アニメ三銃士

44話:鉄仮面は誰だ

(放送日:1988年12月2日 / 演出:アミノテツロー / 作画監督佐藤真人

■Story■
鉄仮面一味の陰謀を追うダルタニャン・ジャン・ポルトスは、二手に分かれて行動する。
ダルタニャンポール・ロワイヤルの修道院に潜り込み、回復したボナシューから話を聞く。ボナシューは、鉄仮面に脅されて国王の園遊会の衣装と同じ服をったことをダルタニャンに伝えた。


一方、ポルトスは投獄されている鉄仮面の正体を探るべくシャトレの牢獄に行く。看守長のベースモーはポルトスが尋ね者になっていることを知った上で迎える。しかし、ベーズモーが牢番の詰所に行くと、潜入していたロシュフォールが現れ、収監されているリシュリューを解放するようベーズモーを脅す。ベースモーは慌ててポルトスに助けを求め、ポルトスの酒瓶での一撃でロシュフォールは気絶する。


ポルトスはベーズモーに頼まれ、気絶したロシュフォールを牢に運ぶ。しかし、案内された牢はアトスが収監されている部屋で、ポルトスが入ったところでベースモーが鍵を掛けてしまう。
怒ったポルトスは牢の扉を体当たりで破る。そしてベーズモーを説得したアトスが一時的に牢を出て、地下牢の鉄仮面と面会する。


ベーズモーの部屋で酒を飲むポルトスは、ロシュフォールにも一緒に飲むよう誘う。しかし、ロシュフォールは拒否して、ポルトスとも口論になる。そこへ面会を終えたアトスが戻り、ポルトスにアラミスの裏切りは本心ではないと伝え、鉄仮面の鍵を手に入れるようアラミスへの伝言を頼む。
そして、アトスが絶対に脱獄しないことを条件に、ベースモーはポルトスを立ち去らせる。


ダルタニャンとポルトスは合流し、アラミスに会うためルーブル宮殿に潜入する。かつてバッキンガム公爵がアンヌ王妃に会うために使った隠し通路から潜入し、やがて国王の執務室に出る。
やがて執務室にミレディー・マンソン、そして偽国王のフィリップがやってくる。ミレディーとマンソンはフィリップ対して、鉄仮面として収監中のルイ13世を即刻処刑するよう説得する。しかし、フィリップは兄弟であるルイを処刑などできないと頑なに拒む。
その会話を盗み聞いていたダルタニャンとポルトスは、国王すり替えの真相を知り驚愕する。そして、ミレディーの飼い猿ペペに気付かれ見つかり、アラミス率いる銃士隊が駆け付ける。


アラミスはダルタニャンとポルトスを追うフリをして、逃げられるよう誘導する。そしてポルトスもアラミスに、鉄仮面の鍵を探すよう伝える。
アラミスの助けによって、ダルタニャンとポルトスは銃士隊を振り切りルーブル宮殿を脱出する。


■Explanation■
ダルタニャンたちが国王すり替えの確信に迫り、「鉄仮面編」もクライマックスへ突入する。
ただ、「クライマックス前の一服」と言わんばかりにコミカルなシーンが織り込まれていたりする。


修道院に潜入したダルタニャンが修道女に目撃されて騒ぎになり、礼拝堂のマリア像の裏に隠れていたら像を倒しそうになり、見回りに来た修道院長から隠れるため外の壁にへばり付き、脱出する時も同じ修道女に見つかって再度騒ぎになる。そして、土煙が上がる程の猛ダッシュで逃げ出す。
物語的にはボナシューの「国王の服を作らされた」という証言の方が重要なんだけど、視聴者的には既知の事実なので、ダルタニャンのコミカルなシーンが印象に残ってしまう。


シャトレ牢獄でもポルトス中心で話が進むので、どこかコミカルな雰囲気。ポルトスを捕らえようと企んだベースモーがロシュフォールに襲われて、泣き付くように助けを求めたり。リシュリューを救うべく意気込んで現れたロシュフォールが、ポルトスにあえなくノックアウトされたり。
結局、諍いなど無かったかのように3人が(特にポルトスが)酒を飲んでいるのは、奇妙であり微笑ましいシーンだ。


一方、シリアスな役割を担うのがアトス。ポルトスが扉を破壊して一触即発になった時も、ベーズモーと冷静に交渉して鉄仮面と面会する許可を得る。そして、扉越しに会話を交わして、鉄仮面が本物の国王だと確信する。この辺の機転は「知恵者」の本領発揮といったところ。
あと、牢の中でアトスと鉄仮面(ルイ)がどんな話をしたは描かれていないけど、視聴者目線では知っている事実ばかりだと思われるので、あえて省略したのかと。


ルーブルに潜入するダルタニャンとポルトス。窓から入ろうとしたポルトスが、窓枠にハマって動けなくなるのはお約束。また、12話でバッキンガム公爵が使った隠し通路が再登場するのは何とも懐かしい。
そして、クライマックス。国王の執務室から脱出する時の、アラミスとの対決。逃げる2人を先頭切って追うフリをしながら、調度品を倒したりカーテンを切り落としたりして、銃士隊士の追跡を巧みに妨害する。追っ手が途絶えたところで、ポルトスから伝言を伝えられ、さらに短いながらも友情を確認する言葉を交わす。数話前には仲違いをした両者が和解を果たす名シーンだ。


ところで、この時登場した銃士隊士たちは、三銃士の同僚でありダルタニャンにとっては先輩にあたるはずなんだけど。ダルタニャンもポルトスも全く躊躇無く剣を抜き、容易くあしらってしまう。隊士たちもあしらわれるばかりか、追いかけて転んだりで何とも情けない。護衛隊と大差ない、損な役回りだ。


ラストはルーブルからの脱出。ポルトスが再び窓枠にハマり、ロシナンテがロープで引っ張ってようやく抜け出すシーンは、先程までのシリアスかつスリリングな展開から一転してコミカルな雰囲気に戻してくれる。


■Dialogue/Monologue■

ポルトス「馬の奴、美味そうに草を食ってやがる。あーあ、腹減ったなぁ」

馬小屋で目覚めて、空きっ腹を抱えながらの言葉。この後、コピーがどこから持ってきたジャガイモ(と思しき掌サイズの何か)を食べて腹ごしらえ。
そのお陰か、この回は大活躍を見せます。

アンヌ王妃「マリア様、どうか一日も早く陛下の誤解と怒りが解け、ルーブルに帰れますように。お願いします」
(マリア象が微かに動く)
コンスタンス「今、マリア様が王妃様のお祈りに頷いて下さいましたよ。きっと王妃様の願いを聞き届けて下さったのですよ」

ルーブルに戻る事を願い、神に祈る日々を送る王妃とコンスタンス。この時、マリア像が動いたのは神の力ではなく、像の裏にダルタニャンが隠れていたからです。
大真面目に祈る二人と、像の裏で踏ん張っているダルタニャンのギャップは笑える。

修道院長「またですか。調べましたけど、誰も居ませんよ。あなたの幻でしょう。神への信仰が足りないから、そんなモノを見るのですよ」
修道女「でも…確かに…」

2度に渡ってダルタニャンに遭遇して、驚きの余り大声を出してしまった名も無き修道女。
その上、院長に信じてもらえず未熟者呼ばわりされるとは災難だ。

ベーズモー「ワシを酔っ払わせてアトスを助けるつもりだな。お尋ね者になっているのを、このベーズモーが知らないとでも思ってるのだろうか」

表向きはポルトスを迎えつつ、密かに捕らえようと企むベースモー。
見かけによらず狡猾な人物と思いきや、この後ロシュフォールに襲われ、捕らえようとしたポルトスに泣き付く始末。

ポルトス「しかしロシュフォールも良い所があるな。たった一人で恩のあるリシュリューを助けに来るとはあっぱれだ」
ベーズモー「陛下の囚人を預かる私には迷惑な話です」

ロシュフォールとは顔を合わせればケンカばかりしていたポルトスだけど、一人で乗り込んできた姿に共感を示す。
直情型でコミカル担当という点で、2人は似た物同士だったのかもしれない。

アトス「ここにいる鉄仮面の身元を確かめてくる。君はベーズモーと酒でも飲みながら見張っててくれ」
ポルトス「分かった。これでやっと一杯やれそうだな。ベーズモー殿、酒盛りは賑やかな方が良い。ロシュフォールも誘ってやろう」

ロシュフォールに襲撃されたり、ベーズモーによって牢に閉じ込められたり、災難続きなポルトスだけど。「やっと一杯やれる」の一言で締めくくってしまう豪快さ。
シャトレに来たのは鉄仮面の正体を確かめるためではなく、酒盛りをしたかっただけなのではと疑ってしまいたくなる。

アトス「もし、中のお方」
鉄仮面(ルイ)「誰だ」
アトス「私が誰か、お分かりになりますかな」
鉄仮面(ルイ)「その声は銃士のアトスだな」
アトス「何故、分かります」
鉄仮面(ルイ)「私は国王ルイ13世だ。身近に仕える銃士の声を忘れるものか」
アトス「分かりました。今そちらに参ります」

この時点で獄中の鉄仮面の正体が国王ルイだと確信していたのか、アトスは丁寧な口調で語りかける。
ルイも扉越しの声でアトスだと分かるのは、さすが国王というべきか。パリの市民の数を聞かれて「リシュリューにでも聞け!」と逆ギレしたのを反省したのだろうか。

ポルトス「ロシュフォール殿、さっきは失礼した。まぁ、一杯やって勘弁してくれ」
ロシュフォールリシュリュー閣下をお助けするまでは、酒など飲む気になれん」
ポルトス「何だと!リシュリューをここから出すわけには行かんと言ったはずだろ!」
ロシュフォール「貴様ら銃士にはリシュリュー閣下の素晴らしさが分からんのか!」
ポルトス「分かるもんか!」

剣を向けられたことや酒瓶で殴り倒したことを、一杯やって済ましてしまおうとするポルトス。
一方、ロシュフォールリシュリューへの忠誠心から、勧められた酒を拒む。
結局、ケンカになる2人でした。

牢番「ベーズモー様、クセ者です!私をいきなり後ろから殴って気絶させた者がいます」
ベーズモー「やれやれ、今まで昼寝していたのか。クセ者はこの通りポルトス様が取り押さえてくれた。一杯やってから牢にお引取り願うから、何か美味い物を持って来い」
アトス「あぁ、それなら地下の鉄仮面にもご馳走を運んでやってくれぬか。あの囚人を手厚く持て成しておくと、後々良い事があるかもしれませぬぞ、ベーズモー殿」

ゴタゴタ続きだったシャトレ牢獄のシーンを締めくくる会話。この牢番はずっと昼寝、もといロシュフォールに襲われて気絶していたのか。
あと、地下の鉄仮面が国王だと判明して、手厚く持て成すことを勧めるアトスだけど。自分が以前に「国王を語る不届き者」と無碍に扱ったことは、やっぱり謝ったんだろうか。

フィリップ「リシュリューはともかく、ルイ…いや、鉄仮面は私の血を分けた兄弟だぞ!」
ミレディー「そっくりの兄弟だからこそ、囚人の鉄仮面として早く処刑しなければならないのです!あの方には双子の兄弟ということで、散々辛い事をさせられたことをお忘れですか!」
フィリップ「忘れはせぬ。だが、ルイとて私の命まで奪おうとはしなかった。一生鉄仮面として人目に付かぬ暮らしをさせても、処刑に名を借りて殺すことはできぬ!」

執務室に潜んでいたダルタニャンとポルトスが聞いた、国王すり替えの真相が一発で理解できる衝撃の会話。
鉄仮面と使って自分を幽閉させた(と吹き込まれている)ルイを憎みきることができず、兄弟として生かしておこうとする。フィリップの優しさにも注目。

ポルトス「アトスからの言伝だ。鉄仮面の鍵を手に入れて欲しいそうだ」
アラミス「…分かった」
ダルタニャン「ありがとう、アラミス…」
ポルトス「気をつけてな…」
アラミス「君たちも。…急げ!」

追撃する衛兵や銃士隊士を逃れ、必要最低限の言伝と、少ないながらも友情を確認する言葉を交わす3人。
お尋ね者として野に下る者、牢にいる者、真意を隠して敵に仕える者。境遇は違えども、想いは確かに繋がっている。

ポルトス「出たぁ…」

今回大活躍のポルトスの、ラストを締め括るに相応しいセリフ。ロシナンテに引っ張ってもらい、窓枠から飛び出したポルトスが、空を舞うような開放感と共に発した名言。


■Next Episode ~次回予告~■

ジャン「これは絶っ対に秘密なんだけど、アラミスってホントは女なんだ。
それを知っているのはおいらとトレビル隊長だけ。
女のアラミスがどうして銃士になったのか、何か訳がありそうなんだけど、誰も知らないんだ。
でもその訳が、いよいよ明かされる時が来た!
次回『アニメ三銃士』《アラミスの秘密》。よ・ろ・し・く・ジャーン!」

いつもと趣を変えて、ジャンが視聴者に語り掛ける予告。これだけで次回が特に重要なエピソードだと感じられる。
アラミスが実は女性だという描写は16話(肩を撃たれた後でダルタニャンの治療を拒むシーン)を最後に途絶えていたので、忘れていたり途中から観始めたので知らない視聴者もいることに配慮したのかもしれない。
ところで、この時点でアラミスが女性だと知る様子が劇中で唯一描かれた(トレビル隊長は既に知っているという設定)ジャンだけど、次回明かされる「その訳」を教えてもらったのだろうか。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
フランス・ロワール地方の2回目。「ジャンヌ・ダルク登場の城」ことシノン城と、「メルヘンの城」ことユセ城を紹介。
シノン城はフランスがイギリスとの百年戦争で負け続けていた1429年に、神のお告げを受けてやってきたジャンヌが、多くの臣下の後ろに隠れていた王太子シャルルを見事に見つけ出した。その有名な話の舞台となった城だという。
そしてユセ城は童話作家ペローが『眠れる森の美女』の舞台を探して、ようやく訪ねあてた城と紹介されている。映像では緑の森を背景に白い塔が浮き上がる神秘的な雰囲気を伝えている。


(記:2013年8月17日/追記:2020年05月04日)