アニメ三銃士

Column11 語ろう!『アニメ三銃士』(山田栄子さん編)

アニメ三銃士』放送当時のアニメ情報誌や書籍などに掲載された、スタッフ・キャスト陣の貴重なコメントを紹介する企画の第2弾。
作品を代表する人気キャラ・アラミスを演じる山田栄子さんのコメントを紹介します。


今回も学研発行のアニメ情報誌『アニメディア』より、声優さんへのインタビュー企画「人気声優にがぶりより!」からの出典です。
掲載号は1988年3月号で、前回の松田辰也さん(同年5月号)に先立って紹介されるあたり、当時のアラミス人気が窺えます。また、この号は『アニメ三銃士』が始めて表紙を飾った、記念すべき号でもあります。

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 1

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アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 2

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インタビューは読者からの質問に答える形式で、収録日は『アニメ三銃士』18話(1988年3月18日放送:ダルタニャンのお葬式)のアフレコがあり、アラミスを思わせるズボン姿で台本を持ちアフレコに臨む山田さんのお姿も掲載されていました。
話題の方は、アラミスはもちろん、デビュー作である『赤毛のアン』について。またプライベートについてまで多岐に及んでいます。

●声優になったきっかけは
「芸協」という劇団に入っていたのだけれど、その「芸協」がそっくり「オフィス央」という事務所に入って、その時オマケで入れてもらったの。
で、『赤毛のアン』のオーディションにたまたま受かっちゃって、それから

元々は劇団で活動されていたけど、所属事務所の縁で声優業を、それも名作劇場の主人公という大役からスタートさせた山田さん。
ちなみに「オフィス央」は、声優のたてかべ和也さんが主宰していた事務所で、後に「ぷろだくしょんバオバブ」に吸収されたという。(インタビュー時の山田さんは青二プロダクション所属)

●今まで演じてきた中で印象に残っているキャラは
やっぱり、アン。好きなんです。性格が面白いですよね。演じていくうちに自分でもすっかりその気になって、自分流のアンになっちゃった。
だから「あのアンは嫌いだ」っていう人も結構いましたよ。それぞれ自分のアンのイメージってのがあるからでしょうね。特に女の子は。
愛の若草物語』のジョオも好きです。サッパリしてて、自分の考えのとおり生きている。
みんなは私と似てるっていうけれど、自分では全然似てないと思う。私はもっと煮え切らない性格なんですよね。

やはりデビュー作にして代表作である『赤毛のアン』(1979年)を印象的と語る山田さん。放映当時、既に児童文学として人気だっただけに、視聴者からは厳しい声も少なからずあったらしいけど。それでも「自分流のアン」で演じられたのは良い思い出になっているという。
愛の若草物語』はインタビュー前年(1987年)に放送された名作劇場作品。1993年には原作(『若草物語』)の続編をアニメ化した『若草物語 ナンとジョー先生』でも、成長して教師となったジョオを演じている。
他にも名作劇場作品では『アルプス物語 わたしのアンネット』(1983年)、『小公女セーラ』(1985年)、『私のあしながおじさん』(1990年)、『トラップ一家物語』(1991年)でレギュラー出演。地上波におけるシリーズ最終作品の『家なき子レミ』(1996年)では、主人公レミが探し求めていた母親のミリガン婦人を演じ、シリーズ有終の美を飾っている。

●アラミス役はどうですか?
アラミスは実は女性なんだけれど、それを隠して男装しているという設定。
オーディションの時に、その野太い声で、女ってわからないようにやって欲しいと言われ、かなり自分としては低い声でやってるんですよ。
ただ、ヘタすると宝塚になっちゃう。ちょっと難しいなあ、でも楽しい!

ここからは『アニメ三銃士』についてのコメント。「野太い声」で演じているというアラミスは成人男性のフリをしている女性ということで、多くの少年キャラを演じている山田さんにとっても難しいキャラだという。
でも、それ故に演じる楽しさも満喫しているようで何より。

●『三銃士』のお話そのものは好きですか?
7年前かな?アニメ『ワンワン三銃士』っていうのがあって、それでアンヌ王妃をやってたんです、どーいうわけか。
その時にいちおう原作を読んだんだけど、これが面白い!アニメみたいに短くしちゃうのがもったいないなんて思ったりして。

ワンワン三銃士』は1981年10月〜1982年3月に放送された、言わば『アニメ三銃士』の先輩格。その名の通りキャラクターが擬人化された犬というユニークな作品でした。
山田さんがアンヌ王妃を演じていた他にも、『アニメ三銃士』でトレビル隊長を演じていた玄田哲章さんがポルトスを演じている。
『三銃士』は世界中で何度も映像化されている作品なので、複数の『三銃士』で別々の作品を演じている役者さんも多いんだろうなぁ。それこそ、「若い頃にダルタニャンを演じて、キャリアを重ねたらトレビル隊長やリシュリューを演じるようになった」とか。

●アフレコの時のエピソードがあったら
『三銃士』は宮廷物語なので、貴族のていねいな言葉がけっこう出てくるでしょう。
すると、みんな舌が回らなくて、ヘンなこと言っちゃう。「馬車でおまちしております」が「馬車でおもちしております」になったりとか。
みんな後ろで「うっ、ぷぷぷ」なんて笑いをこらえるのが大変。

こちらはアフレコでの裏話。歴史モノ特有の上品でお堅いセリフ回しも、間違えたら余計可笑しくなってしまうとか。

●結婚なさってるそうですが、だんなサマはどんな方ですか?
うーん、典型的なO型人間ですね。一緒にウィンドサーフィンとかスキーをするの。
結婚して4年目。学生の頃に知り合って、3回ぐらい別れたりしてるんだけど、結局こうなっちゃった。

プライベートについて。既にご結婚されていて、休日には一緒にウィンドサーフィンやスキーを楽しんでいるとは、何ともアクティブなご夫婦だ。
なお、00年代には結婚後の姓に合わせて「久村栄子」名義で活動されていた時期もあったけど、現在では「山田栄子」名義に戻して活動されています。

●声優さんをやっていて面白いことは?
いろんなものになれるってことかな。舞台で顔なんか出ると、もうイメージが決まっちゃうでしょう。でも声の仕事に関しては、いい女にもなれるし、すごいブスにもなる。
私自身、もらう役のタイプがバラバラなんですね。レギュラーでおばあさんやったこともあるし、デブのお母さんだったこともある。

声優の面白さを「色々なキャラを演じられること」と語る山田さん。そのキャリアを見ても、名作劇場のような現実的な女性キャラから、『キャプテン翼』の岬太郎のような少年キャラまで幅広く演じている。
その両方を合わせた「男装の麗人」であるアラミスは、言わば声優・山田栄子にとっては到達点になるキャラと言えるのかも。
他にも藤子不二雄作品では『忍者ハットリくん』(1981年〜1987年)ではネコの影千代。『ビリ犬』(1988年7月〜1989年9月)ではイヌのガリ犬という、共にマスコット的な動物キャラ(人間の言葉を喋る)も演じていて、役幅の広さには驚かされるばかり。

●舞台や映画のお仕事もやってらっしゃるのですか?
去年劇団やめちゃったので、ここんとこ舞台から遠ざかってるけど、機会があったらまたやりたいですね。
映画はお正月にテレビでやった『エイリアン2』のバスケスの声をやりました。

劇団出身ということで、舞台の仕事にも意欲を語っている山田さん。90年代後半から00年代にかけて休業していた時期もNHK教育の人形劇の仕事をされていたのは、舞台に通じるモノがあったからだろうか。
ちなみに『エイリアン2』は1986年公開の洋画で、この年(1988年)の正月にTBS系で新春特別ロードショーとしてテレビ初放送されました。

●これからやってみたい役は?
い・い・女。アンやジョオも魅力的だけど、どっちかっていうと中性的でしょ。
平野文ちゃんがやっている『三銃士』のミレディーみたいな怪しげな女…そーいうのやってみたい!

アンやジョオのような中性的なキャラに加えて、男装の麗人であるアラミスを演じている山田さん。その反動か、同じ『アニメ三銃士』に登場するミレディーのような、怪しい魅力漂う女性を演じてみたいという。
そして何より、この時点で様々なキャラを演じている山田さんでも、まだ「やってみたい役」があるというのに驚き。


インタビュー記事に併記されていた、山田さんのプロフィール欄は以下の通り。

プロフィール
生年月日 昭和?年6月13日
出身地 横浜
身長 161cm
特技 スキー・オートバイ

☆代表キャラ(作品)
・アン(赤毛のアン
・ジョオ(愛の若草物語
岬太郎キャプテン翼
・アラミス(アニメ三銃士

※以下、キャラの写真に添えた説明文
・デビューキャラのアン。はつらつとした性格に魅かれ、のめりこんで演じた。
・人気急上昇のアラミス。男まさりな中にほの見える優しさを出したいとのこと。

生年が伏せてあったり、「体重」の項目自体が無かったりするのはご愛嬌。


山田さんの演じたキャラと言えば、個人的にはやっぱり『キャプテン翼』(一作目)の岬君。その影響で、山田さんと言えば少年キャラの印象が強くて、名作劇場でアンやジョオやラビニアといった少女キャラを演じていたのは、正直意外にも思えたりして。
そんな山田さんだけに、表向きは少年ならぬ「男性」で、でもその正体は女性という意外性を持つアラミス役は、まさにベストキャストだと思うのは僕だけではないはず。


さて、そんな山田さん。上記の通り00年代には青二プロを離れて声優業もセミリタイア状態になっていたみたいだけど。そんな時期にもNHKの人形劇に出演したり、『スーパーロボット大戦』で過去に演じたキャラを再び演じたり、健在ぶりをアピール。昨年は久々にアニメ『鬼灯の冷徹』に牛頭(ごず)役で出演して(相棒の馬頭=めず役は『小公女セーラ』で共演した島本須美さん)、その縁でアニメソングの一大イベント『アニメロサマーライブ2014』では、「地獄の沙汰オールスターズ」の一員として出演するというサプライズもありました。


そして今年3月には大手声優事務所の81プロデュースに所属されたということで、今後の声優活動が期待されます。