アニメ三銃士

48話:海上の大要塞

(放送日:1989年1月20日 / 演出:水谷貴哉 / 作画監督:鶴田完)

■Story■
鉄仮面一味がパリから逃亡して3週間。一味はベル・イール・アン・メール島に要塞を築き、立て篭もっていることが判明した。国王ルイはトレビル隊長の提案を受け、三銃士に島への潜入とフィリップ王子救出の任務を命じる。


ダルタニャンはジャンを救出した時の怪我が治っておらず、コンスタンスの看病を受けていた。そこへ三銃士が訪れ、ベル・イール島へ向かうことを伝える。するとダルタニャンは大慌てで、実は怪我が完治していることを明かす。かくしてダルタニャンも、三銃士と共にベル・イール島へ向かう。


その頃、ベル・イール島の鉄仮面一味はフィリップに王位を名乗らせ、イギリスやスペインの協力を得ようと企んでいた。またミレディーの提案で、遅れていた要塞の砲台工事をパリの象に手伝わせることになり、かつて象使いに飼われていたペペに手紙と手付の金貨を託してパリへと送る。


ダルタニャンと三銃士は小船でベル・イール島へと潜入して、断崖を登って要塞の入口を探す。やがて見張りの焚火を手掛かりに入り口を見つけ、アトスとアラミスは先行して要塞へ潜入。ダルタニャンとポルトスは見張りに見つかるも仲間を装って近づき、入口を聞き出すと共に手下の服を奪う。


アトスとアラミスは砲台の工事現場で待ち伏せしていた手下たちと剣を交えるが、投げ網で捕まってしまう。
手下に扮して潜入したダルタニャンとポルトスは、アトスとアラミスが捕まり連行される様子を、そして要塞内の塔に幽閉されているフィリップ王子の姿を見つける。


一方、パリではジャンとコンスタンスが、ペペが象使いの元に現れたのを見かける。そして、ミレディーの企みを探るべう象の後を追う。しかし、セーヌ川の船着場で水夫に騙されて船に閉じ込められ、象と共に連れ去られてしまう。




■Explanation■
前話の衝撃的なラストから、ダルタニャンの身を案じていた視聴者の皆さん。ご安心下さい。我らが主人公は、あっさりと回復していました。しかもコンスタンスに看病されたいがために、わざと治らないフリをしていたとは。その容態をトレビル隊長やリシュリューまでも案じていたのだから、何ともだらしない。


そこからは一転。ダルタニャンと三銃士が闇夜に紛れてベル・イール島に潜入する、緊張感あふれるシチュエーション。ダルタニャンが先陣を切って崖登りに挑むのは、汚名返上の思いがあったのかも。
そんな中にもコミカルなシーンがチラホラ。特にポルトスは崖登りで苦労したり、肉の焼ける匂いを嗅ぎ付けたり、ダルタニャンと一緒になって見張りの手下を騙したり。この辺は手下のマヌケぶりも相まって、何とも笑える迷シーンだ。
鉄仮面編でもそうだったけど、ダルタニャンたち4人をコンビ分けすると、ダルタニャンとポルトスが「コミカル組」で、アトスとアラミスが「シリアス組」になるんだろうな。


シリーズ最終盤になったところで、再び象は登場したのは、最初から観ていたファンには嬉しいところ。
ご存じのようにダルタニャンがパリに出て来る、つまりは『アニメ三銃士』が始まる切っ掛けになった存在であり。鉄仮面編では「寂れたパリの象徴」として痩せ衰えた姿を晒していた(35話)。この時点では元通りパリで人気を博していたみたいだけど、象使いが報酬に目が眩んだせいで鉄仮面一味の元へ向かうことになる。
それにしても、ミレディーの最も忠実な手下(仲間)として多くの見せ場を作っていたペペが、元は象のオーナー(象使いとは別人)のペットだったなんて、すっかり忘れていたなぁ。


そして、パリに残される形となったジャンとコンスタンス。このままお留守番かと思いきや、偶然にもペペと象使いを目撃したことで。さらには象の行く先を訪ねた水夫がコンスタンスを人買いに売ろうと企んだ悪党だったため、図らずも最終決戦の舞台であるベル・イール島へと向かうことになる。


■Dialogue/Monologue■

ダルタニャン「ごめんコンスタンス、実は君に看病されていたくって・・・・・・本当は婆ちゃんの傷薬のお陰で、もう何とも無いんだ。ホレ、ホレ!」

パリから逃げたとは言え鉄仮面一味が健在だというのに、我らが主人公であるダルタニャンは何とも自覚の無い有様。
ベル・イール島への出発前にトレビル隊長からキツく説教を喰らったに違いない。

ダルタニャン「任せてくれ、木登りや岩登りはガスコーニュにいた頃から誰にも負けたことがないんだ」

こちらは一転、ベル・イール島に潜入するや、先頭を切って断崖をよじ登るダルタニャンの言葉。
何とも頼もしいけれど、登った後で崖下を覗いてゾッとしてしまうのはご愛嬌。

ポルトス「こんなに自分の体が重いとは知らなかった」
アラミス「これからは食事の量を減らすのだな」

ダルタニャン・アトス・アラミスにロープを引っ張ってもらい、ようやく崖を登れたポルトスの言葉。
ルーブル宮殿に潜入した時(44話)も窓枠にハマったり、ロープで引っ張られていたけど。ポルトスにとってはお約束のようなシーンだ。
あと「食事を減らせ」というアラミスのアドバイスも、以下のシーンを見た限り無理そう。

ポルトス「思ったとおりだ。見ろ、俺様の鼻に間違いは無い。美味しそうに肉が焼けてるじゃないか」
アラミス「俺たちが探しているのは城の入口だ。食い物じゃないぞ」
ポルトス「ここで見張りが焚き火をしているということは、近くに入口があるからさ」

自慢の(?)鼻で食い物の匂いを嗅ぎ付け、ついでに入口の匂いも嗅ぎ付けるポルトス。食い物にありつこうとした理屈かと思いきや、かなり真面目に考えているのかも。
もっとも、この後は肉を盗み食いしようとしてアトスやアラミスに置いて行かれるんだけど。

ダルタニャン「おい!大事な見張りの最中に肉など食ってていいのか!お頭に知らせるぞ!」
手下「それは困る!・・・・・・見逃してくれ、肉を半分やるから」
ポルトス「よし、そうこなくちゃ!」

見張りに見つかるも怯むどころか、弱みにつけ込んで、咄嗟に仲間のフリをしてしまう。この機転や胆力……というか図太さこそダルタニャンの真骨頂だ。

手下「ところで、アンタたち見かけない顔だが、いつからここにいるんだ?」
ポルトス「いつからって・・・・・・なぁ」
ダルタニャン「さっきからだよ」
手下「えっ?」
(肉の串を突きつけて)
ポルトス「静かにしろ!騒ぐと命が無いぞ!」
ダルタニャン「さぁ、正直に言ってもらおうか!フィリップ王子はどこにいる!」
手下「……あ、あそこの塔の中です…」

手下とダルタニャン&ポルトスの、コミカルから一気に緊迫感が現れる会話。
侵入者を仲間と勘違いした上に、脅されてあっさりフィリップ王子の居場所を白状してしまうとは。とても鉄仮面の手下とは思えないマヌケぶりだ。

コンスタンス「私達をどうするつもりかしら」
ジャン「分かんないよ。でも、心配しないでよ。コンスタンスのことは、おいらが命に代えて守ってやるからさ」
コンスタンス「まぁ、ジャンったら…………ダルタニャン……」
ジャン「…はぁ…」

騙されて船に閉じ込められた2人の会話。ジャンにしてみたら「今こそダルタニャンの代わりに」と意気込んでのセリフだろうけど、当のコンスタンスはそんな想いなど露知らず。不安を抑えるように、想い人の名前を呟いていた。


■Next Episode ~次回予告~■

鉄仮面「アトスとアラミスを直ちに処刑してしまえ!」
ミレディー「お待ち下さい。ポルトスとダルタニャンも近くに潜んでいるはずです」
鉄仮面「うむ」
ミレディー「この2人を囮にして、ダルタニャンたちを誘い出し」
鉄仮面「一網打尽、皆殺しというワケか」
ミレディー「はい」
鉄仮面「次回『アニメ三銃士』《とらわれの銃士たち》」
ミレディー「最初に消えるのは、三銃士の中の誰かしら。オホホホホ」

鉄仮面とミレディーによる予告。ミレディーが鉄仮面に対して「お待ち下さい」と敬語を使っているのも珍しい。
国王すり替えを阻止された上、要塞にまで乗り込まれて怒り心頭なのか。鉄仮面は捕らえたアトスとアラミスを殺すよう命じる。対してミレディーは2人を囮にダルタニャンとポルトスも殺そうとするが…。
捕らえた主人公(や、その仲間)を生かしておくのは負けフラグということを、鉄仮面もミレディーも知る由も無い。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
フランス・ロワール地方の6回目。前々回・前回に続きシュノンソー城の紹介。
シュノンソー城の歴史は古い城塞に始まると説明され、映像では16世紀に造られたルネッサンス風の城館や、城塞の名残を残す円塔「マルケの塔」。そしてフランス国王アンリ2世をめぐる2人の女性、ディアーヌ・ド・ポワチェとカトリーヌ・ド・メディシスの名が付けられた庭園も紹介している。


(記:2014年8月12日/追記:2020年05月04日)