アニメ三銃士

Column35 語ろう!『アニメ三銃士』(スタッフルーム通信編2 -クリエーター 辻初樹-)

『別冊アニメディア アニメ三銃士 PART1』からの証言特集。今回からはメインスタッフ陣のインタビュー記事「スタッフルーム通信」の第2弾です。

今回インタビューを紹介するのは辻初樹さん。本作における肩書は「クリエイター」ですが、事実上のキャタクターデザインの大役を務めました。さらには主要エピソードの作画監督や、アニメ情報誌への版権イラストも手掛け、『アニメ三銃士』という作品をビジュアル面で大きく支えました。


そんな辻さんは、一体どんな裏話を披露してくれたのでしょうか……。

●クリエーター 辻初樹


アニメ用のキャラクターのデザインの設定というのが仕事です。監督に言われたことをその通りにやりながら、絵を描いてしまえばこっちのモンダっていう…。
作っていて苦労したのは、キャラの数が非常に多いということと、時代考証にのっとって作っていかなくてはならないというところですね。そこにヒモをつけてはいけないとか、スカーフは前でしばっちゃダメとか、色々と。デザイン的に良いからとかいうのだけでは、出来ないんですよ。
一番描きにくかったのはボナシュー。表情に喜怒哀楽が出しにくいのにちゃんと芝居をさせなくてはならなかったから。その分、ジャンとローシュフォールは描きやすかったですね。愛着のあるキャラはミレディーかな。口を小さくと注文されたんだけど、だんだん大きくなって…。
あと、動物が多いのも大変でした。動物は難しいんですよ。
僕としては、全編アクションっていうのも一編くらいは欲しかったと思います。アクションの多い話が好きなんです。


PROFILE
昭和25年10月16日北海道生まれ。代表作としては原画、動画で参加した『新ルパン三世』、原画で『ユリシーズ31』、『じゃりン子チエ』。『夢幻紳士』『マップス作監等。

「絵を描いてしまえば〜」とは、アニメーターとしてのポリシーや強かさが感じられる頼もしい言葉。一方で、時代考証という歴史物ならではの制約で思う様なデザインができず、色々と苦労していることが伺えます。
キャラデザインについては、ボナシューが描きにくくてジャンやローシュフォールが描きやすかったというのは納得。やはり表情豊かで喜怒哀楽があるキャラの方が描きやすいのかな。


そしてアクションへの意欲を語っているのも興味深い。この想いが通じたのか、シリーズ後半では劇場を舞台に鉄仮面(に扮したミレディー)がダルタニャンとアラミスを相手に大立ち回りを演じた33話「女優ナナの宝石」に、クライマックスとなる51話「アラミス断崖の決闘」と52話「さようなら! ダルタニャン」という、アクション満載の回で作画監督を務めています。さぞ、嬉しかっただろうなぁ。


そんな辻さん、『アニメ三銃士』での仕事ぶりが評価されたのでしょう。その後もスタジオぎゃろっぷ制作のアニメ『ミラクジャイアン童夢くん』『RPG伝説ヘポイ』『ゲンジ通信あげだま』でキャラクターデザイン・作画監督・絵コンテ・演出と幅広く活躍。そして『姫ちゃんのリボン』『赤ずきんチャチャ』では作品監督も務めました。また大ヒット作『るろうに剣心』の劇場版『維新志士への鎮魂曲』では一人でキャラクターデザイン・作画監督・作品監督の大役を見事に務め上げました。
近年でも『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』シリーズや『カードファイト!! ヴァンガード』シリーズで監督を務め、その一方で様々な作品に作画監督や演出などで携わっています。


70才近くにして、この精力的な活動ぶり。その原点は『アニメ三銃士』時代に語った「絵を描いてしまえばこっちのモンダ」というポリシーにあるのかもしれません。