アニメ三銃士

Column26 語ろう!『アニメ三銃士』(LAST MESSAGE編)

アニメ誌などに掲載された『アニメ三銃士』関連の証言を紹介する「語ろう!」シリーズもいよいよクライマックス。今回は劇場版『アラミスの冒険』のパンフレットに掲載されたメインスタッフの「証言」を紹介します。

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ご存知のように『アラミスの冒険』はテレビシリーズ終了後間もない1989年3月に公開された、テレビシリーズのカーテンコール的な作品であり、事実上の「完結作」でもあります。パンフレットに「MESSAGE」という見出しで掲載されたインタビューは、即ちスタッフからファンへ向けた「LAST MESSAGE」でもあります。


まずは『アニメ三銃士』のスポークスマンとして数多くの証言を残してきた、この方による熱いMESSAGEから……。

プロデューサー(NHKエンタープライズ)久保田弘


■5万通をこすファンの投書が映画製作の原動力になった!
「『アニメ三銃士』に、もう一度新しい形で挑戦したい…」テレビ最終回のアフレコが終わった時、製作の金子さん(筆者注:金子泰夫プロデューサー)がつぶやきました。これはスタッフ全員の思いでもあったのです。実は、翻案、脚本、監督の皆さんと考えたテレビシリーズの構成案が、手つかずのまま話数にして20話分ほど残っていたのです。それぞれ、スタッフのみんなの思い入れのある、素晴らしいエピソードです。
これをまとめて『アニメ三銃士』を、是非完結させたかったのです。
そして、もうひとつ。アラミスを本来の姿で活躍させたかったのです。
アラミスを女性にしようと提案したのは私でした。この提案には最初反対もありました。しかし激論している中で、「この物語には現在につながる自立した女性が是非必要だ。17世紀を舞台とし、19世紀に書かれた原作を、そのまま絵にするのでは、今、映像化する意味がない」と最後に皆が一致しました。
このアラミスが、主人公として活躍するエピソードで『アニメ三銃士』をしめくくりたかったのです。
そして最後にテレビの『アニメ三銃士』ファンの皆さんから5万通をこす投書の山が、この映画制作のエネルギーのもととなったのです。もう一度『アニメ三銃士』のキャラクターに会いたい。三銃士に、ジャンに、コンスタンスに、そして、ダルタニャンに……。
皆さん!『アニメ三銃士』の合言葉を、心の片隅にそっとしまっておいてください。
そして、時々思い出してみてください。
「みんなは、ひとりのために
 ひとりはみんなのために……」

久保田Pによる『アニメ三銃士』への、そして劇場版で主役を務めるアラミスへの熱い想いが感じられるコメント。アラミスを女性にしたのは自身の提案であることを明かした上で、その存在を「現在につながる強い女性」であり「今、映像化する意味」とまで断言している。
また、「5万通の投書」という表現で多くのファンから熱い支持を得たこと。今回の劇場版作成の原動力となったことへの感謝も語っている。
しかし寂しいのは、「これで完結」「心の片隅にしまってください」とも語っている点。せっかく「手つかずの構成案が20話分残っている」と明かしているのだから、「皆さんの更なる熱い支持があれば、またダルタニャンや三銃士に会えるかもしれません」と、続編への希望を残すコメントをして欲しかった。


続いては、こんな一風変わったMESSAGEを紹介……。

監督・湯山邦彦


■QUIZ しゃべっているのは誰だ!?
「なんだ、この<アラミスの冒険>というのは。三銃士の話なのに、なぜアラミスの名前しかないのだ」
「うむ。しかし、ポルトス。ここは一番、黙って脇を固めてやるのも渋い大人のつとめというものだ」
「アトスたちはまだいいよ。俺なんか、捕まって牢屋に入れられちゃうんだぜ」
「私も、今度こそダルタニャンとゆっくりできると思ったのに……」
「ヘヘ、その点オイラは、母ちゃんに会えたし、パリに帰ってきて良かった」
「ところで、余の出番がないそうだが、リシュリュー、どうなっておるのだ」
「は、なにぶん45分ということで……。なにっ!?わしの出番もない!?嘆かわしい!!」
「出番の少なかったみんな、すまない。私もムチで叩かれたりして、それはそれで大変だったのだ。許せ、諸君(とウインク)!」

PROFILE
昭和27年10月15日東京生まれ。都立武蔵丘高校卒業後、葦プロダクションに入社。演出家としてのデビュー作は『銀河鉄道999』。昭和58年フリーになり『プラレス3四郎』を手掛ける。
代表作に『幻夢戦記レダ戦国魔神ゴーショーグン〜時の異邦人』『魔法のプリンセス ミンキーモモ〜夢の中の輪舞』『ウインダリア』など、多数の作品がある。

こちらは一転して、各キャラクターが覆面座談会よろしく劇場版について語り合うユニークな形式。どれが誰のコメントかは、ファンならば分かるよね。
45分という短い時間故に出番の無かったルイ13世リシュリュー。特にルイはかつて自分が起こしたクーデターが騒動の元になったのだから損な役回り。他にも、アラミスを中心に描いた故に割りを食った各キャラの本音や愚痴がチラホラ。喜んでいるのは母親に再会できたジャンくらいかな。
これは湯山監督自身の「アラミスだけじゃなく、他のキャラたちも思いっ切り活躍させたかったのに!」という無念が、各キャラの口を借りて喋っているのかも……。


最後はテレビシリーズ全話に続き、劇場版の脚本も担当した、この方からのMESSAGE……。

脚本・田波靖男


■りりしく美しいアラミスを、スクリーンで。
A・デュマの『三銃士』をNHKでアニメ化するに当たり、原作を大きく変えた点は、アラミスを女性にしたことでしょう。多少、冒険のようにもみえましたが、結果は多くの視聴者にも好評で成功だったと思います。テレビ放映の回を増すごとに、アラミスへの人気も高まっていきました。だがなぜアラミスが女性の身でありながら、男ばかりの銃士隊に身を投じたのか、その背景をテレビでは、一応の説明はしたものの、じっくり書き込めませんでした。
そこでこの劇場映画版では、アラミスを前面に押し出して、その辺のいきさつも書いてみたいを思いました。今は亡き恋人フランソワにまつわる秘密が、フランス王国を揺るがす大陰謀事件に発展していきます。
りりしく美しいアラミスが、どんな魅力を映画館の大きなスクリーンいっぱいに繰り広げてくれるだろうか。観客の皆さんに、充分楽しんでいただければ幸いです。

PROFILE
昭和8年12月12日慶応大学文学部卒業後、東宝株式会社入社。企画者兼脚本家として勤務する。昭和45年ジャック・プロダクション設立。以後、フリーの作家、プロデューサーとして映画、演劇、テレビ、ラジオに幅広く活躍。
代表作に『若大将シリーズ』『太陽にほえろ!』『イッキマン』など多数、著作も数多くある。

テレビシリーズにおけるアラミスについて「背景をじっくり書けなかった」と反省した上で、劇場版のコンセプトを「りりしく美しいアラミス」と語っている。これは銃士として剣を手に活躍するアラミスと、女性として恋をしたりドレスを着たアラミス、両方の魅力を描けたという満足感が垣間見えます。


……と、久保田P・湯山監督・脚本田波さんの「LAST MESSAGE」を紹介しました。作品への思いを熱く語った物。キャラクターのコメントを借りてユニークに語った物。コンセプトを簡潔に語った物。内容はそれぞれですが、いずれも『アニメ三銃士』という作品にテレビシリーズから長年関わってきた誇りや、それが今回の劇場版で終わりを迎えることへの寂寥感が伝わってきます。