アニメ三銃士

38話:消えた仕立て屋の謎

(放送日:1988年10月7日 / 演出:高本宣弘 / 作画監督山本哲也

■Story■
ダルタニャンはアトスからの呼出状で銃士隊舎を訪れ、三銃士と話し合う。ボナシューが鉄仮面に攫われた件と、マンソンが国王の園遊会衣装を調べていた件を合わせて、鉄仮面が国王に化けて園遊会に忍び込むと推測する。
そこで三銃士は仕立屋ベルスランを尋ね、さらにマンソンの元を訪れる。しかしマンソンは、国王の衣装を調べていたのは、パリ一の絵師ルブランに国王の肖像画を描かせていたためだと言い、鉄仮面とは無関係だと言い張る。


一方、鉄仮面とミレディーは攫ってきたボナシューに、マンソンが調べてきた衣装を作るよう脅される。しかしボナシューは、その衣装が国王の衣装だと気付き、鉄仮面の脅しやミレディーの催眠術にも屈せず拒否する。
そこでミレディーは深夜にボナシュー宅に忍び込み、コンスタンスの衣装箱から服とハンカチを盗む。さらに、その服を着せた人形とハンカチをボナシューに見せ、コンスタンスを攫ってきたように思わせる。
そしてボナシューは、やむなく国王の衣装を作ることになる。


翌日、ダルタニャンはボナシューのハンカチを愛馬ロシナンテに嗅がせて、ボナシューの居場所を探し始める。やがて町外れの屋敷に辿り着き、そこへマンソンを乗せた馬車が入るのを目撃する。
ダルタニャンと駆け付けたアラミスはマンソンに案内をさせ、邸内の全部屋を捜索する。しかし、マンソンは邸内の仕掛け部屋にボナシューを監禁し、その部屋をミレディーの指示で上下させて隠し通す。
結局、ダルタニャンとアラミスはボナシューを見つけられず、屋敷を後にする。


そこに小船に乗った鉄仮面が現れる。2人も小船に飛び乗って鉄仮面と対峙するが、ミレディーが橋の上から拳銃で狙撃。その隙に鉄仮面もミレディーも逃げ去ってしまう。


ダルタニャンはかつてミレディーを処刑せず見逃したことをアラミスとポルトスにも打ち明ける。謝るダルタニャンを2人とも許し、鉄仮面逮捕への思いを新たにした。


■Explanation■
前回ラストで鉄仮面に攫われたボナシューだったが、過去にもリシュリューロシュフォール相手に屈しなかっただけに度胸が座り過ぎている。ましてや鉄仮面は家財を奪った仇だけに、意地でも屈しない。
しかし唯一残された、そして何より大事な娘であるコンスタンスを人質に取られた(と騙されて)、やむなく衣装を作ることになる。


一方の鉄仮面。所詮は街の仕立屋、脅せば言い成りになると踏んでいたボナシューに反発され、逆上して殺そうとしてしまう。登場当初の大胆かつ冷徹な振舞いは鳴りを潜め、「義賊」としての仮面もすっかり剥がれていた。
対してマンソンは相変わらずの狸ぶり。三銃士の尋問にも、必要以上に慇懃な態度で誤魔化す。ボナシューを監禁した屋敷に踏み込まれても、慌てるどころか「仕掛け」を試す機会にしてしまう。自分の正体を殆ど気付かれている相手に対しても、決定的なボロを出さずに渡り合うのは悪役ながら見事。
さらにミレディーも、ボナシュー宅に忍び込むシーンではコウモリを操ってダルタニャンに挑む。これまでヘビやカラスやカモメと様々な動物を操ってきたミレディーだけど、コウモリを操る姿はまさに「魔女」でミレディーに相応しい。


サブタイトルである「消えた仕立屋の謎」こと、部屋を上下させる謎の仕掛け。監禁されているボナシューを、見つけられそうで見つけられない。視聴者目線ではもどかしいシーン。
この仕掛けもまた、「園遊会場の改装」や「国王の衣装」と同様に、後の陰謀への伏線となる。


そして終盤。ミレディーが鉄仮面を助けに現れたことで、アラミスとポストスもミレディーが生きていたことを知ることになる。この件はダルタニャンにとって長い間抱えていた秘密であり、ミレディーが鉄仮面の仲間として現れてからは、罪悪感となって責め苛んでいた。その秘密も、まずはアトス(とコンスタンス)に、次いでアラミスとポルトスに、順を追うように明かされていった。
ラストシーンは久々に「ひとりはみんなのために」。以前のダルタニャンは「そんな気分にはなれない」と断ったが、今回は三銃士への隠し事が無くなったことを喜ぶ様にポーズを決める。


一方、これまで起こしてきた諸々の事件を収束するように。鉄仮面一味の秘密も明かされようとしていた。


■Dialogue/Monologue■

ダルタニャン「この控え室も、ちっとも変わってないな」
アラミス「何だ、10年ぶりに会ったような事を言うじゃないか」
ダルタニャン「どうしたんだろ、涙が出て来るよ。やっぱり銃士隊は良いな」

アトスの呼び出し状のお陰で銃士隊舎を訪れることができたダルタニャン。除隊から日は経っていないはずなのに、感極まって発したのがこの言葉。
銃士隊への思いの強さが表れている。

ボナシュー「私とて元は王宮出入りの仕立屋だ。これは只の服ではない。国王陛下の服だ。どうせ良からぬ企みに違いない。そんなことの手伝いは私にはできん!」
ボナシュー「私はお前のために家も財産も無くしてしまったんだ!もう失う物は何も無い!どうした!殺すなら殺せ!」

家財を奪った仇への恨みからか、あるいは仕立て屋としての矜持からか。ミレディーの催眠術にも鉄仮面の脅しにも屈しないボナシューの叫び。
その凄まじさには鉄仮面も冷静さを失い、感情に任せて殺しそうになる程だった。

コンスタンス「レディの衣装箱を引っかき回したりして、最低ね!」

何者か(ミレディー)に服とハンカチを盗まれて、お怒りなコンスタンス。父親が攫われて大変な時なのに、どこかコミカルさを感じる怒り様だ。

マンソン「ハハハ、慌てなくても部屋は逃げませんぞ」

ダルタニャンとアラミスを案内しながら、何気に種明かしをする言葉。
これも仕掛けがバレないと絶対の自信を持っているからか。

アトス「ミレディーは鉄仮面の仲間たちと一緒に捕まえればいい。そうなれば、ミレディーを手先に使っていたリシュリューも責任を問われることになる」
アラミス「あのリシュリューを追放する、よい切っ掛けになるかもしれないな」
ポルトス「そうなれば、ミレディーを生かしておいて良かったということになる」

ダルタニャンがミレディーを見逃していたことを知っての、三銃士の言葉。リシュリュー追放云々というのは本心だったのか。それともダルタニャンを励ます方便だったのか。
ともあれ、秘密と罪悪感を抱えて悶々としていたダルタニャンにとっては、何よりの救いになったはず。


■Next Episode ~次回予告~■

マンソン「全てが思い通りに進んでいるようだな、ミレディー」
ミレディー「えぇ。あのダルタニャンも、三銃士の連中も、今度ばかりは手も足も出ないようですわ」
マンソン「その上、我々にはとっておきの切り札があるからな」
ミレディー「しーっ!その事は絶対に秘密ですわよ」
マンソン「うーん。次回『アニメ三銃士』《二人の鉄仮面》」
ミレディー「このフランスはもうすぐ私達のモノ。オホホホホホ!」

敵側であるマンソンとミレディーによる予告。
マンソンは本編では自身の正体だけでなく、屋敷の仕掛けでボナシューを隠し通し、まさに「思い通り」。その自信たるや、思わず「切り札」の存在を口にして、ミレディーが慌てて口止めするほど。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
パリ東南の広い森中にあるフォンテンブロー宮を紹介。この館でルイ13世は誕生したという。
映像では正面玄関の中央玄関にある馬のひづめ型の階段「白馬の前庭」などを紹介。そして「フォンテンブロー」という名の由来を、ここに清い泉(フォンテン)が噴き出していて、土地の持ち主が「ブロー」と言ったためと解説している…ホントかな。
また、フランスの宮殿や館は、貴族の狩りの足場として造られた別荘が次第に大きくなったものが多いとも解説されている。


(記:2013年4月30日/追記:2020年04月29日)