アニメ三銃士

Column32 語ろう!『アニメ三銃士』(素顔のメインキャラたち5)

『別冊アニメディア アニメ三銃士 PART1』に掲載された声優陣のインタビューを紹介する企画の第5弾。
前回はコンスタンス役の日高のり子さん、アトス役の神谷明さん、ポルトス役の佐藤政道さん、ジャン役の田中真弓さん、ロシナンテ役&コピー役の龍田直樹さんのコメントを紹介しました。

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今回はルーブル宮殿を巡るキャラを演じるキャスト陣。トレビル隊長役の玄田哲章さん、ルイ13世役の田中秀幸さん、アンヌ王妃役の岡本茉利さん、バッキンガム公爵役の井上和彦さん、リシュリュー役の田中信夫さん、ローシュフォール伯爵役の千葉繁さんのコメントを紹介します。


一癖も二癖もあるキャラクターを演じているためか、どの声優さんも思い入れ充分の……いや、人によっては思い入れの控え目なコメントをしているけど。印象的なコメントばかりなのでよーく読んで下さいな。


まずはダルタニャンと三銃士にとっては上司にあたる、このお方から…。

トレビルは佳境に入るとオモシロイ!


■トレビル隊長 玄田哲章
今までは発散する役が多かったんですけれど、今回は抑えて抑えてという役どころで、こういうのも好きですねぇ。苦労といえば使う言葉ですね。日頃しゃべらない言いまわしは、慣れるまでは大変でした。
トレビル自体のキャラクターっていうのは、隊長としてリシュリューと対決するわけですが、完全ではないし、失敗もある。そして、その失敗を三銃士にあてこすったり(笑)、でも結局は責任を取らなくてはならないんですけれど、そういう人間的なところが出くればくるぼど、いいキャラクターだと思います。
個人的には、ミレディーが好きです。彼女は悪だけど爽快感があるんですよね。


プロフィール
昭和23年5月20日岡山県生まれ。『トランスフォーマー』のコンボイ役など。所属/81プロデュース

玄田さんが「人間的なところ」と語るのは、ダルタニャンや三銃士を叱ったりするシーンの事かな。トレビルはアクションでバリバリ活躍するキャラでもなかったし、最後まで「抑えて抑えて」な中間管理職なキャラだったっけ。
あと、玄田さんはミレディーがお気に入りとのことだけど、トレビルがミレディ―と対峙するシーンは殆ど無かったのは残念な所。


続いては、キャラへの思い入れが......な、このお方。

あーいうタイプ あまり好きじゃない


ルイ13世 田中秀幸
今のところのからみっていうと、ほとんどリシュシューとのやりとりなんですよね。客観的にルイ13世という人を見てみると、あの人は結局リシュリューに振り回されたまま終わっちゃうんでしょうね。どうせ頭が上がらないみたいだし、リシュリューに対する疑いみたいなものは持っていないみたいですしね。
彼は素直と言えば素直なんでしょうけれど(笑)、あーいうタイプの人はあんまり好きじゃありませんね。もっとも、あーいうタイプを好きだっていう人は少ないでしょうけれど(笑)。
まあ、これから後半に入っていくわけですが、僕自身、特にルイに希望することはないですよ。このままでね。

プロフィール
11月12日東京都生まれ。♪がんばれがんばれドカベン♪の山田太郎役でデビュー。所属/青二プロ。

うだつの上がらないルイに対して、思い入れが控え目なコメント。田中さんが当時演じていたキャラといえば、『聖闘士星矢』のアイオリアや『北斗の拳2』のファルコや『魁!!男塾』の大豪院邪鬼など精悍で男らしいキャラばかり。それ故にダメキャラのルイにキャスティングされたのは、視聴者としても意外だったっけ。
でも、ひょっとしたらシリーズ後半に登場する双子の兄弟・フィリップ役がメインでキャスティングされたのかも。フィリップは悲劇的な半生を歩みながらも誠実な性格で、それ故に偽国王となったことに苦悩する難しい役どころ。そしてルイも国王すり替え事件を通じて精神的に成長したし、ルイとフィリップの二役は田中さんもさぞ演じ甲斐があったはず。フィリップを演じた感想や、最後まで演じてルイの印象は変わったのか。何とも気になります。


お次は「憧れの役」を演じることの嬉しさを語る、このお方。

自己中心、でも思いやりと厳しさの王妃大好き!


■アンヌ王妃 岡本茉利
「アデュー・バッキンガム・・・・・・」と言うシーンは、ひどくキザでマジに照れました。でも、子供の頃に憧れていた王妃の役を演っているんだなあと、心より喜んで楽しんでやっています。今でも何故バッキンガム公にダイヤの首飾りを渡してしまったのか、何か他のものがなかったのか!?と悔やまれます(笑)。


プロフィール
昭和29年10月31日東京都生まれ。『花の子ルンルン』のルンルン等かわいい女の子もこなします。所属/エーアンドイー。

役者ならずとも、女性ならば誰もが憧れるのがお姫様や王妃様。しかし、アンヌ王妃は陰謀に振り回される役どころだけど、それでも喜んで楽しんで演じているのは何より。
そして、印象的なシーンは6話「パリ大逃走」より、バッキンガム公爵への「別れのセリフ」を言うシーンを挙げている。ここで王妃と公爵の関係が終っていれば……という想いが垣間見えます。


続いては、みんなに愛される?……あのキャラを演じた、このお方。

バッキンちゃんは愛すべきキャラでありました


■バッキンガム公爵 井上和彦
バッキンガムのことを、出演者の方が「バッキンちゃん、バッキンちゃん」と呼んでくれていたのがとても嬉しかったです。アフレコ中にも、アンヌ王妃に宛てた手紙で「あなた様の馬車をお待ちしております」というセリフを「お持ちしております」と本番で言ってしまい、振り返ると出演者一同、馬車を持つポーズをしていたのであります(笑)。
一番印象に残っているシーンは、アンヌ王妃と別れるシーン「オールボワール」と言って・・・。いやーよかったなぁー!バッキンちゃんはとても愛すべきキャラクターでありました。


プロフィール
昭和29年3月25日神奈川県生まれ。『超音戦士ボーグマン』のチャックなどで活躍。所属/大沢事務所

本作随一のトラブルメーカ―だったバッキンガム公爵も、キャスト陣の間ではダメキャラ故に愛されていたようで。演じる井上さんも嬉しそうだ。ところで「馬車を持つポーズ」って、どんなポーズだろう、気になる。
印象に残ってるシーンは、アンヌ王妃役の岡本さんと同じく6話から。王妃に「再会を誓うセリフ」を言うシーンを挙げているのが興味深い。そして締め括りのコメントが「愛すべきキャラクター"でした"」と過去形になっているのは、コメント収録時点では既に公爵が暗殺される話(30話「バッキンガム暗殺」)が収録済みだったからだろうか。


こちらは悪の大ボスを演じるこの方から、悪役らしからぬコメント。

一生懸命生きてるから好きです(わざと怖い顔!)


リシュリュー 田中信夫
昔、演ったアニメの『科学忍者隊ガッチャマン』でも総裁Xという悪役をしたことがあるので、今回が2回目の悪役です。
でも、僕はリシュリューを悪役とは思ってないんです。愛国者なんですよ彼は。フランスのため、フランス人民のためにやってるんですからね。その手段や方法に問題はあるかも知れませんが、僕は好きです。一生懸命に生きてますものね、あの人は。
謎な部分はミレディーとの関係ですね。どっちがどっちを利用しているかは終わりまでいかないと分からないんじゃないでしょうかね。それもまた楽しみですよ。


プロフィール
昭和10年8月1日東京都生まれ。「たのぶ家たの助」という芸名で落語の寄席にも出演中。所属/俳協

見出しに「わざと怖い顔!」とあるように、コメントに添えてある写真では強面で写っていた田中さん。メインキャストの中では一番のベテランだけど、それでも「悪役は2回目」というのは意外。
演じるリシュリューについて「悪役ではなく愛国者」と評するのは、シリーズ終盤での急激な改心を予想していたようだ。そして楽しみにしていたミレディーとの関係についてだけど、結局ミレディーは鉄仮面に鞍替えしてリシュリューは利用された末に裏切られ投獄されてしまった。この衝撃の展開、田中さんは予想していたのかなぁ。


さて最後を飾るのは、敵役にして本作随一のコメディーリリーフを演じた、この方のコメント。

叫び続けて脳震盪を起こしそうになりました


■ローシュフォール伯爵 千葉繁
僕は、ローシュフォールが、まったくの善人で、ただの人という所に興味を持っています。それに、どんな人にでも、たとえ仕える相手が悪人でも一生懸命さが好き。
過去は見たくないので、どのシーンが・・・みたいなのはありませんが、印象に残っているエピソードを言うと、亡霊の出てくる場面(18話「ダルタニャンのお葬式」)で絶叫し続けなければならなくて、脳震盪を起こしそうになったんです。あの時は本当に酸欠状態になってた(笑)。


プロフィール
昭和29年2月4日熊本県生まれ。『ハイスクール奇面組』零等。所属/プロダクションエム・スリー

コメント内の「亡霊の出てくる場面」とは18話ではなく11話「折れた剣」と思われる。この回はローシュフォールとジュサックが必死に逃げながら丁々発止のやり取りをするというコミカル回。他の作品でも「アフレコで叫び過ぎて酸欠になった」という武勇伝を数多持つ千葉さんならではの、ハイテンションな演技を披露してくれました。
またローシュフォールについて「善人」で「一生懸命」と評しているのは興味深い。リシュリューが投獄された時は救出に乗り込んだり、シリーズ終盤にはダルタニャンたちと共に戦ったり。立場を変えながらも全編に渡って活躍することを確信していたようなコメントです。


以上、5回に渡って『別冊アニメディア PART1』に掲載されたキャスト陣のコメントを紹介してみました。どれもファンにとっては興味深い発言ばかりです。
それ故にテレビシリーズ終了後の、作品を振り返ってのコメントが収録されるはずだったであろう『PART2』が発売されなかったことが、返す返すも残念でなりません。最終回まで演じ終えて、キャラクターの印象は変わったのでしょうか。そして、シリーズ後半に登場して圧倒的な存在感を発揮した鉄仮面とマンソン。その2人を演じた笹岡繁蔵さん(1998年に逝去)と村松康雄さんは、どんな感想を抱いたのでしょうか。


アニメ三銃士』のファンとしては、出演した全てのキャスト陣の胸に、本作の事が良き思い出として残り続けていることを願ってやみません。