アニメ三銃士

Column10 語ろう!『アニメ三銃士』(松田辰也さん編)

今回からは新企画。『アニメ三銃士』放送当時のアニメ情報誌や書籍などに掲載された、スタッフ・キャスト陣の貴重なコメントを紹介。
1回目は当然、我らが主人公・ダルタニャンを演じる松田辰也さんのコメント。


学研発行のアニメ情報誌『アニメディア』1988年5月号より、声優さんへのインタビュー企画「人気声優にがぶりより!」からの出典です。この号では『三銃士』が2度目となる表紙を飾っており、放送から半年が経って人気が定着していた時期の、貴重なインタビューです。

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松田さんは『三銃士』終了後の1990年代中頃から声優活動を引退されていましたが、昨年夏に『魔動王グランゾート』の同窓会イベントで久々に元気な姿を見せてくれました。
そして、このイベント出演が切っ掛けになったのか。羽佐間道夫さんが代表を務め、『グランゾート』でも共演した安達忍さんも所属する声優・ナレーション事務所「ムーブマン」に加入されました。
まだ目立った活動は見られませんが、再び松田さんの声が聴ける日が来ることが期待されます。

松田 辰也(「ムーブマン」内プロフィールページ)

さて、『アニメ三銃士』放送当時の松田さんは自身が演じるダルタニャンについて、そして自身の過去・現在・未来についてどんなコメントを残していたのでしょうか……。


インタビューは読者からの質問に答える形式で、当時松田さんが所属していた「劇団こまどり」の稽古場にて収録。誌面にはダルタニャンをイメージしてか、ステッキを剣に見立ててポーズを取る松田さんの写真も掲載されていました。

●声優になったきっかけは?
松田 僕は、小3の頃から子役としてテレビのCMなんかに出ていたんです。
テレビのCMが多かったのは、学校を休む時間が他の仕事に比べて少なかったからですね。
声の仕事もこうして俳優としての活動の一つとしてやっているわけです。

元々は子役として『3年B組金八先生』や『陽あたり良好』などのテレビドラマにも出演されていた松田さん。子役での活動を経て声優業をメインにする方は今も昔も多いけど、松田さんもその経歴を歩んでいたという。
なお、「劇団こまどり」は松田さんの他にも池田秀一さん・吉田理保子岩田光央さん・玉川砂記子さん・富永みーなさん・皆口裕子さん・浪川大輔さん・坂本真綾さんなど多くの人気声優を輩出。
アニメ三銃士』の共演者では、ミレディー役でお馴染み平野文さんも「こまどり」の出身。

●印象に残っている役は
松田 『さすがの猿飛』のゲストなんですけど、四月バカという悪の親玉をやったんですね。
ちょっとマヌケで情けない、という。これが一番思い出に残っています。
僕はどちらかというと三枚目の方がやりやすいんです。

さすがの猿飛』は1982年10月〜1984年3月に放送された、細野不二彦先生の同名漫画を原作とした学園&忍者&コメディアニメ。シリーズ構成を務めた故・首藤剛志氏の作風も相まって、当時の人気映画や他のアニメのパロディも満載の賑やかな作品だったという。僕自身も再放送で少しだけど観た記憶があり。
でも、松田さんが演じる「四月バカ」はどんなキャラは知らなかったりする。ネットで調べても殆ど情報が出てこないので、本当に1話限りのゲストキャラだったのかも。
そんなキャラを印象に残っている役として挙げる松田さん。キャラの役どころ(レギュラーかゲストか、出番が多いか少ないか)を問わず、愛着を抱くタイプなのかも。

●ダルタニャン役での苦労は
松田 この役はオーディションだったんですが、その時、声は自分が一番合っていると思ってました。
役そのものは、元気があって正義感があってちょっとズッコケててという感じですが、昔からそういう役が多かったので、特に苦労はありません。
ただ、これは昔から苦手だったんですが、叫び声が変に高くなってしまうんですよ。
あと、コンスタンスに対するテレ、という演技がちょっと難しいかな。なにしろ僕にはそういう経験がないもので・・・・・・。
役の上以外で苦労した点もあるんです。ここしばらく声優の仕事にブランクがあったもので、初めのうちは口が合わなかったんですよ。

「自分が一番合っている」「苦労はありません」と言い切るほど、ダルタニャン役への思い入れを語る松田さん。
確かに序盤のダルタニャンの演技を聴いていると、感情が高ぶった時の演技に、どこか「アニメっぽくない」印象を受けるのも確か。でも、それさえも次第に自然で素朴な「ダルタニャンらしさ」と思えるようになったのは流石。
そして、「声優の仕事にブランクがあった」のは何故かというと……。

●オフの日は何をしていますか
松田 寝てることが多いです。本当に仕事がない日は、ですが。
実は僕、今、声優の仕事と並行してインテリアスタイリストの仕事をしているんですよ。
高校を卒業した時にやった引っ越しのアルバイトがきっかけになって、スタイリスト関係の事務所に2年ほど勤めていたんです。さっき、声優の仕事にブランクが、と言ったのはそのせいです。
去年の5月にそこを辞めてフリーのスタイリストになり、今は声優も兼業しているわけです。
スタイリストとは、僕の場合、雑誌の特集などのため家具や雑貨のセッティングというのが主な仕事です。
今、雑誌の方にレギュラーが数本あるんですよ。声優の仕事との比重は半々くらいですね。

当時の松田さんがスタイリストの仕事を兼業していて、しかも雑誌のレギュラーを複数持つ程の売れっ子だったとは驚き。
スタイリスト事務所を辞めてフリーになったことで時間の融通が利くようになり、それで声優業を再開した模様。そしてブランク明けの初仕事が主演作である『アニメ三銃士』だから、さぞ大変だったろうなぁ。
そりゃ仕事(声優業もスタイリスト業も)が無い日は「寝ている」にもなるワケさ。

●趣味は何ですか
松田 ものまねです。レパートリーもいろいろあるんですよ。ムーミンパパの声とか近藤真彦とか田原俊彦とか田村正和とか。
似てないといわれるけど、玉置浩二というのもあります。単純にウケだけを狙っている薬師丸とかね。
一時期はビートたけしに弟子入りしようかと考えたこともありました。
あとはテニスですね。硬式です。フォアハンドには自身がありますよ。あとのスポーツもだいたいやりましたね。
あと、ホラー映画が好きなんです。『死霊のはらわた』がベストですね。

ものまねのレパートリーに近藤真彦田原俊彦玉置浩二薬師丸ひろ子を挙げるあたり、時代を感じてしまう。
そして、ビートたけしへの弟子入りが実現していたら「たけし軍団」の一員として、『風雲!たけし城』や『スポーツ大将』や『お笑いウルトラクイズ』といった80〜90年代のバラエティ番組に出演していたかもしれないのか。それはそれで見てみたかった気がする。
一方でテニスなどのスポーツや、ホラー映画への趣味に挙げるなど。この辺にも松田さんの多芸多才ぶりを感じてしまう。

●今やってみたいことは
松田 いろいろあるんですが、やはりバンドを組みたい。
富永みーなちゃんがやり始めたのに触発されてね。自分も、と思ってるんですけどね。昔、ドラムスをやってたから。ただ、ベースがいないんですよ、まわりに・・・・・・。
うちの劇団でやってもいいんですけどね。笠原弘子ちゃんをボーカルにすれば客も呼べるんじゃないかって(笑)。

新たに興味がある物としてバンド活動を挙げる松田さん。富永みーなさんが(当時)バンドをやり始めていたというのは知らなかった。それこそ、富永さん・松田さん・笠原さんで「こまどりバンド」を結成していたら面白かったかも。

●これからの抱負を
松田 しばらくは声優とスタイリストの兼業を続けていくと思いますけど、スタイリストの仕事がいつまであるかわかりませんからね・・・・・・。
役者としては二枚目よりも三のセンで行きたいと思っています。僕としてはそっちの方が合ってると思うんですよ。
それで、今いちばん演ってみたい役は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公の声!あのキャラクターはぜひ僕がアテてみたい。ああいう役はこれからの理想ですね。

ここでは声優とスタイリストの兼業を続けると語っていた松田さん。この数年後には声優業を引退するのだけど、それはスタイリストの方が多忙になって「本業」になったからだろうか。それとも別の事情があったからだろうか。
また、松田さんがその後演じた代表的なキャラを見ると、『魔動王グランゾート』のガスは気は優しくて力持ち(しかも食いしん坊)という仲間キャラ。『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』の良平は主人公のレースチームを支える、ちょっと頼りないけどムードメーカー的な新人メカニック。共に松田さんが「合っている」と自負していた「三のセン」キャラだった。


今後、松田さんが本格的に声優業を再開するならば、どんな役を演じるのだろうが。やはり三のセンか。それとも、齢を重ねた今だからこそ演じ得るシブい二枚目の大人キャラなのか。色々と期待してしまう。それこそ、洋画の『三銃士』モノに登場するような、壮年の銃士隊長となったダルタニャン役とかを。
なお、松田さんが「これからの理想」と挙げていた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公・マーティ(演:マイケル・J・フォックス)の声は、後の日本語吹替版では三ツ矢雄二さんや山寺宏一さんが務めている。製作にあたってはキャストオーディションとか行われたのだろうか。そして、そのオーディションには松田さんも参加されたのだろうか。


インタビュー記事に併記されていた、松田さんのプロフィール欄は以下の通り。

プロフィール
生年月日 昭和40年10月17日
身長 164cm
体重 53.4kg
趣味 物マネ・テニス

☆代表キャラ(作品)
・アフタ・デク(イデオン
四月バカさすがの猿飛
・太郎(まえがみ太郎)
・大木(伊賀野カバ丸)
・ダルタニャン(アニメ三銃士

※以下、キャラの写真に添えた説明文
・当時、変声期のせいで叫び声に苦労したというデク
・ダルタニャンはひさしぶりに演じたアニメキャラ

このプロフィールによると松田さんは昭和40年(1965年)生まれだから、インタビュー掲載当時(昭和63年4月)は22歳。そして今年(2015年)で50歳の節目を迎えられるワケか。
上で挙げられているキャラで(ダルタニャン以外で)お馴染みなのは、富野由悠季作品『伝説巨神イデオン』(1980年5月〜1981年1月)のアフタ・デクかな。ここでも紹介されている「変声期で苦労した」の他にも、「学校の修学旅行があったため、劇中にデクが登場するも無言でゼスチャーをするだけ(でもエンディングのキャストクレジットには名前が載っている)」という配慮もあったとか。


……と、『アニメ三銃士』放送当時の松田さんの「証言」を紹介しましたが、これが実に27年前というのに驚き。そして何より声優業を長年離れていて、でも先頃復帰を果たされた現在の松田さんがダルタニャンというキャラクターと『アニメ三銃士』という作品について、どんな想いを持っているのか。
それが公の場で語られる日が来て欲しいです。