戻っていた。


ダルタニャンと三銃士は鉄仮面のアジトだったマンソンの別荘を探っていた。そこには国王すり替えにも使った隠し部屋の仕掛けや、鉄仮面がボナシューの元から盗んだ宝石が見つかった。さらには修道院を脱出したボナシューも潜んでおり、ダルタニャンたちと再会を果たす。


ジャンが家へ戻ると、そこへコレットが現れる。コレットはジャンの母親からポン・ヌフで待っていると言伝を預かったという。それを聞いたジャンは大急ぎでポン・ヌフへと向かう。
ジャンがポン・ヌフで母親を探していると、突然馬車に乗った老婆に攫われてしまう。その老婆はミレディーの変装だった。
ジャンの後を追っていたコレットから事情を聞いたダルタニャンがポン・ヌフへ行くと、そこにはミレディーがが残した置き手紙があった。手紙には国王処刑の邪魔をした仕返しとして、ジャンの命をモンマルトルの丘で貰うと書かれていた。
気を失っていたジャンが目を覚ますと、モンマルトルの丘に建つ風車の羽根に縛られていた。ミレディーは風車小屋に火を放ち、ジャンを焼き殺そうとする。そこへダルタニャンが駆け付け、間一髪でジャンを救う。しかし、ダルタニャンは燃え落ちる風車小屋に巻き込まれ怪我を負ってしまう。




■Explanation■
今回は鉄仮面編の後始末的なエピソード。フィリップが鉄仮面一味に騙されていたと知らされたり、ダルタニャンたちが国王すり替えの仕掛けを知ったり、盗まれた宝石を見つけてボナシューが元の家に戻ったり。
いずれも視聴者目線では既に描かれていたり、予定調和的な展開だったので、それだと見せ場に欠けるのからジャンが攫われるエピソードを付け足したみたいだけど。正直、取って着けた感じが強いかな。


大きなエピソードが決着して一息着いているところに、ミレディーの魔の手が・・・・・・というのは、先の首飾り編と同じパターン。首飾り編の後はコンスタンスが、そして鉄仮面編の後はジャンが、復讐として狙われる。場所も前回は水車小屋で、今回は風車小屋というのも、繰り返しを意識したのだろうか。


今回の見せ場は銃士隊と護衛隊の和解。ここまでロシュフォールとの共闘や、前話でのリシュリューの奮戦振りと段階を踏んでいただけに、和解のシーンは予定調和的なあっさりした感じだけど。シリーズ最初期から長い間、ステレオタイプな「悪い大臣」として描かれていたリシュリューや、「悪役」として幾度も死闘を繰り広げてきたロシュフォールと護衛隊の事を思い返すと、感慨深いものがある。
もっとも、すぐに「頼もしい仲間」になるハズもなく。セーヌ川の検問ではミレディーの騙る「ペスト」にビビりまくって、あえなく検問を通してしまうんだけど。


一方、忘れていた頃にひょっこり復帰した感じなのがトレビル隊長。鉄仮面編ではダルタニャンをロクに庇えず銃士隊から追い出した上、三銃士と協力するのも叱り付けたり、融通の利かない描写が目立っていた。
国王すり替えの後も、自分から隊長を辞めたせいで王妃やリシュリューのような粛清から逃れたワケだけど。結果的に鉄仮面一味と戦わずに逃げ出して、一味がいなくなったらノコノコ戻って来たような。何とも損な役回りになってしまった。
その分、続くベルイール編では指揮官として格好良い姿を見せるので、イメージ回復はできたかな。


「ジャンの母親」からの言伝をしたコレットは、今回が最後の出番となった。彼女は人買いから救われたことから鉄仮面に感謝と尊敬の念を抱いていたけど。鉄仮面の義賊としての姿が偽りだったことを彼女は、そして同じく鉄仮面から施しを受けた貧しい人々は知っていたのだろうか。もしも知っていたのなら、どんな事を思ったのだろうか。鉄仮面に盗まれた宝石が見つかったことで、ダルタニャンたちは下町を去って元の家に戻るんだけど。その点が曖昧なまま、下町の人々が物語から退場したのは残念だ。
ましてやコレットはジャンのガールフレンド候補だったのに、最終回でジャンがパリから旅立った時も、劇場版でパリに戻ってきた時も全く描かれなかったのは寂しい限り。


ラストシーン、燃え落ちる風車小屋に巻き込まれたダルタニャン。描写的には瀕死の重傷を負ったようで、何とも気になる引きだったけど。次の回では呆れるほど元気になっているのでご安心を。


■Dialogue/Monologue■

フィリップ「私はどうなってもよい。ルイの政治を正すために、お前たちの企みに乗った私の気持ちを分かってもらえれば、それでよいのだ」


フィリップ「血を分けた兄弟と争うのは、もう嫌だ」

逃亡を図るミレディーとマンソンに対して、フィリップは投降を決意していた。国王すり替えに賛同したのもルイの政治を正すのが目的で、最初から成功するとは思っていなかったのかもしれない。
しかし、そんなフィリップの純粋すぎる思いも、直後に跡形も無く打ち砕かれるのだが・・・・・・。

フィリップ「!・・・・・・お前は鉄仮面!」
鉄仮面「それがどうした!」

突如現れた鉄仮面に仰天するフィリップと、それに対する鉄仮面のセリフ。
国王処刑に失敗し、大勢の衛兵に迫られたこの期に及んでは、今まで騙し続けていたフィリップに姿を見られたことなど些細なことだった。

フィリップ「どういうことだ!」
ミレディ「・・・・・・・」
フィリップ「ミレディ、お前は鉄仮面の仲間だったのか!」
ミレディ「仰せの通りです、フィリップ王子」


フィリップ「私を騙していたのか、ミレディ!」
ミレディ「そうしなければ、貴方は王になってくれなかったでしょう!」

今まで唯一の仲間として信じていた者が、実は自分を騙し続けていた。そんな驚きと戸惑いに満ちたフィリップの問い掛けに、一度目は無言で、そして二度目は冷静かつ慇懃に応じるミレディー。
もっとも、フィリップに責められると、逆ギレの如く言い返す辺り、ミレディーにも余裕が無くなっているのが窺える。

リシュリュー「この度の事で、私も充分反省しました。ダルタニャン、君を銃士隊から追放したのは私の誤ちだ。陛下の前で潔くお詫びする」


アトス「リシュリュー閣下、これまでのことはサラリとセーヌの水に流して、共に陛下と我フランスのために尽くしたいと存じます」

これまでダルタニャンにとって、そして銃士隊にとって宿敵だったリシュリューたちだったが、ここで和解を果たすことに。「充分反省した」というリシュリューの率直な言葉は、共通の敵である鉄仮面と戦うための打算的な和解ではない事を示していた。
対して銃士隊はリーダー格のアトスが、ユーモアに満ちた言葉で和解に応じる。

ジュサック「あ、あのー・・・・・・ロシュフォール様・・・・・・」
ロシュフォール「何をグズグスしている、早く持ち場に着け!」

こちらももう一つの和解の模様。
リシュリューの失脚後も忠誠を貫いたロシュフォールと、真っ先に見限った上にマンソンの軍門に下ったジュサック。
恐る恐る話しかけるジュサックに対し、変わる事無く以前と同じように命令するロシュフォール。わだかまりなど無いように見えたけど、本音では・・・・・・。

ジュサック「ペストです!あの船は・・・・・・」
ロシュフォール「何っ!」
(しばし沈黙)
ロシュフォール「ジュサック、確かめてこい」
ジュサック「はぁ!・・・・・・」
(しばし沈黙)
ジュサック「聞こえました?ペストです!」
ロシュフォール「閣下への忠誠を見せてみろ!」

やっぱりロシュフォールは「裏切り者」を許していなかったというシーン。
当時は不治の病として恐れられていたペスト患者が乗っている(というミレディーのウソ)船を、まさしく命懸けで確かめさせられるジュサックの様子が笑える。両者の間に流れる、眺めの沈黙がまた笑いを誘う。
敵であろうが仲間になろうが、やっぱりこの2人は作品最大のコメディリリーフだ。

アラミス「ポルトスを一発で仕留めるとは大した力だな。仕立て屋を辞めて銃士になったらどうだ?」

匿われていた修道院から逃げ出した後、あろう事か鉄仮面のアジトだったマンソンの別荘に潜んでいたボナシュー(本人曰く「灯台下暗し」)。更には謎の侵入者(ダルタニャンたち)を、鉄仮面一味が戻って来たと思い一撃を食らわせる大活躍。間違われて一撃を食らったポルトスは災難だけど。
色々と見せ場(=災難)の多かった鉄仮面編のボナシューに対しては応しいセリフかも。

ミレディー「ダルタニャン、貴方はどこまで私の邪魔をすれば気が済むの?お返しに、貴方が可愛がっているジャンの命を、今夜、モンマルトルの丘で貰います。国王の代わりに」

国王の命と、身元も定かでない貧しい少年の命。傍目には全く釣り合わず、代わりにもなるはずも無いと思われるけど。
それでもダルタニャンにとっては代わりになどできない、掛け替えの無い「仲間」の命だった。

ジャン「母ちゃん・・・・・・ここはどこ?どこなの?」
ジャンの母「静かにおし。」
ジャン「だって・・・・・・」
ジャンの母「もうすぐお前を良い所へ連れて行ってくれるお迎えが来るからね」
ジャン「母ちゃんも一緒だね!」
ジャンの母「いいえ・・・・・・」
ジャン「嫌だ嫌だ!母ちゃんと一緒でゃなきゃ嫌だ!」
ジャンの母「聞き分けの無いこと言わないの。ほら、お迎えが来たわ」

ミレディーに連れ去られ薬で眠らされたジャンが見ていたのは、視聴者的には殆ど忘れていた、しかし本人にとっては片時も忘れていなかったであろう、母親の夢だった。
しかし、優しく呼びかける声は本当の母親ではなくミレディー(平野文さん)の声であり、現れた「お迎え」は死神よりも恐ろしい鉄仮面だった。
そして何より、驚いて目を覚ましたジャンは、絶体絶命の状態に更なる驚愕をすることになる。


■Next Episode ~次回予告~■

アトス「鉄仮面たちの行方が分かったぞ!」
アラミス「何処だ?」
アトス「ベル=イール=アン=メールの島に要塞を築いて、そこに立て籠っているそうだ」
ポルトス「よーし!まず我々三銃士が乗り込んで、フィリップ王子を救い出し!」
アラミス「そして、総攻撃だ!」
ポルトス「あぁ、ダルタニャンは?」
アラミス「それが、火傷の傷が意外に重くて、家でまだ寝ているんだ」
ポルトス「そうか」
アラミス「次回『アニメ三銃士』」
ポルトス「《海上の大要塞》」
アトス「決戦の時は近い!」

久々に三人揃った三銃士による予告。フィリップ救出と打倒鉄仮面に意気込みつつも、本編のラストでジャンを救うため深手を負ったダルタニャンを案じている。
果たしてダルタニャンは無事なのか!鉄仮面との決戦には間に合うのか!…というシリアスな予告になりそうだけど、その辺は次回を観てのお楽しみ。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
フランス・ロワール地方の5回目。前回に続きシュノンソー城の紹介。
シュノンソー城は歴代の主人が女性だったことから「6人の奥方の城」とも呼ばれていると解説。
アンリ2世の死後、王妃のカトリーヌ・ド・メディシスは、王の恋人だったディアーヌからこの城を取りあげて、自身が3代目の城主となった。そしてディアーヌの造った橋の上に、自身の故郷フィレンツェ風の回廊を建てたという。
「この城の優雅な美しさは、増築してきた城主たちが女性であるからかも知れない」と締めくくられている。


(記:2014年7月26日/追記:2020年05月04日)