アニメ三銃士

Column17 語ろう!『アニメ三銃士』(久保田P編6)

放送当時にアニメ誌『アニメージュ』にてあらすじと共に毎月掲載されていた、久保田弘プロデューサーのコメント、否、「証言」を紹介する企画の6回目。

いよいよTVシリーズも佳境に突入。久保田Pのコメントからも、より一層の意気込みが感じられるようになりました。
今回の「証言」は、パイロット版『鉄仮面を追え』について。そしてクライマックスの舞台となる「あの場所」と、『アニメ三銃士』を語る上で欠かせない「あの動物」について。


まずは『アニメージュ・1989年1月号』より。鉄仮面編がクライマックスを迎える中、久保田Pの元には当然のように、こんな要望が……。

投書へのお答え
今月号もみなさんからの投書へのお答えを続けます。
福岡県の『鉄仮面を追え』再放送を実現させる会、から、熊本県、福岡県、佐賀県の方を中心に268人の方の署名がよせられました。このほかにもたくさんの方から再放送希望の投書がとどいています。
見逃した方からは、もう再放送しないのか、幻の作品にしてしまうのか、というお叱りもいただいています。
私たちスタッフもぜひ再放送したいのですが、じつは『鉄仮面を追え』の再放送はなかなか難しいところがあります。
TVシリーズの方向を探るための試作版として制作した番組で、内容の設定がTVシリーズとはかなり違っています。ですから、TVシリーズの放送終了後すぐに再放送すると、見ているほうが混乱するかもしれません。もちろん独立した話として見ていただければ問題ないのですが・・・・・・。
みなさんの投書はNHKの担当者も私も必ず読んでいます。このへんも含めてNHKの番組編成の係が検討しているところです。再放送が決まればこの欄で必ず報告します。
もし再放送に時間がかかるならビデオ化を考える手もあるかなと思ったりもしていますが・・・・・・。
TVシリーズの方は89年2月いっぱいには最終回がオンエアできそうです。アラミスをはじめ全員の見せ場がたっぷりのシリーズ、よろしく!
久保田弘(PD/NHKエンタープライズ

『鉄仮面を追え』はTVシリーズに先立って1987年5月に放送されたパイロット版。TVシリーズの放送後にその存在を知ったファンも多かったはず。かく言う僕もそのクチなので。
現在は見逃したアニメもネット配信や映像ソフトでの視聴が容易な時代。しかし当時はネット環境自体が無く、TVアニメの映像ソフト化も一般的でなかった時代(ビデオ1本が一万円以上する、高価なコレクターズアイテム的な商品だった)。一度見逃したアニメを見ためには、いつ始まるとも知れぬ再放送に一縷の望みをかけるしかなかった。
しかし、久保田Pの歯切れが悪い言葉が示すとおり『鉄仮面を追え』の再放送は実現せず。また、TVシリーズや劇場版にように映像ソフト化される機会にも恵まれず、長年に渡って文字通り「幻の作品」となっていました。


そんな『鉄仮面を追え』が再び陽の目を観たのは、2003年10月のDVD-BOX発売。放送から実に16年が経っていました。久保田Pのコメントで紹介されていた「再放送を実現させる会」の皆さんは、再放送ならぬDVD-BOXで観ることができたのでしょうか。そして、長年の思いが「実現」されたことに喜んだのでしょうか。


『鉄仮面を追え』については当Blogでも紹介してありますので、興味のある方はご一読の程を……。
djpost1987.hatenablog.com


続いて『アニメージュ・1989年2月号』より。クライマックスのベル・イール編に突入ということで、決戦の舞台に纏わるトリビアと、再びストーリーに関わってくる「あの動物」について。

象にはじまり象に終わる
アニメ三銃士』、今月でご紹介する放送は、原作の第3部をヒントに構成されたストーリーです。
海上の大要塞・ベル・イール・アンメールに立てこもった鉄仮面一味とダルタニャン、アラミスをはじめとする四銃士の最後の冒険がテンポよく展開されていきます。
この島の設定は、ベルサイユと並んでフランスで最も人気のある観光地として知られるモン・サン・ミシェルをモデルにしました。ブルターニュ半島コタンタン半島にはさまれたサン・マロ湾の奥にあるたいへん不思議な島なのです。周囲950メートル、高さ78メートルという岩山の上に修道院がそびえ、その高さは海抜171メートルです。
さて『アニメ三銃士』の第1回を覚えていますか?『アニメ三銃士』は象ではじまり象で終わることになっています。
ダルタニャンは世界でいちばん大きい陸上の動物・象を見るためにパリに行ったのですが、じつは歴史上でも1626年(ダルタニャン物語第1部の時代です)に、セバンデルというオランダ人が象を見せ物としてパリへ持ってきて公開し、パリ中の大評判になっていたのです。
映画『アラミスの冒険』の制作は順調で、2月にはAR・DB(※ルビで「アフレコ」「ダビング」)も完了しているはずです。お楽しみに。
久保田弘(PD/NHKエンタープライズ

モン・サン・ミシェルユネスコ世界遺産にも登録されている名所。サン・マロ湾での潮の干満差が激しい箇所に浮かんでいるため、満潮時には島となり、干潮時には陸続きになるという。そのため干潮時にできた道を渡っていた巡礼者が満潮に飲み込まれ死んでしまうことも多く、「モン・サン・ミシェルに行くなら、遺書を置いて行け」という言い伝えも合ったほど。
なお、同じ「海に浮かぶ世界遺産の宗教施設」という縁で、モン・サン・ミシェル市と厳島神社がある広島県廿日市市とは姉妹都市になっている。


また、現実のベル・イール・アンメール島にもルイ14世に仕えた財務官のニコラ・フーケが要塞を築いており、こちらは原作小説の第3部の舞台となり、ポルトスが壮絶な最期を遂げることになる。


そして、TVシリーズに久々の登場を果たした象の話題。ベル・イール編では、偶然とはいえコンスタンスとジャンをベル・イール島に連れて行ったり、鉄仮面の元で砲台建築を手伝ったり、再びジャンに胡椒をかけられて大暴れした末に、最終回ではダルタニャンと共にガスコーニュへと旅立った。まさに「象ではじまり象で終わる」という久保田Pの言葉通りの活躍を見せてくれました。
そんな象に纏わる一連のエピソードも、取材で得た歴史上の事実からアイディアを得たというから。スタッフの意欲と情熱には頭が下がるばかりです。
なお、象に纏わるエピソードは久保田Pの証言1回目でも語られていますので、併せてご一読下さい。
djpost1987.hatenablog.com