アニメ三銃士

40話:すりかえられた国王

(放送日:1988年10月21日 / 演出:湯山邦彦 / 作画監督:辻初樹)

■Story■
ついに園遊会の日がやって来た。会場となるリシュリューの別荘ではロシュフォールたち護衛隊が警備する傍らで、アトスとアラミス、そして潜り込んでいたダルタニャンが鉄仮面の出現に備えていた。またポルトスは鉄仮面一味のアジトであるマンソンの別荘に張り込んでいた。


その頃、鉄仮面一味は仕上げの一芝居を打っていた。鉄仮面がミレディーを捕らえた振りをしてフィリップと同じ隠し部屋に監禁し、さらに屋敷から飛び出し、張り込んでいたポルトスを屋敷から引き離す。そしてミレディーも協力者の男に助けられた振りをして、隠し部屋からフィリップと共に脱出。フィリップが本物の鉄仮面の振りをしてミレディーと共に屋敷から抜け出し、馬車で園遊会場へ向かう。


園遊会場に着いたミレディーは、リシュリューの紹介で国王ルイ13世に謁見する。ルイは一目でミレディーを気に入るが、アンヌ王妃はミレディーがバッキンガム公爵を殺した張本人であることから失神しかけて謁見場を去ってしまう。


やがて園遊会が開園し、屋敷内では舞踏会が、庭園では豪勢な料理に花火と華やかな宴が繰り広げられていた。その裏では屋敷内の隠し部屋にミレディー・マンソン・フィリップが集まり、国王すり替えに向けた段取りを打ち合わせていた。


園遊会が終わり、ルイが寝室にて眠りに就いた。それを待っていたかのように、庭園に鉄仮面が出現し、護衛隊士を次々と倒してゆく。
時を同じくしてルイの寝室の仕掛けも作動し、ルイはベッドごと地下室に降りてゆく。そこには鉄仮面の手下を連れたマンソンが待ち受けていた。マンソンはルイを捕らえ、鉄仮面と同じ鉄のマスクを被せてしまう。
そして空となったベッドは寝室に戻り、代わりにフィリップが床に就く。ミレディーはフィリップに、朝起きたら真っ先に自分を呼ぶよう告げて寝室を後にする。


一方、庭園に現れた鉄仮面は、駆け付けたダルタニャンとも剣を交えるも、やがて庭園の奥へ姿を消す。そして地下室に入ると、鉄仮面の姿をしたルイを代わりに庭園へ放つ。
鉄仮面の姿で庭園を彷徨うルイをジャンが発見し、駆け付けたダルタニャンが難無く捕らえる。ダルタニャンは、自分が捕らえたのが鉄仮面ではなくルイだと全く気付かないまま、三銃士に引渡して会場を後にする。


■Explanation■
前話に続き、今回も鉄仮面一味の陰謀が一気に収束する話。よって我らがダルタニャンも一味の引き立て役にされてしまう。園遊会場に忍び込み、ちゃっかり銃士隊の制服を着て宴に紛れ込み、ご馳走を拝借したりとコミカルというか道化的な姿が目立ってしまう。


鉄仮面一味が仕掛けた、フィリップがアジト(マンソンの別荘)を出る時の芝居も巧妙。まず、ミレディーも捕まって一巻の終わりと思わせて、そこに救いの手として協力者(例の「ヒゲの男」)の手引きで九死に一生の形で脱出。簡単に「鉄仮面の隙を突いて脱出」ではなく、一旦絶望を味わわせることで、フィリップに陰謀加担への覚悟を固めさせたのかもしれない。
あと、フィリップが鉄仮面に扮して「堂々と門番を騙して突破する」は、後の伏線となるので覚えておこう。


園遊会場にて、ミレディーは国王ルイとアンヌ王妃に謁見する。意外や意外、ミレディーが国王夫妻が対面するのはこれが初めてだったのか。リシュリューの部下とは言え裏仕事に就いていたミレディーの経歴を考えると、今まで謁見しなかった、否、できなかったのも納得。
もっとも、この謁見もミレディーにとっては陰謀への重要な布石なのだが。


華やかな園遊会が終わり、屋敷を夜の闇が包むと、替わって陰謀の幕が開く。庭園に現れた鉄仮面が大暴れする姿と、ルイのベッドが仕掛けで徐々に降りて行く様子が交互に描かれ、緊張感が溢れるシーンが続く。
そして鉄仮面と、マンソンによって「偽鉄仮面」に仕立てられたルイが入れ替わり、それをダルタニャンが逮捕する怒涛の展開で、観ている方もテンションが上がってしまう。


かくして「国王摩り替え」という陰謀を達成した鉄仮面一味。一方、そんな陰謀が存在したことすら知らないダルタニャンと三銃士。物語は更なる急展開を迎えることになる。


■Dialogue/Monologue■

ロシュフォール「一ヶ所だけ穴を開けておけよ。警備が余りにも完璧だと、鉄仮面が中に入れないので捕らえることができんだろうが」
ジュサック「なるほど!さすがはロシュフォール様!おつむが違いますな!」
ダルタニャン「よく言うよ、穴だらけじゃないか」
ジャン「いいじゃん、お陰でオイラたちも中へ入れたんだから」

園遊会場の警備に絶対の自信を誇るロシュフォールとジュサック。
しかし、その影では難無く忍び込んでいたダルタニャンとジャンが呆れ返っていた。

アンヌ王妃「バッキンガム公はあの女の手にかかって…あぁ(失神)」
リシュリュー「あちらに東屋がございます。ミレディー、ご案内を」
アンヌ王妃「いいえ、結構です!自分で参ります!」

王妃にとってのミレディーは、散々苦しめられたリシュリューの部下であり、何よりバッキンガム公爵の仇。そんな悪魔のような女が突然現れたため、気を失いかけてしまう。
それでも助けを拒み自ら場を去るのは、王妃としての矜持か。

ミレディー「何か王妃様のご機嫌を損ねるような事を致しましたのでしょうか?」
国王ルイ「なぁに、そなたが余りにも美しいので、焼きもちを妬いたのだろう。とかく、女は難しいものだ」
ミレディー「私も女でございます」
国王ルイ「そなたも難しい女か?」
ミレディー「さぁ…お試しあそばせ」
国王ルイ「面白い、リシュリュー、このミレディーをしばらく借りるぞ」

そんな王妃の思いなど露知らず。すっかりミレディーに御執心なルイ。ミレディーは「難しい女」どころではなく、既にミレディーの陰謀に嵌っている。

マンソン「リシュリューは自分一人で、この国を治めようとしております。それが間違いの元なのでございます」
ミレディー「国の財産までも盗んでおります」
マンソン「そしてルイ13世は国王でありながら、それを見て見ぬ振り」
フィリップ「私には真の友は2人しかおらぬ、ミレディー、マンソン、お前たちだ」

国王摩り替え計画を目前にした3人の会話。
ミレディーとマンソンを「友」と呼ぶフィリップ。自分を幽閉の身から救い出してくれたのみならず、フランスの悪政を正すという「生きる目的」を与えてくれたことを感謝しているのだろう。
しかし、かつての友であるフランソワと違い、ミレディーとマンソンには恐ろしい本心が隠されていた。

国王ルイ「マンソン、余興にしては度が過ぎるぞ!」
マンソン「余興では御座いません、戴冠式なので御座います。…これがお前の新しい王冠だ!」
(ルイに鉄のマスクを被せる)
マンソン「もう口は聞けぬ!お前は今からお尋ね者の鉄仮面だ!」

ベッドごと地下室に落とされたルイと、待ち受けたマンソンの会話。
驚きうろたえるルイに対して、最初の慇懃な口調から一気に変貌するマンソン。鉄のマスクを力づくで被せるシーンと相まって、マンソンの凶悪ぶりが強烈。

鉄仮面「よし、庭に放してやれ。後は獲物に飢えた猟犬どもが始末をつけてくれる」

園遊会場の地下室に入り、「偽鉄仮面」となったルイと入れ替わる時のセリフ。
先程まで剣を交えていた護衛隊士やダルタニャンを「猟犬」呼ばわりするのは余裕の表れか。

ダルタニャン「僕が捕まえたんじゃ、隊長が胸を張って銃士隊の手柄と言えなくなる。銃士隊のためにも、君たちが逮捕したことにして下さい。お願いします」

鉄仮面(偽者だけど)を逮捕して三銃士に引き渡した時のセリフ。
宿敵を逮捕して大喜びかと思いきや、その手柄を三銃士とトレビル隊長に譲ろうとするダルタニャン。
意外な程に丁寧な言葉遣いには、自分を支えてくれた三銃士への感謝と、除隊処分を受けながらも消えぬトレビル隊長への尊敬が込められていたのかもしれない。


■Next Episode ~次回予告~■

アンヌ「コンスタンス、私(わたくし)は信じられません」
コンスタンス「王妃様、どうなさったのですか」
アンヌ「陛下が、私達を修道院へ追放する御命令を出されたのよ」
コンスタンス「何ですって!」
アンヌ「そればかりか、陛下のお傍にあのミレディーが、侍女としてお仕えすることになったの」
コンスタンス「そんな!」
アンヌ「たった一晩で何もかも変わってしまうなんて」
コンスタンス「次回『アニメ三銃士』《ミレディーの陰謀》。ダルタニャン、早く助けに来て!」

コンスタンスとアンヌ王妃による予告。なお、王妃が予告に登場するのは意外にも今回だけ。
本編では鉄仮面一味による国王すり替えが起こったけど、そんな事は知る由も無し。コンスタンス共々修道院へ追放されて、その戸惑い振りを表している。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
ルイ14世の大蔵大臣フーケが造ったボー・ル・ヴィコント(1656-1661造)を紹介。
この館はベルサイユ宮殿が完成するまで、フランスで最も豪華な館とされていたという。そしてルイ14世に疎まれていたフーケは関係を改善すべく、ルイ14世を招き豪華な宴会を開く。しかし、その目論見は失敗し、宴会の翌日に逮捕状が出されフーケは失脚する。
その史実を元に、ディマは『ダルタニャン物語』第3部を創作。この館を舞台にアラミスが(アニメ本編とは大違いだ!)国王すり替えの大陰謀を成功させるも、一変して悲劇的な結末を迎えることが解説されている。


(記:2013年5月27日/追記:2020年04月29日)