アニメ三銃士

37話:名探偵ダルタニャン

(放送日:1988年9月30日 / 演出:早川啓二 / 作画監督佐藤真人

■Story■
ボナシューの元に仕立屋仲間のベルスランがやって来た。「体に触れずに服を採寸して欲しい」というお客がいて、それが出来るボナシューに手伝って欲しいというのだ。そのお客がマンソンだと知り、ダルタニャンもベルスランの店に同行する。


ベルスランの店の前には大勢の客が行列を成しており、中にはポルトスの姿もあった。ポルトスはダルタニャンに、自分を優先的に応対してくれるよう伝言を頼む。しかし、ベスルランは多忙の上に国王の衣装も仕立てていたため、あえなく断られてしまう。
そこにマンソンが服の注文に訪れる。順番待ちをしていたポルトスはマンソンと口論となり、マンソンの従者とも揉み合いになるが、ダルタニャンの取り成しで引き下がる。


マンソンは体に触れられたくない理由を「落馬して肩を痛めたから」と語るが、ボナシューが探るように肩を触ると激怒してしまう。さらに自分の採寸が終わると、ベルスランに金を握らせ国王の園遊会衣装を見せてもらい、密かに従者にスケッチさせていた。
そんなマンソンの行動に、ダルタニャンは不信感を抱き始める。また、ボナシューはマンソンの肩に大きなコブがあったことに気付き、同様の特徴を持った「ラクダ」という盗賊のことを話した。


ダルタニャンは銃士隊舎に行き、ベルスランの店での事を三銃士に話す。そして「ラクダ」の話を聞いた途端、アラミスは声を荒げ、直後に何かを隠すように黙ってしまう。
その後、トレビル隊長によってダルタニャンは追い出されてしまい、三銃士もダルタニャンに頼らないよう叱責される。


一方、マンソンはリシュリューの元を訪れ、園遊会場となるリシュリューの別荘の改装を申し出る。リシュリューは快諾し、さらに自分の部下としてミレディーを紹介する。マンソンとミレディーは初対面を装い挨拶を交わす。


その頃、鉄仮面一味がボナシュー宅を襲撃し、コンスタンスやジャンの抵抗を振り切ってボナシューを連れ去ってしまう。


■Explanation■
サブタイトルが示す様に、「銃士じゃないなら探偵だ!」とダルタニャンがマンソンの正体を探る話。もっとも、今回のメインはボナシューだったりする。


マンソンを探るべく、ボナシューと共に仕立屋ベルスランの店に行くダルタニャン。前回の自棄気味な言動から一変、マンソンと対峙しても取り乱さず、嫌味な事を言われても余裕を持って言い返す。珍しく(?)大人びて冷静なダルタニャンの姿が描かれる。
逆にポルトスはベルスランの店の大行列に並び、さらにはダルタニャンを介して割り込みを目論み、マンソンやその従者と揉め事を起こすなど、とても褒められない姿を見せる。マンソンじゃないけど、「そんな暇があったら鉄仮面を探せ」と突っ込みたくなる。


一方、今回も怪しさを隠そうとしないマンソン。ダルタニャンやポルトスに嫌味を言うのみならず、採寸時に体に触れさせない、ベルスランを買収して国王の衣装を探るなど、不審な言動を見せる。
ところで、連れていたマントにアゴ髭の従者は何者なんだろうか。ポルトスを力尽くで押し返して一撃を入れたり、マントの下で国王の衣装を素早くスケッチしたり、地味ながらも活躍している。この後も度々登場するので鉄仮面一味の幹部と思われるんだけど、名前などは不明(声優はロシュフォール役・千葉繁さんが兼任のためクレジット無し)。


マンソンはすっかりリシュリューの信頼を得たらしく、園遊会場の改装も任され、さらに「信頼する部下」としてミレディーも紹介される。視聴者目線では、マンソンとミレディーが鉄仮面一味の仲間であることを知っているだけに、初対面を装って挨拶する二人の様子は滑稽だ。そして、騙されているとも知らないリシュリューの姿も。


そして、今回の主役とも言えるのがボナシュー。ダルタニャンたちに協力するようにマンソンの体(肩)を探り、そこから連想した「ラクダ」という盗賊の事を話す。本人にとっては「参考になるか分からないけど」という感じだったけど、これが重要なヒントとなる。
特に「ラクダ」という名前に尋常ならざる反応をしたアラミスにとって。


しかし「主人公より早く"真相"に近づいたサブキャラは消される」という推理モノの定番の如く、ボナシューは押しかけた鉄仮面一味に拉致されてしまう。前回は女優ナナから預かった宝石入り衣装を狙われて、今回は仕立屋としての腕自体を狙われて、図らずも「優れた仕立屋」であるが故に鉄仮面の被害を受けてしまった。
コンスタンスやジャンを押し退け、力尽くでボナシューを馬車に押し込み連れ去る鉄仮面。その姿はかつてコレットの危機を救い、ジャンから感謝の言葉を送られた「義賊」とはかけ離れた、恐ろしく凶悪なモノだった。


■Dialogue/Monologue■

コンスタンス「セーヌへ落ちたの?まさか身投げを」
ダルタニャン「どうして僕が身投げをしなきゃいけないんだ?」
コンスタンス「銃士隊を辞めさせられて、ガッカリして」
ダルタニャン「そんな事でへこたれるもんか!見ていろ!鉄仮面をこの手で捕まえてやるさ!」

前話ラストでセーヌ河に落ちたせいで風邪気味なダルタニャンと、彼を気遣うコンスタンス。
ダルタニャンは身投げをしないまでも、自棄になってロシナンテを暴走させた末にマンソン邸に特攻しようとしてました。

ポルトス「ベルスランに会ったら、なるべく早くするよう言ってくれないか?」
ダルタニャン「分かった」
ポルトス「やはり、持つべき物は友ですな」

ベルスランの店の前で待たされ、少しでも早く応対して欲しいポルトスの言葉。
こんな調子のいい事を言ってるけど…。

マンソン「パリの善良な市民を代表して言うが、服を作るために行列する暇があったら、鉄仮面を捕らえるのに力をお入れになったらいかがかな」

マンソンが言うと嫌味臭いけど、上記のように割り込みして服を作って貰おうとしているポルトスには丁度良い言葉かも。

マンソン「そうか、お前は銃士をクビになったのだな。それで今は仕立屋の見習いか。そいつは面白い」
ダルタニャン「今にもっと面白いことになりそうですよ」

ポルトスに続いて、ダルタニャンにも嫌味を吐いて挑発するマンソン。対するダルタニャンは怒るどころか、珍しく不敵な笑みと言葉で切り返す。

マンソン「陛下より上等な服を着て行ったら無礼になるからな。参考のために見ておきたいのだ。…タダでとは言わぬ」

国王の園遊会用衣装を見たいと言うマンソン。その理由を語る口調は礼儀正しく、しかし手ではベルスランに金を握らせる。マンソンの狡猾さが現れたシーン。

アラミス「何っ!ラクダだって!」
アトス「アラミス、どうかしたのか?」
アラミス「あっ、いや、何でもない」

ダルタニャンから「ラクダ」という盗賊の名前を聞いたアラミスの反応は、とても「何でもない」とは思えないものだった。
まるで「仇」の名前を聞いた時のような…。

トレビル「私はもう、お前に隊長と呼ばれる覚えは無い。もうお前は銃士でも、銃士見習いでもない。勝手に入ってくるな!」
トレビル「お前たちはダルタニャンがいなければ何も出来ないのか!我々が捕らえなければならないのはマンソンではない。鉄仮面なのだ!分かっているのだろうな!」

銃士隊舎にて話し合っているダルタニャンと三銃士を叱責する言葉。
前回といい今回といい、トレビル隊長の頑固者ぶりが著しい。少しは首飾り編の時のように、少しは理解する様子があってもいいんだけど。

ダルタニャン「絶対にここに戻ってくるからなぁーっ!待っててくれーっ!」

銃士隊舎の前にて、銃士隊への復帰を近い叫ぶダルタニャンでした。


■Next Episode ~次回予告~■

ポルトス「ボナシューがさらわれたって!」
アトス「うむ、ダルタニャンの留守を狙われたようだ」
アラミス「鉄仮面の狙いは何なのだ!」
ポルトス「奴のやる事はワケが分からん!」
アトス「マンソン、そしてマスクの女。何かが我々の見えない所で、密かに動いているようだ!」
アラミス「あぁ、恐ろしい事が起こるような気がしてならん!」
ポルトス「次回『アニメ三銃士』」
アトス「《消えた仕立屋の謎》」
アラミス「諸君、また会おう」

お馴染み三銃士による予告。
神出鬼没な上に塩を盗んだり市民にカネをばら撒いたりボナシューをさらったり、謎だらけな鉄仮面の行動に頭を悩ませている。
ところで、アトスが口にした「マスクの女」だけど、アトス自身はもう正体に気づいているのでは…。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
パリの象徴であるド・ゴール広場の凱旋門と、それを造ったナポレオンゆかりの地を紹介。
凱旋門はナポレオンがローマの門を手本にして造らせ、ダイナミックな群像彫刻やの浮彫りで飾られていると解説。
また映像では、ナポレオンが妻ジョセフィーヌと過ごしたというパリ西郊の「マルメゾンの館」、エルバ島への流刑に出発する時に悲壮な告別の辞を述べた「フォンテンブローの広場」、ナポレオンの死後(1840年)に遺体が安置された「アンヴァリッド」を紹介。


(記:2013年4月16日/追記:2020年04月29日)