アニメ三銃士

10話:狩りはベルサイユで

■放送日:1987年12月18日 / 演出:水谷貴哉 / 作画監督:田中保

■Story■
ベルサイユでの狩りの日。リシュリューは国王とアンヌ王妃の仲を裂くため、シャルロットを熱心に国王に推薦する。
一方、ダルタニャンとジャンも再びシャルロットに会うため、ベルサイユの狩場に忍び込んでいた。ジャンの母親には腕に火傷の跡があったという。コンスタンスの協力で、シャルロットの腕にも包帯が巻かれていたことを知り、ジャンは彼女が母親だと再び確信するが、それでもシャルロットはジャンを突き放す。


そんな時、暴れ猪がシャルロットに襲い掛かる。ジャンは猪に立ち向かい、傷つきながらもシャルロットの危機を救った。その姿に心を打たれたシャルロットは、駆けつけたダルタニャンに己の身の上を明かした。
彼女の腕にも火傷の跡があったが、それは全くの偶然で、ジャンの母親ではなかった。かつて新教徒として逮捕されたこと、リシュリューに見出され、故郷にいるジャンと同じ年頃の子供を養うため陰謀に加担していたこと。そして、シャルロットは子供の待つ故郷へ帰っていった。


シャルロットが母親ではないと知り、落ち込むジャン。そんなジャンを見たダルタニャンは、いつかきっとジャンの母親を見つけ出そうと決意するのだった。


■Explanation■
タイトルが示すように、今回の舞台となるのはベルサイユ。といっても、「何某のバラ」のような豪華絢爛な話を期待してはいけない。ここに宮殿ができるのはルイ14世の時代で、当時はまだ狩場として使われる野原だったのだ。


シャルロットの正体を確かめようと、狩場に乗り込むダルタニャンとジャン。前回で危険な目に遭ったため、ダルタニャンはどこか乗り気じゃないように見える。


狩りを前にして、リシュリューの紹介で国王に挨拶するシャルロット。ここでは「シャルル7世に繋がるボーモン公爵の子」と紹介されているが、もちろん大嘘。しかし、狩りの腕は仕込まれているだけに本物。あっという間に国王の心を捕らえてしまう。


そんなシャルロットの正体を暴こうと、コンスタンスも協力する。これはジャンの母親か確かめようとしているのか、それとも「王妃の地位を脅かす女狐」の化けの皮を剥がそうとしているのか…。もちろん、前者だよね。シャルロットにリンゴ酒をあげようとして、わざと腕にこぼしてしまう。普段は真面目でお堅い優等生キャラだけに、どこかぎこちないプチ策士ぶりが何とも萌える(笑)。


「(腕の火傷の跡を隠すための)包帯」という決定的な証拠を見られながらも、ジャンを激しく拒絶するシャルロット。しかし、ジャンは彼女を、否、ようやく再会できた母を守るべく、我が身を省みず暴れ猪に立ち向かう。その姿は、献身的で心を打つ。
結局、猪はポルトスが素手で倒してしまうのだが、ジャンの前では印象薄し。


そして語られる、シャルロットの素性。彼女はジャンの母親ではないものの、ジャンと同じ年頃の娘を持つ母親だった。そして新教徒として逮捕され、火あぶりにされかけたことで腕に火傷の跡があり、改宗して命を救われた時にリシュリュー(あるいはミレディー)に見出され、陰謀に協力することになったらしい。
他人とは言え、ここまでジャンの母と似ているのは、偶然と言い切れない何かを感じる。運命という名の神が、リシュリューの陰謀を通じて悪の道に入りかけていたシャルロットを止めるため、ジャンと引き合わせたのかもしれない。願わくばシャルロットは無事に故郷へ帰り、娘と幸せに暮らして欲しい。


シャルロットが母と別人と知り、落ち込むジャン。一方のダルタニャンは上述のように、どこか母親探しに消極的な印象だったけど、今回の事件を機に絶対に母親を見つけると誓うことになる。
しかし皮肉なことに、今回を最後に、ジャンの母親に関するエピソードは描かれなくなってしまう。
ジャンが母親と再会するのは、まだまだ先の話。


■Dialogue/Monologue■

ルイ13世「狩りを司る月の女神ダイアナもかくやと思うほどの腕前だ。気に入ったぞ」

シャルロットの狩りの腕を褒め称えての言葉。早速、自分の侍女にしようとする辺りが目敏い。

ジャン「母ちゃん、無事だったのか」

暴れ猪からシャルロットを守って気絶する時の言葉。その顔は、母を助けられた満足感に満ちていたと思われるが…。

ジャン「傷が重くなって、死んじまえばよかった」
ダルタニャン「そんな事を言うもんじゃない!生きていなけりゃ、お母さんに会えないじゃないか!」

母と再会できた喜びが一転し、絶望するジャンと、そんなジャンを厳しくも暖かく叱咤するダルタニャン。


■Next Episode ~次回予告~■

ダルタニャン「アトスが何者かに襲われ、重傷を負った。
俺との友情のために、折った剣で戦おうとしたからなんだ。
俺はアトスの身代わりとなって敵の真っ只中に飛び込んで行った。
ブローニュの森で繰り広げられるシリアス大活劇は、いつの間にやら大ドタバタ騒動に。
え、どういうことかって?観ればわかる。
次回『アニメ三銃士』《折れた剣》。
また見てくれよ!」

今回もダルタニャンによる次回予告。アトスが襲撃されるというショッキングな話を「シリアス大活劇から大ドタバタ騒動に」と、何とも気になる紹介をしている。
そして「見ればわかる」と、メタ的かつ自信満々に締めくくっているのが面白い。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
前回に続きベルサイユ宮殿を紹介。
北の庭園にある「4大陸の石像」は、その名が示すようにヨーロッパ・アフリカ・アメリカ・アジアの4つの大陸を表しているという(建設当時、オーストラリア大陸はヨーロッパ人には知られていなかったらしい)。
宮殿内では王が数名の国務卿と秘密の会議を行ったという「閣議の間」や、17の大窓と400枚もの大きな鏡を持つ「鏡の間」を紹介。


(記:2012年7月12日/追記:2020年03月29日)