アニメ三銃士

Column12 語ろう!『アニメ三銃士』(久保田P編1)

アニメ三銃士』に関する「証言」を紹介する企画の第3弾。
今回からは放送当時のアニメ誌『アニメージュ』の放送情報コーナー「TVアニメーションワールド」にて、各話あらすじと共に掲載されていたNHKプロデューサー・久保田弘氏の証言を紹介。

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 1

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 1

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 2

アニメ三銃士 パーフェクトコレクション DVD-BOX 2

久保田氏と言えば『三銃士』の他にも『ニルスのふしぎな旅』『スプーンおばさん』『人形劇 三国志』『ふしぎの海のナディア』『忍たま乱太郎』などを手掛けた、NHKの敏腕プロデューサー。また、『三銃士』の制作に際しては「アラミスを女性にすること」を主張したことでも知られています。
そんな久保田氏がスポークスマンとなって語られる『アニメ三銃士』の、当時の雰囲気がヒシヒシと感じられる貴重な証言をシリーズとして紹介します。


まずは『アニメ三銃士』の放送開始直後に発売された『アニメージュ・1987年11月号』に掲載された、記念すべきシリーズ最初の証言がコチラ。

愛と友情、冒険また冒険
これまで「三銃士=ダルタニャン物語」が、アニメ化されなかった理由は、登場人物が多く、考証の難しい17世紀を舞台にしていることによるのでしょう。
また、アニメが最も苦手とする馬が大量に登場することも、製作者に二の足を踏ませた原因のひとつだったと思います。ダルタニャンと三銃士が勢揃いするだけで、少なくとも4頭の馬が必要となってくるわけです。
スタジオぎゃろっぷを中心とする現場スタッフが、こうした難問にあえて挑戦し、見事にさばいてゆくところも見所のひとつです。
考証には17世紀に最も詳しい、歴史の二宮先生、服装の熊澤先生をお願いして、スタートしましたが、スタッフも物語の舞台となるイギリス、フランスを訪ねて、構想を新たにしています。
この取材で1626年に、パリで象が見せ物になり、大騒ぎになったことを知り、第1回「象のいるパリ」が誕生しました。レオナルド=ダヴィンチの考案になる潜水艇が登場するなど、数々の新発明が登場するのもこの番組の楽しみのひとつです。
愛と友情、そして冒険また冒険の新番組『アニメ三銃士』よろしく。
久保田弘(PD/NHKエンタープライズ

『三銃士』をアニメ化することの難しさを語ると同時に、それにチャレンジすることへの意気込みを、決意表明の如く熱く語っている。歴史や服装の専門家に考証を依頼したり、スタッフがフランスやイギリスを取材したり、歴史物ならではの苦労が窺える。加えて、馬(四足歩行の動物)の作画が制作への障害になっていたというのも意外。
その一方で、上記の「パリに象がいた」「ダヴィンチが潜水艇を考案していた」など好奇心をくすぐられる逸話をストーリーに盛り込み、単なる歴史物ではない魅力的な物語を創り上げたのはご存知の通り。
そして、久保田氏より多大な期待を寄せられていたのが、アニメ制作会社のスタジオぎゃろっぷ(現:ぎゃろっぷ)。『三銃士』の前作と言うべきNHK&学研制作の『スプーンおばさん』にも制作協力として携わっており、その活躍が認められる形で『三銃士』では元請制作(クレジット上は「アニメーション協力」)の大役を担うこととなった。
スタジオぎゃろっぷは年明け(1988年1月)から放送開始されて国民的長寿作品となった『キテレツ大百科』でも元請製作を担っており、今では大手アニメ制作会社となったのもご存じの通り。


続いては放送開始から半年近く経った『アニメージュ・1988年3月号』より。いかにも「古き良きNHKアニメらしい」、そして『三銃士』が視聴者の好評を得ていることが窺える証言がこちら。

人気キャラのイラスト
アニメ三銃士』のデスクには、毎週800通から1000通のイラストが送られてきます。
キャラ別に整理してみると、ダルタニャンが25%、アラミスが20%で1、2位を争っています。続いて、はだしのジャン、コンスタンス、アトス、そしてミレディーの順となっています。
イラストを送ってくれる方の年齢は、上は62歳のおばあさん、下は3歳の女の子、と広い範囲から送られてきますが、中学、高校生の女子が半分を占めています。
この中から毎週5枚くらいを番組で紹介するわけですが、たくさんの投書の中から、どうやって放送用のイラストを選ぶかが、私たちの嬉しい悩みです。
1.アニメージュに載っているキャラをそのまま書き写したものはダメ
2.ユニークな発想のイラストは歓迎。
3.どうしても高学年の方のイラストが上手なので、低学年、幼児からのものも拾う。
4.親が手を加えたものは上手くてもダメ
このあたりが私たちの基準です。よろしく。
イラストを送っていただいた方には、お礼の絵葉書を送るつもりです。しばらくお待ちください。
久保田弘(PD/NHKエンタープライズ

NHKアニメの、そして昭和のアニメおよび子供&ファミリー向け番組の定番と言えば、「テレビをみているよいこのみんなからのおたより紹介コーナー」。例に漏れず『アニメ三銃士』でも、毎回の次回予告のバックで視聴者からのイラストが紹介されていた。
イラストにはキャラ人気がダイレクトに反映されるもの。この時点(パリ編から首飾り編に入った頃)では、ダルタニャンが主役の貫録を見せてトップ。それを「実は女性(入浴シーン有り)」という衝撃の事実で話題となったアラミスが続いてたという。この2人だけで総数の半分近く(45%)を占めていたのだから、その人気ぶりが窺える。
その2人に続くのが、視聴者が「分身」として感情移入しやすいジャン、ヒロインのコンスタンス。そして意外な健闘(失礼)を見せているアトスは、三銃士のリーダーとしての面目躍如か。
このキャラ人気、首飾り編から鉄仮面編を経た頃にはどうなっていたんだろう。ミレディーの悲しい過去が描かれたり、強烈なビジュアルインパクトを持つ鉄仮面が現れたり、何よりアラミスの活躍と男装の秘密が明かされたり、キャラ人気の地殻変動が起きそうな展開が続いただけに気になるところ。
イラスト投稿者は中高生の女子(=アニメファンのお姉さん)が多いとのことだけど、次回予告ではやっぱり「よいこのおたより」が優先的に紹介されていた模様。このイラストは現在発売中のDVD-BOXにて次回予告と共に収録されているので、採用された「『アニメ三銃士』好きの元・よいこのみんな」にとっては、まさに一生の思い出なんだろうなぁ。