アニメ三銃士

23話:ロンドン塔脱獄

■放送日:1988年5月6日 / 演出:水谷貴哉 / 作画監督山本哲也

■Story■
バッキンガム公爵は奪われたダイヤの修復を、宝石職人オレイリーに依頼する。
その頃、ロンドン塔のミレディーは毒を飲んで仮死状態となり、死体として塔の水堀に捨てられる。
そして飼い猿ペペに託した蘇生薬によって蘇生し、ロンドン塔を脱獄する。


公爵の館で作業をするオレイリーの元には、妻のジェーンが弁当を運んでいた。
それに目を着けたミレディーはジェーンを待ち伏せして催眠術をかける。ジェーンはミレディーに操られ、修復したばかりのダイヤの首飾りを奪い取り、窓から放り投げてしまう。
外で待っていたペペが、首飾りを受け取り逃走する。これをミレディーの仕業と直感したダルタニャンは、首飾りを取り返すべく飛び出した。


その頃、パリではリシュリューが、ロンドン塔の大烏が運んだダイヤを手にしていた。
さらに、コンスタンスを渡航許可証を盗んだ罪で逮捕すべく、ロシュフォールに命じてボナシューを捕らえてさせていた。


■Explanation■
ここまで催眠術、変装、ウソ泣きに色仕掛けと様々な技を見せてきたミレディーが、今回は最大級の荒業「死んで生き返る」を披露する。
仮死用の毒を飲んだミレディーが悶え苦しみ、目を見開いて息絶えるシーンは、キャラが死ぬ場面(後のバッキンガム公爵やフランソワが殺害されるシーン)を明確に描かない本作だけに、よりショッキングだ。
ましてや、そこから蘇るのだから。これはミレディーの不気味さ、恐ろしさを最も印象付けるエピソード。


ところで、「死体を装って脱獄」というのは、結構あるギミックらしい。
『三銃士』と同じアレクサンドル・デュマの作品『モンテクリスト伯』(またの題名は『巌窟王』)でも、主人公のエドモンが隣房の囚人ファリア神父が死んだ時、その死体袋に潜り込んで…というシーンがある。ひょっとしたら同じデュマ作品ということで、アニメスタッフが拝借したのかな。


オレイリーの妻ジェーンによって、完成したばかりの首飾りが投げ捨てられてしまう。その先にぺぺがいたことで、ダルタニャンはミレディーの生存を直感する。
ミレディーがロンドン塔で自殺したという知らせを聞いているにも関わらず、である。それだけダルタニャンは、ミレディーの恐ろしさを知っていたのだろう。


一方パリでは、リシュリューの命によりボナシューが逮捕されていた。
しかし、ボナシューはロシュフォールにもリシュリューにも屈しようとしない。劇中では「事件に巻き込まれる一般市民」の代表の如く描かれるボナシューだけど、この気骨溢れる性格は、この後も一貫して描かれてゆくことになる。


■Dialogue/Monologue■

オレイリー「食事は女房に運ばせても宜しいでしょうか。女房の手料理でないと、どうにも仕事をする元気が出ませんので」

今回のゲストキャラ、宝石職人オレイリーのセリフ。
凄腕の職人とは思えない、愛すべき小市民ぶり。愛妻共々事件に巻き込んでしまったのは災難だったなぁ。

リシュリュー「ミレディー、お前の仇は必ず取ってやるぞ」

ロンドン塔に投獄されたミレディーから、大烏が運んできたダイヤと手紙を受け取っての言葉。
意外に部下想いな側面が伺える一言。

ジャン「ダルタニャンがいたら、こんなことになるもんか。でも、そのダルタニャンは王妃様のためにイギリスに行ってるんだろ!」

ボナシューが護衛隊に連行されて、その憤りを原因である王妃にぶつけるジャン。
子供の言葉は、時として容赦ない。

ボナシュー「娘ももう大人でございます!いちいち見張っているわけではございません!」

コンスタンスがミレディーの渡航許可証を盗んだ。リシュリューからそう問われた時の、ボナシューの言葉。
娘を信頼し庇おうとする、見事な父の姿だ。

ジェーン「何さこんな物。こんな物のために、私は亭主と離れて暮らさなければならなかったのかい。こんな物!」

ミレディーに催眠術をかけられたジェーンが、首飾りを奪った時の言葉。
催眠術の影響もあるのだろうけど、これが彼女の本音だったのかもしれない。

ダルタニャン「首飾りは必ず取り返します。船の用意をお忘れなく!」

首飾りを受け取ったぺぺを追いかける時の、ダルタニャンの自信満々な言葉。
舞踏会は、明日の夜に迫っていた。


■Next Episode ~次回予告~■

バッキンガム「人々の思惑と陰謀によって、アンヌ王妃の首飾りは次々とその身を弄ばれていく。その姿に、王妃の面影を重ねてしまうのは、私の恋心のなせる業(わざ)であろうか」
ダルタニャン「バッキンガム様!首飾りは必ず僕が取り戻します!ご安心を!」
バッキンガム「うむ、ダルタニャン!舞踏会は明日だ。最後まで諦めずに戦おう!」
ダルタニャン「はい!」
バッキンガム「次回『アニメ三銃士』」
ダルタニャン:「《ミレディーの逆襲》。みんな、また会おう!」

ダルタニャンと公爵による予告。
例によって公爵は詩的というか、もはや現実逃避したかようなことを言い出している。それでもダルタニャンの言葉に正気を取り戻したかのように、最後まで諦めないことを誓う。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
スコットランドエジンバラを紹介。
エジンバラ城は7世紀に砦として築かれて以来、スコットランドの王が居城としており、バッキンガム公爵が仕えたジェームス1世(1566-1625)もこの城で生まれたという。
ジェームス1世は1歳でスコットランドの王位を、37歳でイングランドの王位を継承するも、国王は神以外の物に責任を負わないとして議会や国民と対立。国王の晩年から重臣となった公爵は、国王と議会の調整に努力したことが語られている。


(記:2012年9月11日/追記:2020年04月10日)