『アニメ三銃士』と同時期に放送され人気を博した「同期アニメ」を紹介する企画の後半。
今回は1988年の人気アニメを、独断と偏見に基づいてセレクションして紹介します。
■『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(公開:1988年3月)
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物語の構図自体はファースト直系の続編ということで「アムロvsシャア」と極めてシンプル。しかし中身は膨大な情報量に目まぐるしい展開、洗練されたデザインのモビルスーツが繰り広げる迫力のロボットアクションと盛り沢山。
加えて、ネオジオン総帥となったシャアの本性や本音(特に女性関係)が次々と明らかになったり、アムロとシャアが大激闘の果てに衝撃的なラストを迎えたりと、今なお語り継がれるガンダム史上最大級の問題作。
僕は公開からしばらくしてビデオで観たけれど(『Z』や『ZZ』も含めた予備知識が殆ど無かった状態なのもあり)「シャアに一体何があったんだ」と疑問ばかり。そしてあの「衝撃的な結末」には呆然となったっけ。それこそ「もうガンダムは終わったんだ」と痛感するぐらい。
その後もガンダムシリーズが続いているのは御存じの通りだけど、それ位衝撃的な作品だったっけ。
■『魔神英雄伝ワタル』(放送:1988年4月〜1989年3月)
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元気でお調子物の少年・ワタルが、ある日突然「救世主」として異世界に召喚される。そして苦悩も逡巡も一切無しで、冒険の旅に出るという明るく楽しい冒険物語。
その後もOAVやラジオドラマを挟む形で1990年には『〜2』、1998年には『超〜』とテレビシリーズが展開。90年代を代表する人気タイトルになったのはご存知の通り。
■『鎧伝サムライトルーパー』(放送:1988年4月〜1989年3月)
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5人の美少年「トルーパー」たちが鎧をモチーフにしたプロテクター「鎧ギア」を装着して、現代に蘇った妖邪帝国の脅威に立ち向かうというストーリー。その人気はメインターゲットに想定していた男子ファンよりも、「大きなお姉さん」こと女性ファンの間で爆発。
圧倒的なキャラクター人気を受けて、テレビシリーズ終了後にはOAVもシリーズ展開され、さらにはメインキャスト5人が声優ユニット「NG5」としてアーティスト活動して大人気となった。
「プロテクター物」というジャンルは定着せずに一過性で終わったけど。そこから派生した「美形キャラもの」や声優ユニットという要素は、今でも受け継がれている。
■『超音戦士ボーグマン』(放送:1988年4月〜1988年12月)
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メガロシティを名を変えた近未来の東京を舞台に、サイボーグ戦士「ボーグマン」が、異世界からの侵略者・妖魔に立ち向かうというストーリー。こちらは『トルーパー』とは逆に、菊池道隆氏デザインの美少女ボーグマン・アニスに男性ファンの人気が集中。当時のアニメ誌の表紙を幾度も飾っていた。
商業的な人気(関連玩具の売上)は今一つだったらしく、テレビ放送は打ち切り気味に終了。しかし、圧倒的なキャラクター人気(即ちアニス人気)を受けて、後日談を描いたOAVが製作された。
そして「近未来の東京で妖魔と戦うヒロイン」というコンセプトは、後に菊池氏が「麻宮騎亜」名義で発表してアニメ化もされた大ヒット漫画『サイレントメビウス』へと受け継がれて行く。
■『機動警察パトレイバー』(発売:1988年4月〜1989年6月)
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ここからはOAVの紹介。後にテレビアニメ・漫画版・劇場版・実写版と多方面に展開され、「メディアミックスの先駆者」と評される『パトレイバー』シリーズ。そのの原点となるOAV第1期がこちら。
ガンダムなどとは別の意味での「リアル」を追求して、歩行式作業機械「レイバー」が普及実用化されている以外は限り無く(放映当時の)現代に近い世界を舞台に、レイバーを駆る警察の一部隊「特車二課第二小隊」の活躍を描いた一作。
個性豊かな第二小隊メンバーによるコミカルな話あり、怪獣や幽霊が登場するロボット物らしからぬ話あり、さらには自衛隊によるクーデターを描いたシリアスな話もあり。幅広くかつ長期間に渡るメディアミックスを実現させた物語の多彩さが、この時点から感じられる。
■『トップをねらえ!』(発売:1988年10月〜1989年7月)
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「マニア向けの媒体」としてのOAVを最大限に意識して、メカと美少女、さらには特撮モノやスポ根モノの要素をパロディ的に盛り込んだ作風。これには最初こそ批判的な声もあったけど、物語が進むと緻密なSF設定に基づくハードなドラマが展開されてゆく。
今では「OAVの金字塔」とも「『エヴァ』の原型」とも評される歴史的一作。
……と、今回は1988年のアニメを、オリジナル作品(テレビ放送とOAV)をセレクトして紹介しました。
前回の1987年編では漫画原作の作品が大ヒットする一方でオリジナル作品、特にリアル系ロボット物の衰退が目立つと書きました。
しかし、今回は一転。ロボット物ではリアル系に代わる新たなるジャンルとして『ワタル』のようなファンタジーやコメディを織り込んだ作品があり。さらにはオリジナル作品でもロボット物に代わる新ジャンルとして期待された「プロテクター物」があり。そして何より、テレビ放送と劇場公開に次ぐ新たなアニメの発表メディアとしてOAVが台頭して来る。『ヤマト』や『ガンダム』による70〜80年代のアニメブームがひと段落して、アニメ業界が新たな方向性や可能性を模索していた、そんな過渡期だったと言えるでしょう。
そんな中で、我らが『アニメ三銃士』はどんな位置付けになるかというと……。「名作文学作品をアニメ化した冒険活劇」ということで、時代的な流行とは離れた、スタンダートかつ王道的な位置にいたのかな。
ともあれ、前回と今回で紹介した作品群が好きな方は、それらの作品と同じ時代に作られた、否、「同じ時代を生きた同期アニメ」である『アニメ三銃士』の事も思い出して下さいな。
(一部修正:2020年08月12日)