アニメ三銃士

Column15 語ろう!『アニメ三銃士』(久保田P編4)

放送当時にアニメ誌『アニメージュ』にてあらすじと共に毎月掲載されていた、久保田弘プロデューサーのコメント、否、「証言」を紹介する企画の4回目。

前回は「アラミスの運命」こと、本篇終了後のアラミスに関する証言を紹介しました。
djpost1987.hatenablog.com
今回はその「完結編」とも言うべき証言を紹介します。多くのアラミスファンが最大公約数的に期待していたであろう「理想的なアラミスのその後」について……。


それは『アニメージュ・1988年9月号』より。

アラミスとアトスの結婚
アニメ三銃士』への投書が7月7日現在で、イラストは1万通を越え、楽譜希望者の投書は8000通に達しました。ファン・レター、意見、希望などの投書をあわせると2万人の方が『アニメ三銃士』に手紙や葉書を送ってくださったことになります。ありがとう。これからもよろしくね。
アラミスの修道院入りについては、みなさんほぼ言い尽くされたようですが、今度はアラミスとアトスを結婚させてほしいという投書がふえています。
あのアトスのことだから、アラミスが女性であることは密かに気づいているにちがいない。まだ22歳というアラミスが、いつまでも昔の恋人の思いにしばられて、ひとり淋しく暮らすのはかわいそうだ。最終回の絵コンテまでできているのは知っているが―。というのが代表的な意見です。
番組のビデオが出ています。レンタル店にもありますよ。
久保田弘(PD/NHKエンタープライズ

アニメ三銃士』が始まって「アラミスが女性」と明かされた時から、少なくない数のファンが期待していた「アラミスがアトスと結ばれる」という展開。せっかく女性という設定にしたのだから、「ヒロイン・アラミス」のロマンスを期待するのもファンの性か。
そして「修道院入り騒動」によって「アラミスのその後」についての論争が高まった結果、ファンの願いの極北と言うべき「アラミスとアトスの結婚」が久保田Pの元にも届くこととなった。
これには久保田Pも回答に窮したのか、はたまた新たな騒動の火種となることを恐れたのか。自身の所見を述べる事無く、代表的な意見を紹介するに止めている。


また文中に出て来る「昔の恋人」というのは、言うまでも無くフランソワのこと。掲載当時のアニメ本編は「鉄仮面編」が始まったばかりで、アラミスの過去は描かれてなかったのですが。アニメ情報誌などではアラミス人気の高まりを受けて、その過去もネタバレ上等と言わんばかりに紹介されていたため、ファンの間では周知の事実となっていました。


しかし、ファンの期待に反して、アラミスが自身の秘密を明かすことは無く、アトスがそれに気づいた描写も無かった。それはTVシリーズはもちろん、ファンの声を受けた後に作られた『アラミスの冒険』でも、アラミスとアトスを含めたメインキャラとの関係は変わらないままだった。


察するに一連の騒動が切っ掛けで、メインキャラの「その後」を、敢えて描かないことにしたのではないか。アラミス一人を例にとっても、修道院入りに反対するファンもいれば賛成するファンもいて、果てはアトスと結ばれることを望むファンもいる。それは他のキャラも同じこと。各キャラの未来を一つに決めることなく、それぞれのファンの想像に委ねる形にしたのかもしれない。