アニメ三銃士

41話:ミレディーの陰謀

(放送日:1988年10月28日 / 演出:早川啓二 / 作画監督:金子紀男)

■Story■
園遊会から一夜明けた。国王とすり替わったフィリップは、打ち合わせ通りミレディーを侍女として自分の傍に仕えさせる。そこに、銃士隊が鉄仮面を捕らえたという知らせが届き、フィリップは自分の前に引き立てるよう命じる。


トレビル隊長と三銃士によって引き立てられた鉄仮面を前に、フィリップは仮面を外すよう命じる。ポルトスが力づくで仮面を壊そうと一撃を入れると口の錠が壊れ、鉄仮面は「何をする!」の一声を発して気絶してしまう。
その声を聞いたフィリップは、目前の鉄仮面は自らの双子の兄弟にして、本物のフランス国王ルイ13世だと気付き困惑する。


ミレディーの命令により、捕らえた鉄仮面はシャトレの牢獄へ送られることになった。護送する馬車の中で意識を取り戻した鉄仮面は必死に自分が国王だと訴えるが、三銃士は全く聞き入れようとせず、そのまま投獄されてしまう。


やがてアンヌ王妃が国王の元を訪れるが、ミレディーによって追い返されてしまう。そしてすり替えに気づかれないためとミレディーに指示されるまま、リシュリューを呼び出して王妃をポールロワイヤルの修道院へ幽閉するよう命じる。
国王からの命令書を持ったロシュフォールによって王妃とコンスタンスは馬車に乗せられ、修道院へ護送されてしまう。突然の国王の変心に、王妃は「まるで人が変わってしまったようだ」と嘆く。


鉄仮面の護送を終えた三銃士はトレビルに、鉄仮面を捕らえたのはダルタニャンであることを話し、褒美としてダルタニャンを銃士隊に復帰させてくれるよう願い出る。トレビルもそれに同意し、国王にダルタニャンの復帰を申し出る。
しかし、ダルタニャンの事を知らないフィリップは、トレビルの申し出を理解できずに戸惑ってしまう。ミレディーの取り成しでその場は収まるが、今後もトレビルがダルタニャンの件を持ち出すことを恐れた鉄仮面は、ダルタニャンの抹殺を計画する。


一方、ダルタニャンとジャンは、捕らえた鉄仮面について三銃士に尋ねるべく、園遊会場へ向かう。その道中で王妃とコンスタンスを護送する馬車に遭遇し、国王が王妃の幽閉命令を出したことを知る。また、三銃士からも捕らえた鉄仮面の不可解な様子を聞かされる。そして、鉄仮面が余りにも簡単に捕らえられたことを怪しみ、鉄仮面が身代わりを仕立てて捕まえさせたのではと推測する。


国王一行がルーブルに戻った後、ダルタニャンとジャンは園遊会場の庭園を調べていた。そして鉄仮面を捕らえた辺りを調べていると、突然現れた鉄仮面の手下たちに襲われる。一度はジャンを人質に取られ窮地に陥るも、どうにか切り抜けて会場から脱出。本物の鉄仮面はまだ何処かに潜んでいると確信する。


■Explanation■
国王すり替え計画が実行され、偽国王ことフィリップと、偽鉄仮面にして本物の国王であるルイ13世を中心に話しは進む。ストーリー紹介では文脈上「国王」「鉄仮面」と書いているけど、本物と偽者が混在しているので、ややこしい事この上ない(笑)。


国王となったフィリップは、早速捕らえた鉄仮面を自分の前に引き立てさせ、さらに仮面を外させようとする。これは鉄仮面の中身が本物の国王だと知らないからこそできる、危険過ぎる命令だ。ちなみにパイロット版『鉄仮面を追え』では、鉄仮面が暴れたことが切っ掛けで仮面全体が壊れてすり替えがバレるという展開。
しかし、幸か不幸か壊れたのは口の錠だけ。それも一声発しただけで気絶してしまう。横で見ていたミレディーは平静を装っていたみたいだけど、内心焦っただろうな。


かくして鉄仮面はシャトレの牢獄に送られる。ここは8話でアラミスも収監されてから久々に登場し、新キャラとして看守長ベーズモーも登場。当面はメインキャラが続々と集結するメインステージになる。


一方、鉄仮面一味が「最も国王に近い人物」として排除を謀ったのがアンヌ王妃。ここでは「以前からのリシュリューの進言を受けて」という形で、怪しまれないよう幽閉する。
リシュリューは鉄仮面逮捕の手柄を銃士隊に奪われたのも忘れて、悲願だった政敵(王妃)の追放を喜ぶ。しかし、そのリシュリューにも魔の手が迫っていたのだが。


そしてダルタニャン。鉄仮面逮捕で安心する事無く、今度は拉致されたボナシューを救出するため行動開始。と思ったら、王妃とコンスタンスは幽閉され、捕らえた鉄仮面は「私は国王だ」と不可解な事を言う。そして何より、驚くほど簡単に捕まえられたのは何故だろう。
そんな疑問を解決するように、鉄仮面の手下が出現。ダルタニャンだけでなく、ジャンも手下を投げ転ばせるなど大活躍。ここ数話は鉄仮面一味に出し抜かれたり図らずも利用されたり良いところ無しだったけど、ようやく主人公らしい活躍を見せる。否、ここからがダルタニャンの本領発揮になる。


■Dialogue/Monologue■

フィリップ「あれは鉄仮面ではない。私の双子の兄弟だ」
ミレディー「陛下の味わった苦しみを、そのまま味わわせてやろうではございませんか」
フィリップ「それで良いのだろうか」
ミレディー「フランスの国王は一人で充分でございます」

一面識も無いのに、一声聞いただけで目前の鉄仮面が、双子の兄弟であるルイであることに気付いてしまうフィリップ。これも「双子ならではの絆」だとしたら皮肉な物だ。
対してミレディーは、ルイとフィリップも相並ぶ事を許されない「フランス国王」であると説く。

フィリップ「すまんが、少し疲れてしまった。昨日までの生活と、余りにも違いすぎて」
ミレディー「陛下、既に賽(さい)は投げられました。私たちにとっては、失敗は死を意味するのです。どうか、お気を強くお持ち下さい」

国王にすり替わった早々、偽鉄仮面ことルイの件で困惑するフィリップ。
そんなフィリップを激するミレディーの言葉。幾ら自分が傍らに居たとしても、この陰謀はフィリップ無くして成立しないのだから。

リシュリュー「私も陛下の決断をお待ち申し上げておりました。厳しくお取調べになれば、王妃様が陛下に対して陰謀を企んだ証拠は必ず出て参ります」
リシュリュー「鉄仮面は捕まる、王妃は追放できる、こんなに何もかも上手く行くとは思わなかったぞミレディー」

共にリシュリューの言葉。上は国王(フィリップ)から王妃の幽閉を命じられた時の言葉。下はミレディーへの労いの言葉。
ついさっきまでは鉄仮面逮捕の手柄を銃士隊に取られ悔しがったが、政敵である王妃を追放できたことに比べたら、逮捕できただけでも充分だったのかもしれない。

ミレディー「鉄仮面が、余が国王だと喋っても誰も信じません。陛下はここにいるのですから」

隠し部屋にて鉄仮面とマンソンに状況を報告するミレディー。ルイの仮面の口が壊れた事に慌てるマンソンだったが、ミレディーは慌てる気配すらない。
それだけ「ここにいる陛下」ことフィリップを操ることに自信を持っていたのだろう。

鉄仮面(ルイ)「この様な悪い悪戯をするとために成らぬぞ!」
ポルトス「何を言うか!」
鉄仮面(ルイ)「私はフランス国王のルイだ!」
アラミス「分かりました国王陛下、どうぞお入り下さいませ!」
鉄仮面(ルイ)「えぇい分からぬのか!余がルイだ!今、王座に就いているのは偽者…(ドアが閉められる)」
ポルトス「往生際の悪い奴だ」
アラミス「ポルトス、お前の馬鹿力でおかしくなったのかもしれんぞ」

偽鉄仮面ことルイを牢獄に収容する時の会話。図らずも上記のミレディーの言葉通りとなっている。
国王すり替えの事実を知らない三銃士にしたら、捕らえた鉄仮面の正体が国王だなんて想像もできないので、信じようとしないのも止む無しか。例え、自分が国王だと必死に訴える声が国王と全く同じだとしても。

アンヌ王妃「陛下はミレディーのような女に唆(そそのか)されたくらいで、この様なことをなさる方ではございません。私は陛下を信じています」
コンスタンス「それならどうして…」
アンヌ王妃「分かりません、まるで陛下は、お人が違ってしまったみたい」

リシュリューの使いであるロシュフォールから幽閉命令を受け、弁明しようにも国王に会う事も許されない。そんなアンヌ王妃の困惑が現れたセリフ。
かつてはリシュリューの言葉にも動じなかった国王が、一晩にして自分を追放するよう命じる。その驚きは「人が変わった」という、図らずも核心を突いた言葉に現れている。

トレビル「ダルタニャンを銃士に戻してやりとう存じます」
国王(フィリップ)「ダルタニャン…?」
トレビル「陛下はダルタニャンを御存じ無いので?ご自分で追放なさっておきながら」
ミレディー「陛下は王妃様に裏切られたショックで、つまらない事はお忘れになったのです!」

突然ダルタニャンの名前を出されて、フィリップだけでなくミレディーも困惑していた。
この時はフィリップがミレディーに耳打ちされるまま却下して誤魔化したけど、またもダルタニャンの存在が陰謀を揺るがすイレギュラーとして現れてくる。

鉄仮面「だったらダルタニャンを殺してしまえ!いくらトレビルでも、死んでしまった者を銃士にする訳にはいくまい」

鉄仮面にとってのダルタニャンは宿敵として幾度も剣を交えただけでなく、自分の偽者を逮捕した「殊勲者」となった。国王すり替えが成った今となっても放置しておけない、王妃やリシュリューと同じく抹殺すべき脅威となっていた。
また、この鉄仮面のセリフに、ミレディーは驚きの表情を見せる。


■Next Episode ~次回予告~■

アトス「アンヌ王妃の逮捕に続き、今度はあのリシュリューが、シャトレの牢獄に入れられてしまった」
ポルトス「リシュリューはいいとしても、どうしてトレビル隊長まで銃士隊を辞めなきゃいけないんだ!」
アトス「その上、あろう事かアラミスが我々を裏切り、トレビル隊長の後釜として銃士隊長になった!」
ポルトス「次回『アニメ三銃士』《アラミスの裏切り》」
アトス「アラミス、友達の誓いを忘れてしまったのか!」

お馴染み三銃士…ではなく、アトスとポルトスによる予告。その理由がアラミスが「裏切り」で抜けてしまったためというのが、既に本編の波乱を予感させている。
あと、ポルトスがリシュリューの投獄を「いいとしても~」で済ませているのは、ちょっとヒドい気がする。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
ベルサイユ宮殿の映像を背景に、ベルサイユの主人たちを紹介。
狩りの地だったベルサイユに豪華な大宮殿を作ったルイ14世。彼について「信じられぬほどの大食であったというが、朝食はブイヨン(スープ)とワインだけだったから空腹なのも無理はない」と紹介されている。また「1本のナイフと指だけで食事をとり、フォークは決して使わなかった」という豆知識も。
またマリーアントワネットもベルサイユに自分の宮苑を作ったが「この宮苑の高額な造園費が、革命時の王妃処刑の理由の一つとなる」と解説されている。
映像ではルイ14世の騎馬像や肖像画、宮廷馬術の再現、そして再現された当時の料理や食事の様子も紹介。


(記:2013年6月4日/追記:2020年04月29日)