アニメ三銃士

50話:象、海を渡る

(放送日:1989年2月3日 / 演出:高本宣弘 / 作画監督山本哲也

■Story■
ダルタニャンと三銃士は救出したフィリップと共に、小舟で海を渡っていた。その途中、ベル・イール島に向かい泳いでいる象を目撃する。さらに象が背負っている樽が海に落ち、中からジャンとコンスタンスが現れる。
それを見つけたダルタニャンたちは救出に向かうが、助ける寸前で大渦が発生。ジャンとコンスタンスは樽ごと大渦に巻き込まれてしまう。そして、ダルタニャンも2人を救うべく自ら大渦に飛び込む。


その頃、対岸には国王ルイ自ら率いるフランス軍が陣を張っていた。そこへ帰還した三銃士と共にフィリップが現れ、ルイと初めての対面を果たす。双子の兄弟であるルイとフィリップは互いを許し合い、共にフランスのために力を合わせることを誓い合う。


その頃、大渦に巻き込まれたダルタニャン・コンスタンス・ジャンは、ある洞窟に流れ着いていた。そこへ潜水艦に乗った鉄仮面たちの姿を見かけ、そこがベル・イール島の地下洞窟であると気づく。
ダルタニャンたちは要塞の様子を窺うが、大鷲に乗ったペペに見つかってしまう。ダルタニャンは囮となって砲台の鉄仮面一味に向かって行き、その隙にジャンとコンスタンスは崖下の岩場へと逃れる。しかし、ダルタニャンは大勢の手下相手に奮戦するも、大鷲が落とした石に当たり気絶。要塞の頂上に縛られてしまう。


夜が明けて、フランス軍の総攻撃が始まった。しかし、要塞の砲台は象によって完成していた。射程距離の長い大砲の攻撃により、ロシュフォールが率いるフランス軍の戦艦は苦戦を強いられる。
ダルタニャンは縛られているロープをたいまつで焼き切り、砲台へ単身切込みを掛ける。たいまつで火薬樽を爆発させて砲台の一角を破壊するが、鉄仮面一味の反撃により砲台から脱出。崖下の岩場に逃げ込み、ジャンやコンスタンスと合流する。
やがてフランス軍の艦隊は退却。島の裏手からは三銃士が率いる銃士隊が小舟で上陸を図るも、投石器の攻撃により退却を強いられる。


フランス軍の苦戦を目の当たりにしたダルタニャンだったが、やがてベル・イール島へ上陸する方法を思い付く。それをコンスタンスの持っていたハンカチに記し、コピーに託して対岸のフランス軍へと届けさせようとしていた。




■Explanation■
今回のサブタイトルにもなっている「象、海を渡る」。確かに巨体を誇る象が大海原を悠々と泳いでいる姿は異様だ。ましてや、その象が担いでいる樽が落ちて、中からパリにいるはずのジャンとコンスタンスが現れれるのだから、ダルタニャンたちの驚きは如何ほどだったか。


偶然と不運と、僅かばかりの幸運が幾重にも折り重なって再会を果たしたけれど、まだまだ不運は続く。突如発生した大渦にジャンとコンスタンスが、そしてダルタニャンが飲み込まれてしまう。そして、流れ着いた先がベル・イール島の地下洞窟だった。
この一連の展開は強引と言えば強引過ぎるけど。「非戦闘員」だけど作品には欠かせないジャンとコンスタンスを最終決戦に参加させるためだから、良しとしよう。
あと、陸に戻った三銃士はダルタニャンについて「渦に巻き込まれた」と国王たちへ簡潔に報告するだけで、特に悲しんだりする様子は描かれなかった。この後、ベル・イール島攻撃を描くため展開が駆け足になったせいだろうけど。せめて三銃士には「ダルタニャンは生きているはず」くらいは言って欲しかった。


図らずもベル・イール島へ再上陸したダルタニャンだけど、最初はジャンとコンスタンスを逃がすため、続いて脅威となっている砲台を潰すため、単身敵陣へと切り込んで行く。大勢の手下の剣を受け止めたり、要塞の壁面(ほぼ垂直)を駆け下りたり、火薬の樽にたいまつを投げ込んで大爆発させたりと、様々なアクションを見せてくれる。
更に言うと、縛られているロープを焼き切る時の熱さに耐える表情とか(砲撃を受けたフランス艦隊の「火を消せ!」というシーンが間にあるのも芸が細かい)、島の頂上から滑り落ちて小窓の屋根で股間を打ったり、緊張感を和らげるようにコミカルなシーンが挟まるのも面白い。
そして最後はベル・イール島を攻略するためのアイディアを思い付くという知恵者ぶり。三銃士と抜群のチームプレイを見せた前回から一転、今回はワンマン・アーミーな活躍を見せたダルタニャンでした。


本編終了後はこれまでと変わって、次回予告は視聴者イラストの紹介ではなく本編(51話)の映像。そしてフランスやイギリスの名所を紹介する『三銃士紀行』に変わり、イメージソングをバックにこれまでのストーリーを字幕で紹介。
こういう今まで慣れ親しんだ構成が変わったりすると、長いこと観続けていた『アニメ三銃士』も、もうすぐ終わってしまうんだなぁ。これからは作品がフィナーレに向かう、特別なモノなんだなぁ。そんなことを実感してしまう。


■Dialogue/Monologue■

ダルタニャン「一体どうしたんだ?」
ジャン「ミレディーの猿が象使いの所に来てたんだ。象の後を付けてったら変な男たちに捕まって、それで樽に……」

パリを遥か遠く離れたベル・イール島近くの海で、まさかの再会を果たしての会話。
ジャンの説明はアバウトすぎるけど、偶然や不幸が幾重にも折り重なった結果なのだから、まともに説明できないのも仕方ない。

アトス「あの渦を見ろ!巻き込まれたら一たまりも無い!我々の任務はフィリップ王子を無事に送り届けることだ!分かるな!」
ダルタニャン「あぁ、分かるさ。その任務は君たちに任せた!」

大渦に巻き込まれたジャンとコンスタンスを見捨てることは、アトスにとっても苦渋の決断だった。
それでもダルタニャンは2人を助けるため、大渦に身を投じる。

ルイ「フィリップ、よくぞ無事でいてくれたな」
フィリップ「陛下、この度は随分とご迷惑をおかけしました。お許し下さい」
ルイ「なに、許しを請うのは私だ。さぁ立ってくれフィリップ。知らなかったとはいえ、今までの事は許してくれ」
フィリップ「勿体無いお言葉です。これからは私も陛下とこのフランスのために尽くしたいと思います。何かお役に立てることが御座いましたら、何なりとお言いつけ下さい」
ルイ「フィリップ、堅苦しい言い方は止せ。これからはお互い、仲の良い兄弟として助け合っていこう」

初めて(まともな形で)対面と果たした、ルイとフィリップの会話。
それまでは悲哀を感じさせるセリフが多かったフィリップだったが、最後の登場シーンで交わしたのは兄弟との絆を確かめ合い、未来への希望に満ちた言葉だった。

ダルタニャン「ん……ここは?」
コンスタンス「天国?」
ジャン「こんなシケた天国があるかよ。おいらたち助かったんだよ」

大渦に巻き込まれて流れ着いた、見知らぬ洞窟で目覚めての会話。
ジャンの軽口も生きているからこそだから、「天国がどんな場所か知ってるのかよ」というツッコミは控えておこう。

ロシュフォール「馬鹿な、こんなに足の長い大砲があったのか!」

今回はフランス軍に檄を飛ばしたり戦艦を率いたりと、格好良い姿を見せたロシュフォールだけど。敵の大砲が予想以上の射程距離だったことから苦戦を強いられることに。

マンソン「死んだか?」
鉄仮面「分からん……しかし、恐らく」

要塞の壁(ほぼ垂直)を落下して茂みの中に消したダルタニャン。その安否についてマンソンと鉄仮面は、視聴者的には生存フラグにしか思えない会話を交わす。
当然、ダルタニャンは生きていました。

マンソン「後は外国の協力さえ取り付ければ・・・・・・」
ミレディー「そのことはご心配無く。フランスを狙っている国は幾らでも御座います」
鉄仮面「うむ、その混乱に乗じて、また一稼ぎさせてもらおうか!フハハハ!」

フランス艦隊を撃退して得意満面な三悪人の会話。フィリップを失って「フランス乗っ取り」という計画は潰えたかに思えたが、それでも諦めずに外国の協力を得てフランスと戦おうとする。
しかし、その目的が「混乱に乗じて荒稼ぎ」と言うのだから、そこには「世直し」や「義賊」といった大義名分は全く感じられない。

コンスタンス「とうとう、誰も島には上がれなかったのね」
ジャン「上がるつもりの無かったおいら達がここにいるってのにね」

前方のフランス艦隊も後方の銃士隊も、ベル・イール島への上陸は成らなかった。
図らずも上陸を果たしたジャンが愚痴をこぼすが、これがダルタニャンの名案を呼び起こすことに・・・・・・。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「アラミス、君は女だったのか!」
アラミス「ダルタニャン、女の私が何故男に成り済ましていたのか、そのワケを聞いてくれ」
ダルタニャン「そんな事より、傷の手当てが先だ!」
アラミス「いや、もし私がここで死んだら、私の代わりにフランソワの仇(かたき)を討って欲しい」
ダルタニャン「フランソワ?」
アラミス「私の、許嫁だった」
ダルタニャン「次回『アニメ三銃士』《アラミス、断崖の決闘》。
いよいよ決戦だ!みんな、また会おう!」

今回から視聴者イラストではなく次回の映像による予告。それもアラミスが女性だとダルタニャンが気付くシーンを、出し惜しみせずに紹介している。
ダルタニャンとアラミスによる掛け合いも、衝撃の事実に驚くダルタニャンと、亡きフランソワへの想いを語るアラミス。そして締めの「いよいよ決戦だ!」で否応なく盛り上がる。


■Illustration Special Part1 ~イラスト特集・その1~■
視聴者からのイラストを背景に、字幕で『アニメ三銃士』の登場人物やあらすじを紹介。
その中には「ダルタニャンはコンスタンスをひとめで好きになってしまった」というコミカルな一文も。また三銃士を「銃士隊のスター」、アラミスを「大きな秘密を持つ美剣士」、ローシュフォールを「リシュリューの忠臣・好敵手」と、ヒロイックな紹介をしている。
そして「ダルタニャンの剣と知恵、そして友情の冒険はつづく」と、最終回間近なのを惜しむかのような一文で締めくくられる。


(記:2014年9月21日/追記:2020年05月04日)