アニメ三銃士

36話:鉄仮面の挑戦

(放送日:1988年9月9日 / 演出:アミノテツロー / 作画監督:杉山東夜美)

■Story■
謹慎処分を受けた上、鉄仮面に逃げられたダルタニャンは、不機嫌になり食事も取らずにいた。ジャンやコレットが声を掛けても、聞き入れずに怒鳴ってしまう。


その頃、鉄仮面を捕まえられずに苛立つリシュリューの元に、死んだと思われていたミレディーが現れる。
ミレディーは鉄仮面を逮捕する策として、園遊会を催して鉄仮面を誘き出すことを提案。リシュリューもそれを採用する。


一方、マンソン邸で事件を起こしたダルタニャンに対し、トレビル隊長は謹慎処分で済まそうとするも、リシュリューの強硬な主張により銃士隊追放の処分が下った。
三銃士が呼び出しに訪れた事で許されたと思ったダルタニャンだったが、トレビルから追放処分を言い渡され、三銃士の励ましの言葉も効かないほど落ち込んでしまう。
そして自棄気味にロシナンテを街中で暴走させた末に、マンソン邸に突っ込もうとする。


その時、鉄仮面がポン=ヌフ橋に現れた。鉄仮面は国王やリシュリューを糾弾する演説を行い、さらに園遊会の襲撃を宣言した。
ロシュフォール率いる護衛隊が現れるも、鉄仮面や市民たちにより次々と河に落とされる。
そこへダルタニャンが駆けつけ、再び鉄仮面と対決。一度は追い詰めるものの、またも取り逃がしてしまう。


■Explanation■
冒頭は部屋の隅でヘソを曲げて座り込んでいるダルタニャン。前回ラストのシリアスな雰囲気から一転して、どこかコミカルな雰囲気だ。ジャンやコレットも、前回では鉄仮面の肩を持っておきながら、何事も無かったようにダルタニャンを気遣っている。そりゃダルタニャンも怒鳴りたくなるな(笑)。


リシュリューの元を訪れるミレディー。ミレディーは処刑された(ダルタニャン談)と思っていたリシュリューは驚きを隠せない。侍従から耳打ちされ、窓を開けたところに使い猿のぺぺが現れ、そして中庭を見るとミレディーと思しき姿が(日傘ではっきりと見えない)。まるで幽霊か幻覚が現れたかのような演出が印象的。


謹慎処分から許されたかと思いきや、除隊処分となったダルタニャン。トレビルも最初は謹慎で済まそうと思っていたけど、国王の許可を得ようとした場にリシュリューがいた間の悪さもあり、厳罰を下さざるを得なくなった。
…その割に、ダルタニャンに除隊を告げた後のフォローが殆ど無い(「パリ追放を免除しただけ有り難いと思え」くらい)。トレビル隊長はしばらく「融通の利かないお偉いさん」という描かれ方が続く。


除隊を告げられたダルタニャンが三銃士の励ましにも耳を貸さず、ロシナンテに跨りパリの街を暴走するシーン。これは自暴自棄どころか狂気に近い。やがて偶然か必然かマンソン邸の前に辿り着く。
そのまま返り討ち覚悟で殴り込みか…と思いきや、運良く(?)鉄仮面が出現したことで我に返る。


ハイライトである鉄仮面との対決シーン。鉄仮面はすっかり救世主気取りで演説して市民を煽り、駆け付けた護衛隊士を素手であしらって河に投げ飛ばす。市民たちもそれに感化されたのか、ロシュフォールを担いで投げ飛ばす。
そこへ現れたダルタニャン。鉄仮面も護衛隊士相手には抜かなかった剣を抜き応戦する。
ここ数話で溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように、ダルタニャンが見事なアクションを見せる。鉄仮面の剣を避け顔面に蹴りを入れたり、橋の淵へ登って鉄仮面の剣を弾き落としたり。ついに追い詰めたと思ったら、ロシュフォールの妨害を受けた隙に河に落とされてしまう。
最後のナレーションでも語られているように、何ともツイていないダルタニャンでした。


■Dialogue/Monologue■

コレット「私が借金の代わりに連れて行かれなかったのは、ダルタニャンさんのおかげだって」
ダルタニャン「僕のおかげじゃない!借金を払ってやった、鉄仮面のおかげだ!」
(中略)
コレット「そんな怖い顔しないで、シチューを食べて機嫌を直してよ」
ダルタニャン「嫌だ!どうせ鉄仮面から貰った金で買ったんだろ!そんなモノ、食べられると思っているのか!」
(ダルタニャンの腹が鳴る)
コレット「お腹が鳴ってるじゃない。本当は食べたいんでしょ」

自分が助かった事を、無邪気に感謝するコレット
一方、鉄仮面の施しで作られた食事なんて喰えないと拒むダルタニャン。怒っていても、体は正直だ。

ポルトス「凄く張り切っているのに」
アラミス「銃士隊をクビになったと知ったら、どんなに悲しむだろう。可哀想に」
アトス「それを慰めるのが、友達としての務めた」

処分が軽いと早合点して大喜びのダルタニャンを見た、三銃士の言葉。
ダルタニャンが除隊処分となる事を知っていたアトスの言葉は重い。

ダルタニャン「すまないけど、とてもそんな気分にはなれないんだ…」

トレビル隊長から除隊処分を言い渡され、落ち込むダルタニャン。
三銃士の励ましの言葉も全く意味を為さなかった。

ダルタニャン「もう僕は銃士でも何でも無いんだ。隊長の命令に従わなくてもいい。自由なんだ。自由なパリの一市民として、マンソンをとっちめて、鉄仮面の居場所を白状させてやる」

自暴自棄になり、パリの街をロシナンテに跨り暴走するダルタニャン。気がつけば因縁の相手であるマンソンの館の前にいた。
ここでダルタニャンが口にした「自由」という言葉は「無法」とか「無秩序」に近い気がする。

鉄仮面「私はパリ市民諸君の前で宣言する!私も園遊会に出席し、居合わせた客たちから黄金や宝石を奪ってやるとな!やがてその黄金や宝石は金(カネ)に替わって、貧しい人々に配られるであろう!」
鉄仮面「市民諸君よ、よくやった!諸君の助けがあれば、フランスの夜明けももうすぐだ!」

ポン=ヌフ橋で市民に向けて演説をする鉄仮面。
後者はロシュフォールを河に投げ落とした市民に対して叫んだ言葉。
すっかり世直しをする救世主気分だ。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「ヘッ…ヘッ…ヘックション!うぅぅ、セーヌの水はまだ冷たいや」
ジャン「世間の風はもっと冷たいじゃん。銃士はクビになるし、鉄仮面は逃がしちゃうし。いいこと無いね」
ダルタニャン「こんなことでへこたれるモンか!俺は俺の道を行く!」
ジャン「行くってどこへ」
ダルタニャン「マンソンの正体を突き止めてやるぞ!」
ジャン「次回『アニメ三銃士』《名探偵ダルタニャン》」
ダルタニャン「みんな、また会おう!」

本編のラストでセーヌ川に落ちたせいで、予告では風邪気味なダルタニャン。ジャンにも「いいこと無いね」とあきれたような口調でダメ出しされる始末。
それでもダルタニャンは「俺の道を行く!」と、もはや自暴自棄にも似た意気込みを叫んでいる。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
ひまわり畑の映像をバックに、ルイ13世の銃士隊とリシュリューの護衛隊について紹介。
デュマの原作小説『三銃士』では、ルイ13世が身の回りを命しらずの銃士たちで固め、リシュリューも対抗して自身の銃士隊(護衛隊)を編成。2人は優秀な剣士を海外にまで手を伸ばしてスカウトしたり、表面上はケンカや決闘を禁じておきながら裏では奨励したと語られている。
しかし、実際に王の身辺を守っていたのはスイス人衛兵の役目だった。「王たちは裏切るかも知れぬフランス人より、利害関係の無い外国人を信用していたようである」と世知辛い解説で締めくくられている。


(記:2013年4月2日/追記:2020年04月24日)