アニメ三銃士

11話:折れた剣

■放送日:1988年1月8日 / 演出:渡部高志 / 作画監督佐藤真人

■Story■
バッキンガム公爵がイギリスの使者として、フランスを正式に訪れることになった。リシュシューはそれに乗じて王妃の追放を画策。それに先駆けて邪魔となる三銃士のリーダー・アトスの抹殺を命令する。


アトスは街中でロシュフォールたちに襲われ重傷を負い、ボナシュー宅に逃げ込む。アトスはダルタニャンとの友情の誓いで剣を折っていたため、抵抗できなかったのだ。それを知ったダルタニャンは責任を感じてしまう。

ボナシュー宅にもロシュフォールたちが押しかけ、全身の包帯を巻いたアトスを連れ出して森の中に埋めてしまう。しかし、そのアトスは入れ替わったダルタニャンだった。土中から脱出したダルタニャンはジャンやロシナンテと協力し、アトスの幽霊に化けてロシュフォールたちを驚かし退散させる。


翌日、アトスを救った功績がトレビル隊長に認められ、ダルタニャンは銃士見習いに任命される。かつて折られた剣も、三銃士の剣と共に治してもらった。


■Explanation■
ここからはバッキンガム公爵の再来訪、そして首飾り編へと続くエピソードが描かれる。切っ掛けはイギリス国王チャールズ一世と、国王の妹アンリエットとの婚礼。チャールズ一世の名前は度々出てくるものの、本人が登場することは無し。


これに際して、リシュリューは陰謀の妨げになる三銃士の抹殺命令を下す。今までは互いの立場もあって、「時折小競り合いは起こすものの冷戦状態」という感じだったのが、ここで強硬手段に出る。


そして、アトスを襲う凶刃。薄暗い路地裏で、ボロを纏ったロシュフォールたちに襲われ、抵抗虚しく胴に剣が突き立てられる。劇中に剣劇シーンは多いけど、直接身体が斬られる・刺される、そして出血するというシーンは(おそらく意図的に)殆ど描かれない。それだけに、このシーンはレアな上にショッキング。
さらに、瀕死のアトスがダルタニャンに死を覚悟する言葉を言う。ここまでアトスが、否、ダルタニャンやその仲間が追い詰められたシーンも珍しい。
このように、前半部はシリーズ序盤にしては珍しい、シリアスな展開になっている。


しかし、後半部は一転してコミカルな展開に。
アトスと入れ替わったダルタニャンが、「(アトスの)幽霊に扮して敵を驚かせる」というコメディの定番話になる。しかも、ロシュフォールたちもまんまとハマってしまい、ニセ幽霊に驚き逃げ惑う、腰を抜かして動けなくなるなど、ナイスリアクションを連発。
敵ながらどこか憎めない、ロシュフォールとジュサックのコメディリリーフとしての真骨頂と言うべきエピソードだ。


今回の活躍により、銃士見習いとなったダルタニャン。今まで怒られてばかりだったトレビル隊長からもようやく褒められ、ダルタニャンも上機嫌。
しかし、一難去ってまた一難。バッキンガム公爵が、さらにその公爵を追うミレディーが、再びパリへやってくる。


■Dialogue/Monologue■

アトス「隊長、これは友情の証です」

トレビルに折れた剣を咎められての言葉。しかし、この「証」がアトスを絶体絶命の危機へ追い込むことになる。

アトス「私が死ねば、隊長は君を銃士として採用してくれるだろう」

重傷を負ったアトスが、自分の死を覚悟しての言葉。しかし、友を犠牲にしてまで銃士になりたいと、ダルタニャンが思うはずも無い。

ロシュフォール「ジュサック、お前独身だろ!お前が死んでも悲しむ者は誰もいない!」
ジュサック「いやいやいや、私だって恋がしたいです!」

今回の、否、ロシュフォール&ジュサックにとってはシリーズ最高の名シーン。これ、千葉繁さんと西村知道さんのアドリブっぽいなぁ。
あと、「お前(は)独身だろ」という言葉から察するに、ロシュフォールは既婚者なのだろうか?

コンスタンス「早速、お祝いをしなきゃね」
ダルタニャン「お祝いはこれでいいです(と、キスを迫る)」
コンスタンス「銃士になるなら礼儀が大切です。いきなりこんなところでキスするなんて」
ダルタニャン「そうか、二人きりのときならいいんだね」

銃士見習いとなったことを喜ぶダルタニャンとコンスタンスとの会話。どう見てもラブコメの会話です。本当にありがとうございました。
コンスタンスの「礼儀が大切です」というお姉さんぶったセリフも良し。

ジャン「そんな窮屈な銃士にどうしてなりたいのかな。ダルタニャン、向いてないじゃん」

上記の会話を、三銃士に冗談半分に咎められるダルタニャン。それを見たジャンがこのシュート発言。これも冗談半分かと思いきや、結構本気だったりする。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「ジャン、バッキンガム公爵がまたパリへやって来るぞ」
ジャン「それだけじゃない、あのミレディーも帰ってくるみたい」
ダルタニャン「なにィ!?」
ジャン「あの二人が揃って、何も起こらないワケが無い!
ダルタニャン、銃士見習いになれたからって浮かれてる場合じゃないよ」
ダルタニャン「風雲急を告げるルーブル宮殿に、陰謀の嵐が吹き抜ける」
ジャン「俺たちの出番だね!」
ダルタニャン「うぅーん、腕が鳴るぜ!」
ジャン「次回『アニメ三銃士』」
ダルタニャン「《あこがれの銃士》。また観てくれよ!」
ジャン「よ・ろ・し・く・ジャーン!」

今回はダルタニャンとジャンによる掛け合いの予告。
ジャンの「あの二人が揃って~」という言葉から、ミレディーだけじゃなくバッキンガム公爵もトラブルメーカー扱いしているのが分かる。
そして、銃士見習いになったばかりのダルタニャンが、陰謀を前にしながらも「腕が鳴るぜ」と意気込んでいるのが印象的。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
パリ市街で17世紀の面影を残すマン地区より、貴族の館・シュリー館を紹介。ここにはルイ13世の父・アンリ4世の大臣だったシュリーが住んでいたという。なお、建築は1624~1630年ということで『アニメ三銃士』の時代設定にはちょうど建築中だったらしい
このシュリーは『アニメ三銃士』には未登場ながら、47話で「ルイ13世の双子の兄弟であるフィリップを隠したと思われる人物」として、アトスの口から名前が挙げられている。


(記:2012年7月12日/追記:2020年03月29日)