アニメ三銃士

27話:はじめてのデート

■放送日:1988年6月3日 / 演出:水谷貴哉 / 作画監督:須田正巳

■Story■
ダルタニャンは首飾り事件での活躍が認められ、銃士隊員に任命されることになった。すっかり上機嫌のダルタニャンだったが、貴族を嫌うジャンは反抗的な態度をとる。


一方、ミレディーは首飾り事件での働きに対し、リシュリューに報酬を求める。しかし、リシュリューは、報酬が欲しければダルタニャンを始末しろと言う。


ルーブル宮殿での任命式を終えたダルタニャンは、コンスタンスからデートに誘う手紙を渡される。
大喜びのダルタニャンだったが、ルーブルからトレビル隊長の館へ向かう途中で、うっかりその手紙を落としてしまう。
そして、手紙はダルタニャンへの復讐を狙っていたミレディーに渡ってしまう。


銃士としての勤務初日を終えたダルタニャンは、コンスタンスとの待ち合わせ場所であるノートルダムの裏庭へと向かう。
コンスタンスもルーブルでの勤めを終えノートルダムへ向かっていたが、途中で老婆に化けたミレディーにさらわれてしまう。


ミレディーは飼い猿ペペを使い、ノートルダムにいたダルタニャンの元へ脅迫状を送る。
それを読んだダルタニャンは、指令されたブローニュの森の水車小屋へ、コンスタンスを救出に向かった。


■Explanation■
冒頭ではガスコーニュに住むダルタニャンの祖父母が再登場。二人の元に届いた手紙は我が孫からの、銃士隊入りを伝えるものだった。
懐かしいキャラの再登場が示すように、序盤はどこか懐かしいコミカルなシーンが続出する。


特に念願の叶ったダルタニャンの浮かれぶりときたら。朝から寝坊しかけてドアの仕掛けから水を被るわ、ロシナンテに乗って街を行けば看板に顔面をぶつけるわ。
しかし、看板に頭をぶつけた拍子にコンスタンスからの手紙を落として、デートのことをミレディーに知られてしまう。


そして、ペペが持ってきたミレディーからの脅迫状にも気づかず、その上に座って延々と告白の練習をしてる。あまりの浮かれぶりが、完全に裏目に出てしまう。


ダルタニャンと対照的に不機嫌なのがジャン。朝からダルタニャンに悪態をつき、さらにはダルタニャンが国王から下賜された「銃士の証」であるマスケット銃を奪おうとする。
こんなジャンの変貌ぶりは、「貴族が嫌い」というキャラ設定を知っていても、唐突過ぎる気がする。この時の諍いは、後のミレディーを巡るゴタゴタで済し崩し的に解決してしまうし。


ジャンの貴族嫌いに関してはもう一回、後の「鉄仮面編」でも描かれる。
でも、話の端々で散発的に描かれるだけで、全体を通してジャンがそれを克服したり昇華させたりする、いわゆる「少年の成長劇」まで掘り下げられなかったのは勿体無かったと思う。


今回は銃士隊の日常も描かれる。特に出動や事件が無い時は、トレビル邸に待機しているらしい。アトスは本を読み、アラミスとポルトスはトランプをしている。
そして、待機時間が終わればお勤め終了とは、現代におけるサラリーマンのようで、銃士の勇ましいイメージとはかけ離れた平穏ぶりだ。
新入りで不慣れなダルタニャンは戸惑っていたけど、アトスの言うとおり、これが平和の証拠なんだろうな。


そしてコンスタンス。任命式が終わったばかりのダルタニャンを、しかも人気の無い庭園にいる時を見計らって、デートに誘う手紙を渡す。今までのお堅い彼女からしたら、驚くほどの積極アプローチ。
さらに、手紙を目前で読まれそうになったら恥ずかしがって「後で読んで」と遮る。もう、どこのラブコメかと。


しかし、そんなダルタニャンとコンスタンスが描こうとしていた甘い甘いラブコメも、ミレディーによる復讐劇に書き換えられてしまうのだが…。


■Dialogue/Monologue■

ダルタニャン「どうだいロシナンテ、銃士になったご主人様を乗せる気分は。格別だろ、今日から我が祖国フランスの、栄えある銃士だそ」

ルーブル宮殿での任命式に向かう道中、上機嫌のダルタニャンの言葉。
格好をつけていますが、この直後、店の看板に顔面をぶつけます。

ミレディー「実は耳寄りな話がございまして…。この話を上手く利用すれば、閣下がフランスを操るのは簡単でございます」

首飾り事件で王妃を追い落とすことに失敗したリシュリューに、新たな陰謀を持ちかけるミレディー。
この時は「ダルタニャンを始末した後で聞く」と言ったきりになったけど。後の展開から考えて、フィリップ王子の件なんだろうな。

ミレディー「私はしくじったとは思っていません。私は首飾りのダイヤモンドを奪って、閣下にお届けしたでしょう。アンヌ王妃を罪に落とすのに失敗したのは私のせいではございません。ロシュフォール殿が勝手にヘマばかりしていたからです」
ミレディー「ダルタニャンは歳に似ず知恵と勇気のある者です。許可証など無くても何とかフランスに渡ったでしょう」

首飾り事件の失敗について。自分の諸々の失敗を棚に上げて、味方であるロシュフォールを非難。
さらには敵のダルタニャンを賞賛する。そして報酬を求めるのだから、リシュリューが怒るのも当然。

ジャン「銃士になるのが、そんなに嬉しいかね。それにさ、ダルタニャンは銃士になんかなれっこないと思ってたのに」
ジャン「おいらはね、鉄砲持って威張ってる奴なんか大っ嫌いなんだ!ダルタニャンだけは、そんな奴になって欲しくなかったのに」
ダルタニャン「僕はお前の言うような悪い銃士にはならない、誓ってもいい」

銃士になったダルタニャンに、ストレートな憤りをぶつけるジャンの言葉。
それに対するダルタニャンの誓いが通じたのだろうか。

アンヌ王妃「できることなら、王妃の位とお前の若さを取り替えたいくらい羨ましく思っているのに。神様がそうしても良いとおっしゃったら、取替えておくれかい?」

ダルタニャンとのデートを控えたコンスタンスに対する王妃の言葉。
羨ましいのは若さだけなのか、それとも、王妃という立場ゆえに許されない「自由な恋愛」なのだろうか。

アトス「それで良いのさ、世の中が平和だって証拠さ。その代わり、何かあったら命も投げ出さなきゃならないことは、王妃様の首飾りの件で、よく分かっただろ」

ダルタニャンにとって記念すべき銃士隊員初日は、それまでの日々に反して、平穏に終わろうとしていた。
それに拍子抜けしていたダルタニャンを諭すアトスの言葉。

アトス「若い者は放っておくと何を仕出かすか分からないからな」

冗談か本気か、ダルタニャンとコンスタンスのデート場所を聞き出そうとするアトスの言葉。
可愛い後輩の色恋沙汰に興味津々の様子。


■Next Episode ~次回予告~■

ジャン「ダルタニャン、どこ行っちゃったんだろう」
コピー「ア゛ー!ア゛ー!」
ジャン「なんだよコピー!どうせオイラは留守番さ」
コピー「コンスタンス!コンスタンス!」
ジャン「えっ、コンスタンスさんがどうかしたのか!」
コピー「ミレディー!ミレディー!」
ジャン「ミレディー!」
コピー「ミレディー!コンスタンス!ミレディー!コンスタンス!」
ジャン「ぎょえーっ!コンスタンスさんがミレディーにさらわれたって!」
コピー「アー」
ジャン「次回『アニメ三銃士』《ミレディーの復讐》。あーあ、全くしつこいオバサンだよな」
コピー「ダヨナ。ア゛ッ」

今回はジャンとコピーによる予告。
ジャンは本編でダルタニャンとケンカしたのを引きずっているのか、どこか不機嫌。それでもコピーの断片的な言葉から事態を察するのはさすが。
そしてミレディーを「オバサン」呼ばわりするジャンと、それに相槌を打つコピーというコミカルな締め。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
パリのセーヌ川中に建つノートルダム大聖堂を紹介。
本編でダルタニャンがコンスタンスとデートをする予定だった場所は、この聖堂の裏だったことが語られている。
ここはカトリック信仰の要であり、毎週日曜日には朝から何回ものミサが行われるという。映像では家族連れでミサに参加し、聖体拝受としてパンを受け取る参列者たちを紹介。


(記:2012年9月12日/追記:2020年04月18日)