アニメ三銃士

34話:鉄仮面を逮捕せよ

(放送日:1988年8月26日 / 演出:高本宣弘 / 作画監督:金子紀男)

■Story■
鉄仮面に屋根から突き落とされたコンスタンスだったが、無事に意識を取り戻した。しかも、落ちたショックで失っていた記憶も取り戻していた。思わぬ形だったが、記憶が戻った頃をダルタニャンたちも喜ぶ。


ダルタニャンと三銃士は、謎の女性がマンソンと一緒に劇場に居たこと。そして鉄仮面が塩を盗んだお陰で塩商人のマンソンが大儲けしたことから、マンソンも鉄仮面の仲間だと疑いを向けていた。


その頃、鉄仮面一味は関所の役人と摩り替わって交通税を騙し取っていた。さらにマンソンの馬車が通ろうとすると鉄仮面が自ら現れ、馬車を破壊し莫大な金を脅し取った。
憤るマンソンはリシュリューの元へ訴え出る。これを機に国王は鉄仮面逮捕の号令を出し、銃士隊と護衛隊は鉄仮面逮捕への競争を開始する。


一方、ボナシュー宅には再びナナが訪れていた。ナナはボナシューに対して、鉄仮面に奪われた宝石の賠償を求める。ボナシューは弁解も反論も一切する事無く賠償を受け入れ、そのために家や財産や得意客を全て売り払うことになった。


引越しの日、ダルタニャンはコンスタンスから、家に込められた亡き母との思い出を打ち明けられる。それを聞いたダルタニャンは、鉄仮面逮捕への決意を新たにする。


■Explanation■
ダルタニャンたちがどんなに努力しても取り戻せなかったコンスタンスの記憶が、ついに戻った。しかし、鉄仮面の凶行による物なので、喜びつつも同時に憤りを隠そうとしない。事実、この事件はコンスタンスの記憶と引き換えに、ダルタニャンたちから多くの物を奪って行くのだから。


謎の女性(ミレディー)との繋がりから、マンソンも鉄仮面の仲間だと疑うダルタニャンたち。しかし、それを覆す様にマンソンも鉄仮面の被害に遭う。正直、視聴者的には両者が仲間で、この事件も狂言なのは(この時点では明示されていないけど)明白だけど、取り敢えず疑いを逸らす。さらにマンソンは被害をリシュリューに訴えるのだけれど、これも銃士隊と対立している護衛隊を駆り出すことで両者が足を引っ張り合い、鉄仮面を行動し易くするのが狙いに思える。
果たして思惑通り、ダルタニャンたちとリシュリューたち護衛隊は、本来の目的である鉄仮面逮捕をそっちのけで反目し合い、ついには決闘をしようとする。


一方、ナナから宝石の賠償を求められたボナシュー。自らの責任として、最大限の賠償をする。それは即ち、財産の全てを手放すことだった。
引越しの日、コンスタンスは母の事を思い出していた。皮肉な事に記憶を取り戻したことが、生まれてからの全ての思い出が詰まった家からの引越しを、これ以上無い程悲しい物にしていた。
コンスタンスの搾り出すような想いを聞かされてたダルタニャンは、彼女に胸を貸して泣かせることしかできなかった。何とも辛いシーンだ。
そんな場面をジャンに見られて、慌てるというオチ。微笑ましいけど、悲しいのは変わらない。


■Dialogue/Monologue■

コンスタンス「私のお人形、持っていたら見せて下さる?」
ダルタニャン「人形だって?」
コンスタンス「私がサンジェルマンの広場で、ジャンから買った人形よ。ダルタニャンと初めて会った時、落として腕が折れたでしょ。後でまた、ジャンが直してくれたわね」

ついに記憶を取り戻したコンスタンス。そんな彼女の第一声は、ダルタニャンが「出会った時の思い出」として必死に話していたジャンの人形についてだった。
記憶と共に、ダルタニャンとの絆も取り戻していた。

鉄仮面「随分贅沢な馬車だな、誰の馬車だ?」
御者「塩商人のマンソン様です」
鉄仮面「何!マンソンだと!顔を出せマンソン!塩で大儲けしたお前では、普通の通行税では安過ぎる!御者も馬車もひっくるめて、他の連中の十倍払ってもらおうか!」

ダルタニャンたちがマンソンを疑い始めた矢先に、マンソンが襲撃される。視聴者的には狂言犯行なのはバレバレなんだけど。

ボナシュー「お客様からの大事な預かり物を無くした私が悪いのです。できるだけのことはさせて頂きます」
ボナシュー「たとえ十分の一でも百分の一でも、償いをしなければ私の気が済まんのだ」

上はナナの使いに対する、下はダルタニャンたちに対する、ボナシューの言葉。
強いられたものではない、ボナシュー自身の誠実さから出た償いをしようとしていた。

ロシュフォール「鉄仮面は君ら銃士に捕まる相手じゃない。後は我々護衛隊に任せた方が、恥をかかないで済むぞ」
ポルトス「何だと!失敬な事を言うな!どっちが鉄仮面の相手に相応しいか、剣で決着をつけようじゃないか!」

銃士隊と護衛隊、顔を合わせればケンカなのは相変わらず。
特にポルトスは喧嘩っ早い。シャンティの街での一件(15話)で懲りていないのだろうか。

ダルタニャン「今に僕が偉くなったら、きっとこの家を買い戻してあげるから」

生まれ育ち、亡き母との思い出が詰まった我が家を追われる悲しさと悔しさを、涙ながらに語るコンスタンス。
それを聞いたダルタニャンは、記憶に続いて家と思い出も取り戻そうと決意する。


■Next Episode ~次回予告~■

ジャン「ダルタニャン、俺、鉄仮面ってそんなに悪い奴じゃないと思うんだ」
ダルタニャン「何言ってんだよ!ジャン!」
ジャン「だって貧しい人にはお金を恵んでくれるっていうじゃないか」
ダルタニャン「そんなの、どうせ盗んだお金さ!」
ジャン「だけど…」
ダルタニャン「アイツのために、ボナシューさんは家を売らなきゃならなかったんだぞ!俺は許さない!絶対に鉄仮面を捕まえてやる!」
ジャン「次回『アニメ三銃士』《ダルタニャンの失敗》」
ダルタニャン「みんな、また会おう!」

お馴染みダルタニャンとジャンによる予告。しかし今回はいつものような明るさは無し。
鉄仮面に共感しつつあるジャンと、そのジャンの言葉に反発するように鉄仮面逮捕へ意気込むダルタニャン。しかし、そのダルタニャンの意気込みが空回りすることを、次回のサブタイトルが予感させている。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
前回に続きサン・ルイ島と、そこにかつて住んでいたキュリー夫人を紹介。
キュリー夫人は、夫のピエールとを事故で喪うなどの試練を経て、1912年にサン・ルイ島ベチューヌ河岸の部屋を安らぎの地とした。その後も女性であり 被圧迫国民(ポーランド出身)というハンデキャップとも闘ったと解説されている。そして1934年7月4日、娘のエーブに看取られて波乱の生涯を閉じた。
映像では「部屋の窓から見るセーヌ川ノートルダム寺院が、二人の娘と共にマリーの心を癒した」と語られている。
ちなみにキュリー夫人の最後を看取った娘エーブは放送当時(1988年)も存命中で、2007年に102歳という長寿で他界した。


(記:2013年2月11日/追記:2020年04月24日)