アニメ三銃士

43話:アトス逮捕さる

(放送日:1988年11月18日 / 演出:高本宣弘 / 作画監督山本哲也

■Story■
深夜、ボナシュー宅で眠るダルタニャンとジャンを、鉄仮面の手下たちが襲撃する。コピーが騒いだことで2人は目を覚まし、テーブルや椅子で応戦するも追い詰められる。しかし、そこへ訪れたアトスとポルトスが加勢して、手下を追い払うことができた。
ダルタニャンはアトスとポルトスから、トレビルが銃士隊長を辞めたこと、それに順じて2人とも銃士隊を辞めたこと、そしてアラミスだけは裏切って銃士隊長になったことを聞かされる。
園遊会以来、次々と起こる不可解な事態について考える一同。そしてアトスは、捕まえた鉄仮面は偽物だったのではないかと推測する。


一方、ダルタニャンの抹殺に失敗した上、アトスとポストスも敵に回した鉄仮面一味。次の策として、銃士隊長となったアラミスの忠誠心を試すため、アトスとポルトスにスパイの疑いを掛け逮捕させようと企む。
ルーブル宮殿にてミレディーから命令を受けたアラミスは、険しい表情を浮かべるも了解する。


ダルタニャンはマンソンの別荘を探りに出掛け、アトスとポルトスはボナシュー宅に滞在していた。それを確認したミレディーは、傍にいたコレットに謎の図面を託し、アトスとポルトスに渡すよう依頼する。
コレットから渡された図面が何なのか理解できないアトスとポルトス。そこへ銃士隊を引き連れたアラミスがやってきて、2人を逮捕しようとする。逮捕の理由はスパイ容疑で、2人が渡された図面は国家機密である潜水艦の設計図だったのだ。
ポルトスは応戦しようとするがアトスが力づくで脱出させ、アトスのみがアラミスに逮捕される。


アトスはシャトレの牢獄へ収監が、その途中でアラミスと密かに会話を交わし、アラミスが銃士隊長になったのは何らかの思惑があったことを確認する。


その頃、ダルタニャンとジャンはボナシューを探して、マンソンの別荘にやって来た。屋根裏部屋から潜入すると、部屋の配管からボナシューの呻き声が聞こえてきた。2人はボナシューが監禁されている地下室を見つけ、ボナシューの救出に成功する。
しかし、ボナシューを連れて脱出を図る2人の前に、本物の鉄仮面とその手下が現れる。追い詰められた2人だったが、駆け付けたポルトスの加勢により窮地を脱する。


ダルタニャンたちはボナシューを連れて、ポール・ロワイヤルの修道院を密かに訪れる。そこで幽閉されているアンヌ王妃とコンスタンスにボナシューを託す。
そして、ダルタニャン・ジャン・ポルトスの3人で本物の鉄仮面の陰謀へと立ち向かおうとする。


■Explanation■
冒頭からダルタニャンが寝込みを襲撃されるという絶体絶命のシーン。しかも闇夜の中で、枕元に置いていた剣も奪われた丸腰の状態で、刺客の人数も続々と増えるというのは、普通のアクションシーンと違って恐怖を煽るシチュエーションだ。
そこへ助けに現れたのが、銃士隊を辞めたばかりのアトスとポルトス。状況から察するに、ダルタニャンの危機に駆け付けたのではなく、たまたま襲撃現場に遭遇したみたいだけど、これもまた友情の成せる技か。友の援軍により、ダルタニャンは危機を乗り越える。


その頃、鉄仮面一味は潜水艦を開発し、マンソンの別荘への極秘出入りに使用していた。この潜水艦が出てきたのは4話以来。それもストーリーには全く関係無かったので、忘れていた視聴者も多かったのでは。
この潜水艦は隠密行動を主とする一味にとって、重要なアイテムとなる。


ミレディーが発案した、アラミスへのアトス・ポルトス逮捕命令。ミレディーにとっても、アラミスがあっさりと銃士隊長を引き受けたのは意外だったのか。
命令を受けたアラミスは驚きと隠そうとしない。いくら「目的」があったとしても、まだ迷っていたことが容易に伺える。
ここでのマンソンは、胸に着けている例のペンダントを見せつけるように弄ぶ。当のマンソンにとっては無意識の動作だったかもしれないが、アラミスにとっては自らの決心をより強固にさせることだった。


ミレディーに「お使い」を頼まれて、久々に登場したコレット。そう言えば、彼女は人買いに売り飛ばされそうだったところを助けられたことから鉄仮面を尊敬していたけど、その鉄仮面(の偽者)が逮捕されたことを知っている雰囲気はなかった。
「パリを騒がせていた盗賊」であり、施しを受けた者からは義賊だと感謝されていた鉄仮面が逮捕されたのに、それに関して市民たちがどんな反応をしたか描かれずじまいなのは、どうも物足りない。


今回のメインであるアトスの逮捕シーン。ここでのアトスは大人の余裕というか、知恵者としての機転や冷静さを発揮する。
ポルトスを力尽くで逃がし、自らは盾となって逮捕される。ポルトスと共に逃げ続けるのではなく、逮捕されることで(アラミスとは別の形で)敵の懐に入り込む。そして、密かにアラミスと会話を交わし、その本心を確認する。


一方、マンソンの別荘を探るダルタニャン。かつてはアラミスと共に捜索したが、仕掛けのせいでボナシューを見つけられなかった。そして今回も、仕掛けの本体を発見するも、まだ何のために使うのか分からない。しかし運良く配管伝いにボナシューの声を聞いたことで救出に成功する。


そしてクライマックス。脱出しようとするダルタニャンの前に、本物の鉄仮面が出現。これで逮捕した鉄仮面が偽者であることが明らかとなる。
「偽者を逮捕させたのに、どうして鉄仮面は今でも仮面を着けて行動しているんだ」と野暮なことを言ってはいけない。鉄仮面とはその名の如く、仮面を着け続けなければならない宿命なのだから。…まぁ、この辺はお約束ということで。
鉄仮面とその手下に囲まれて、本話2度目となるピンチを迎えるダルタニャン。そこへ助けに現れたのがポルトス。ボナシュー宅を脱出したその足で駆け付けたのだろう。何処かで調達した巨大な丸太で扉を突き破り、手下たちを蹴散らすという、力自慢なポストスらしい活躍だ。


■Dialogue/Monologue■

マンソン「いかがかな、潜水艦の乗り心地は」
ミレディー「楽しかったわ、お魚になった気分で」

かつてはグライダーで空を飛んだこともあるミレディー。今回は潜水艦に乗って水中潜行と、当時の人間としては考えられない貴重な体験をしているもんだ。

マンソン「かつての仲間を逮捕するのは気が進まぬか?」
アラミス「……!」
ミレディー「でも陛下のためにならぬ連中を捕らえるのは、銃士隊の役目でしょ」
アラミス「……」
マンソン「嫌なら護衛隊のジュサックにやらせるまでだ」
アラミス「いえ、陛下のご命令であれば、喜んでお引き受け致します」
マンソン「それでこそ、陛下の銃士隊長だ!頼んだぞ」

「目的」のために友を裏切り、銃士隊長としてミレディーたちに従ったアラミス。しかし、この逮捕命令は予想外だったのか、無言と険しい表情で迷いを露にする。
それこそ視聴者的には「ここでアラミスも銃士隊を辞めるんじゃ」と思わせる程の緊張感。

アトス「シャトレか、それは名誉なことだ!あそこは国王ルイ13世陛下を名乗る鉄仮面やら、大臣のリシュリューやら、お偉方ばかり泊まる高級ホテルだからな」

アラミスに逮捕され、シャトレに収監されると告げられた時のアトスの言葉。
逮捕された事への負け惜しみかと言う無かれ。アトスにとっては「逮捕した鉄仮面が、実は国王ではないのか」という推測を確認する、絶好の機会を得たのだから。

アトス「アラミス、これには何かワケがあるな」
アラミス「…」
アトス「私には分かっている。君が銃士隊長になったのは、本心ではないのだろう」
アラミス「あぁ、どうしても探りたいことがあったからだ。時が来たら話す。それまで勘弁してくれ」
アトス「分かった。アラミス、頑張れ…」

間違い無く本話のハイライト。
牢獄に向かう廊下を歩きながら、響く靴音に掻き消されそうな小さな声で、しかし確かな会話を交わす2人だった。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「シャトレの牢にいる鉄仮面は、本当に国王陛下なのかもしれないぞ」
ジャン「だけど陛下はルーブルにちゃんといるんだろ」
ポルトス「それはそうだが、確かにこのところ、陛下のなさることはおかしな事ばかりだ」
ダルタニャン「とにかく、自由に動けるのは俺たち三人だけだ!こうなったら、ルーブルに乗り込んで直接確かめてやる!」
ジャン「次回『アニメ三銃士』」
ポルトス「《鉄仮面は誰だ》」
ダルタニャン「みんな、また会おう!」

久々にダルタニャンとジャンが予告に登場。そして三銃士で唯一残ったポルトスも加わる。
この三人が揃えば文殊の知恵…となるワケもなし。「ルーブルに乗り込んで直接確かめてやる」というダルタニャンの言葉が示すように、行動あるのみで何とも無鉄砲、もとい威勢のいい予告だ。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
今回から7回にわたりフランス・ロワール地方を紹介。
その1回目となる今回はロワール川とトゥーレーヌのぶどう畑などについて解説。
ロワール川は全長1000kmを超すフランス第一の長い川。フランス西部の流域はなだらかな地形と穏やかな気候に恵まれており、中世の頃から多くの城や宮殿が造られた。その美しさから「フランスの庭」と呼ばれているという。
また、ワインの産地としても有名と解説されている。


(記:2013年7月2日/追記:2020年05月04日)