アニメ三銃士

25話:ドーバーの嵐

■放送日:1988年5月20日 / 演出:早川啓二 / 作画監督:辻初樹

■Story■
ルーブルの舞踏会は明晩に迫っていた。リシュリューはミレディーが送ってきたダイヤを国王に見せ、これがアンヌ王妃とバッキンガム公爵の密通の証だと吹き込む。


その頃、海路フランスへ向かっていたダルタニャンは、乗った船が嵐に遭う。船長は嵐を鎮めるため、メス鳥のコピーを海神への生贄にしようとする。
ダルタニャンと船員たちが争うところへ、潜んでいたミレディーが姿を現す。


ミレディーは嵐に乗じてダルタニャンに迫る。
海に落ちそうになったところをダルタニャンに助けられるも、それでもミレディーは襲い掛かってくる。
そして落雷で崩れる帆柱に巻き込まれ、ミレディーは荒れる海へと落ちていく。すると嵐はうそのように静まった。


ダルタニャンは船長とも和解し、船も無事カレーの港に到着した。


■Explanation■
舞踏会を明晩に控え、パリの方も慌しくなってくる。
リシュリューが国王に、王妃の密通を吹き込む件。「スペイン王家出身である王妃を仲介にして、スペインとイギリスが手を組んでフランスを狙う」というのは、当時の国際関係を踏まえていて、妙なリアリティがあったりして。


ドーバー海峡を渡っている途中、嵐に巻き込まれるダルタニャン。
「船に女性を乗せると海神ネプチューンの怒りに触れ、嵐が起こる」「それを沈めるためには、乗っている女性を生贄にしなくてはいけない」というのは、実際に伝えられていた迷信らしい。
今回は「雌鳥」であるコピーが生贄になりかけたけど、もしもダルタニャンと一緒にコンスタンスも乗っていたら…。あるいは「実は女性」であるアラミスが乗っていたら…これはこれで、また恐ろしくも面白い展開になったかもしれない。


鳥といえ、ダルタニャンにとってコピーは、三銃士やジャンやコンスタンスと同じ、掛け替えの無い仲間。
その仲間を守るため、敵でもない水夫を相手に剣を抜かざるをえない。ダルタニャンの胸中には葛藤があったことだろう。
幸か不幸か、そんな状況も、ミレディーの登場によって一変する。


嵐に揺れる船の中、我が身の危険も省みずナイフを振りかざしダルタニャンを追い詰めるミレディー。吹き荒ぶ風雨も相まって、迫力あるシーンだ。
そして、ミレディーが海に落ちるや嵐が収まるのは、前述の迷信を実証しているようで、何だか皮肉だ。
船長や水夫達とのイザコザも、あっさり収まっているけど、まぁこれはイイか。


■Dialogue/Monologue■

ミレディー「こんなに毛に湿り気があるところを見ると、ひと荒れ来るかもしれないね」

船内に潜むミレディーが、ぺぺの毛を触ってのセリフ。「ミレディー天気予報」ってところか。

ポルトス「まったく鉄砲玉みたいな奴だな、飛び出していったきり、何の連絡もないとは」
アトス「鉄砲玉の方がまだマシだ、当たったかどうか手応えがあるからな」

ロンドンに渡ったきり、何の連絡も無いダルタニャンについて愚痴る2人。
ミレディーは大烏を使ってリシュリューに連絡をしているのにねぇ。

コンスタンス「"ダルダルダル"とは、首飾りを磨くように申し付けた職人です」
コンスタンス「全くノロマで、ご迷惑をかけております」

王妃の部屋にやってきた国王に首飾りの事を聞かれてのセリフ。
"ダルダルダル"とは、ジャンがダルタニャンの名前を言おうとして、コンスタンスに口を塞がれた時の言葉。
それをとっさに職人の名前にしてしまうなんて、コンスタンスもなかなか。
それにしても、嘘とは言え、愛しのコンスタンスに「ノロマ」呼ばわりされるダルタニャンは可哀想だ。

国王「では、そのダルダルダルとかに伝えておけ。首飾りを舞踏会までに間に合わせなかったら、打ち首にしてくれる、とな」

謎の職人・ダルダルダルを怪しむ国王のセリフ。
ひょっとしたら、事の真相に少なからず気づいていたのかも?

ネルソン船長「もし乗せていたら、その女を海に沈め、ネプチューンへの生贄にしなければ嵐は静まらないかもしれない」
ネルソン船長「迷信でも何でも、船長の私としては水夫達が嵐を恐れずに働いてくれなければ、船を守ることはできません」

嵐を鎮めるために、女性を生贄にする。こんな迷信を、船長自身は疑っているような口ぶり。
しかし、船長という立場上、時には迷信にも頼らざるを得ないこともある。
あと一歩で取り返しの付かないことになるところだった。


■Next Episode ~次回予告~■

アトス「嵐は去った。しかしパリまでの180キロの道を夕方までに走り抜けなくては、ダルタニャンは舞踏会に間に合わない!」
アラミス「待ち受けるローシュフォールたち!なおも迫るミレディーの追跡!」
ポルトス「力尽きたロシナンテを残し、ダルタニャンは一人パリへ!ルーブルを目指して走る!」
アトス「次回『アニメ三銃士』」
アラミス「《ルーブルの大舞踏会》」
ポルトス「急げ、ダルタニャン!みんなが待ってるぞ」

再びパリで待つ三銃士による予告。
「首飾り編」のクライマックスに相応しく、簡潔にして力の入った語り口で、最後はダルタニャンへのエールで締めくくられている。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
今回はルーブル美術館より、ルイ13世が住んでいた方形宮や、聖母マリアをモチーフにした名画の数々を紹介。
肉感的でルネサンスの芽生えが感じられる『荘厳の聖母』(画:チマブーエ)、聖母マリアが天に迎えられる様子を鮮やかに描いた『聖母戴冠』(画:アンジェリコ)、聖母子や聖ヨハネの姿が様々な物語を暗示する『岩くつの聖母』(画:ダ・ビンチ)が映像で紹介されている。


(記:2012年9月11日/追記:2020年04月18日)