アニメ三銃士

17話:一人はみんなのために

■放送日:1988年3月11日 / 演出:早川啓二 / 作画監督山本哲也

■Story■
アミアンの宿屋「金の百合」に泊まっているダルタニャンとアラミスは、アトスとポルトスへの目印として宿屋の看板に帽子を掛けていた。
しかし、その帽子は羊飼いの少年・ピエールとアンドレが取ってしまった。


アトスたちが来ないことを心配したダルタニャンは街へ出て、自分の帽子で遊んでいるピエールたちを見つける。
そして二人から、アトスたちが既に街を通り過ぎたことを聞かされる。


その夜、宿屋にリシュリュー率いる護衛隊が押しかけてきた。
ダルタニャンとアラミスは馬小屋に逃げ込むが、そこにも火が放たれる。小屋が燃え落ちようとする中、二人は覚悟を決め打って出ようとする。


しかしその時、小屋の隠し通路からピエールたちが現れた。
ダルタニャンは隠し通路から小屋を脱出。さらに追撃してくる護衛隊も、ピエールたちが羊の群れで足止めした。
窮地を逃れたダルタニャンとアラミスは、引き返してきたアトス・ポルトスと合流し、4人で港町カレーへと向かった。


その頃パリでは、渡航許可証を奪われたことに気づいたミレディーが、新たな渡航許可証を持ってカレーへと出発した。


■Explanation■
今回のサブタイトルは、作品のキャッチコピーと言うべき「一人はみんなのために〜」より。
第1話でも最終回でもなければ、シリーズの区切りとなる話でもない。
にも関わらず、あえてこのサブタイトルなのは意外かもしれないけど、個人的にはこのサブタイトルに相応しい、盛り上がったエピソードだと思う。


今回のゲストキャラは羊飼いの少年ピエールとアンドレ。田舎の少年らしく元気で明るい二人だけど、彼らが行ったちょっとした悪戯が、ダルタニャンとアラミスに絶体絶命の危機をもたらすことになる。


ついにロシュフォールたちに追いつかれ、立て篭もる馬小屋にも火を放たれるダルタニャンとアラミス。
絶体絶命の中、二人が意を決し飛び出そうとするシーンは、燃え盛る炎の効果もあってかなりの盛り上がり。
そこに隠し通路からひょっこり現れるピエール&アンドレとのギャップも印象的。


一方、初めは悠々と構えていたロシュフォールも、小屋が燃え落ちるにつれて焦り出し、ダルタニャンに早く脱出するよう叫び出す。
そして、ダルタニャンが焼け死んだと思い涙し、さらに生きて脱出したと知るや大喜びで追いかける。
「戦う中で奇妙な友情が育まれる」という、コメディリリーフ的悪役のお約束を地で行くパターン。
最後はピエールの放った羊の群れに囲まれ足止めされる様子は、なんともユーモラスだ。


今回も「お当番」だったアラミスは、馬小屋でもその後の追跡でも、何度も自らを犠牲にしてまでダルタニャンを逃がそうとしている。
ありがちと言えばありがちな展開だけど、アラミスにはまだ「女を捨てて銃士になってまで、果たしたい目的」が残っていたはず。それを知っていると、ここでの行動にはちょっと疑問符がつく。
ここは「私はまだ死ねない、目的を果たすためには」という執念を描いた方が、鉄仮面編への伏線が張れて良かったかもしれない。


■Dialogue/Monologue■

ダルタニャン「ここを馬に乗った二人連れが通らなかったかい。一人は大男で、もう一人は…」

アトスとポルトスのことを、ピエールとアンドレに訊ねた時の言葉。
この後、アンドレの言葉で遮られたけど、アトスのことを何て言おうとしたのだろう。「もう一人は髭を生やして…」とか。

ピエール「何やってるの?」
アンドレ「早く逃げないと危ないよ」

燃え盛る炎の中、ダルタニャンとアラミスが意を決して飛び出そうとしているところにこの言葉。
のん気というか、子供らしいというか。

ロシュフォール「マヌケな奴だと思っていたが、ここまでとは…。最期まで何を考えているか分からん奴だった」
ロシュフォール「おっ、そうだよ!そうでなくっちゃなぁダルタニャン!」
ロシュフォール「やはりお前なんて、丸コゲになってしまえばよかったんだーっ!」

上から、ダルタニャンが死んだと思った時の言葉、生きて馬小屋を脱出したのを見た時の言葉、そしてダルタニャンに逃げられてしまった時の言葉。
すっかり「献花するほど何とやら」な腐れ縁になっている。

ダルタニャン「独りで逃げられるなら、とっくに逃げている」
ダルタニャン「無茶は止めてくれアラミス、死んじまうぜ」

死に急いでいるかの如く犠牲になろうとしてるアラミスに対する、ダルタニャンの言葉。
絶体絶命の危機を乗り越えた直後だけに、心に染みる。


■Next Episode ~次回予告~■

ジュサック「ローシュフォール様ぁ!ダルタニャンが死にました!」
ローシュフォール「何と!それは真(まこと)かジュサック」
ジュサック「ほら、この通りダルタニャンのお墓もちゃーんとあります!」
ローシュフォール「おおぁ、確かに!リシュリュー様に楯突こうなどと、馬鹿な事さえしなければよかったものを…」
ジュサック「というワケで!次回『アニメ三銃士』《ダルタニャンのお葬式》」
ローシュフォール「これで三銃士さえいなくなれば、俺たちが主役だなぁ!」
ジュサック「はいはい」
ローシュフォール・ジュサック「わははは!ははは…」

まさかのローシュフォールとジュサックによる予告。
ローシュフォールはダルタニャンの死を聞かされて、喜んだかと思えば哀れんだり、更に「俺たちが主役だ!」とメタ発言したり、期待を裏切らぬコミカルさ。さらにジュサックはまさかの作品名&サブタイトルのコールという大役を務めることに。
そして締めでは二人で大笑いしながらも「ははは…」とフェードアウト気味になっているのも、ぬか喜びになることを示していて印象的だ。


■Mousquetaires Journey ~三銃士紀行~■
再びパリに戻り、セーヌ川のロワイヤル橋を紹介。
以前はルイ13世の王妃・アンヌに因んだ「アンヌ橋」という木橋が架けられていたが、1684年の洪水で流されてしまう。そして王宮と対岸を結ぶ重要な橋として、ルイ14世が費用を全て負担して石橋を架けたという。
そのため「国王・王室」を意味する「ロワイヤル橋」と呼ばれることになったという。


(記:2012年9月11日/追記:2020年04月10日)